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オランダでの出逢い

さて、前回は少しネガティブな部分を書いたので、今回はポジティブなことを書いてみようと思う。

アトリエを持ちたい

昨年の休養中に Utrecht であった open atelier に次女とお散歩がてら遊びに行った。確か9月頃だったと思う。open atelier とは、Utrecht 市内の様々なアトリエを見て回ることができる日。色んなアーティストの作品を見れてとても刺激になったし、あぁ私もアトリエで作品を作りたいなぁと夢を持てた。

結論から言うと、私は今 その時に知り合ったオランダ人アーティストの方のアトリエを週に1度間借りして作品制作をしている。…!! 夢が一歩叶っているではないか。去年の私が知ったらきっとビックリするだろう。

その人のアトリエは元NS (Nederlandse spoorwegen = オランダ鉄道) の会社の建物を様々なアーティストやクリエイター用に大規模改装された施設にある。うちから自転車で5分。Utrecht にはこの様な場所が結構あちこちにあって面白い。芸術系の学校があることが理由かもしれない。

日本にいた頃

まだ自己紹介すら書いてないが、私はもともと芸術の専門学校を卒業し日本在住時はデザインや映像制作を生業としていた。仕事の他に副業兼ライフワークと捉えて好きでやっていたVJ (クラブやフェスティバルなどでの映像演出) やアートアニメーションと呼ばれる作品制作、今でもお世話になっている あるグループに参加し上映企画運営スタッフをするなど休日はこういったことに時間を使っていた。こうして書き出してみると、創作することにたくさん時間を費やしていたと言える。あとは音楽も好きでバンド活動もしていた。

なんだかこんな風に書くと充実していたように見えるかもしれないが、しょっちゅう人生に迷っている普通の20代だった。

オランダ移住後

ところが、オランダへ移住してすぐに2人目を出産した私は乳幼児2人を抱えて家事育児そしてオランダ語の習得に忙しく、制作活動にまでなかなかいきつかなかった。アニメーションはとても集中力が必要だし、手間暇のかかる仕事だ。乳幼児が居るとアニメーション制作をするのはとても難しかったので私は息抜きに時々絵を描きはじめた。絵を描くのが簡単だと言いたい訳ではなく、その時の私にフィットしたし、以降今でも絵を描いている。その後、コロナの頃には前述した日本のアニメーション企画運営グループより声をかけていただき久しぶりに制作を再開できた。

そして前回書いた burn-out 後の休養期間に訪れたアトリエでオランダ人女性Aさんに出逢う。

出逢い

所々黄色にペイントされた古いビル。家から自転車で5分ほどのこのビルに、私は初めて入った。中にはたくさんのスタジオ、アトリエ、クリエイティブ系の会社が入っている。彼女のアトリエは一番上の階の一番端っこ。何故か日本の文房具が並べてあったので、次女と私はそれに反応して話しかけた。つい最近日本へ旅行に行ったそうで日本の文房具が好きだと言っていた。

私は彼女の作品にキュンとした。どう見てもガラクタだったであろう "モノ" 達が完全に彼女の感性によって "作品" へと美しく形作られていた。

しばらく忘れていた感覚、脳の奥の方をくすぐられるような... そんな感じがした。私は彼女の Instagram をフォローして短い挨拶のメッセージを送った。

それから約半年後、友人がユトレヒトで日本のカルチャーイベントをするにあたって私は絵を展示することになったのだが、ふと彼女のことを思い出して招待メッセージを送ってみた。すると日本の古い漆器や一輪挿しなどを持って遊びに来てくれたのだ。実家にあった古いものだけど、もし気に入る人がいたら無料で貰ってくださいと言って。私はちゃっかり漆のカゴを2つもらった。

その時私は絵の展示とは別に子ども向けのアニメーションワークショップもしていた。彼女はその様子をしばらく見たあと、またアトリエに遊びに来てねと言ってくれた。早速約束をして翌週には彼女のアトリエへ行った。

共通点

久しぶりに彼女のアトリエへ。ゆっくり話をするのは初めてだったが、彼女は英語がとても上手で声も優しく聞きやすかった。もうすぐまた日本へ子どもさんと旅行へ行くと言う。もう成人しているので旅行はこれが最後かもしれないと話していた。

どんな話の流れだったか、ふと私の burn-out の話になった。すると彼女も昔 同じ様な経験があると言い話が盛り上がった。世界共通、それは母どうしの何気ない雑談だった。そして彼女はこんな嬉しい提案をしてくれた。私が1ヶ月旅行へいく間、アトリエを使ってみない??

Wow...!!!!! Yes, of cause!! である。もう感激してなんなら涙ぐんでしまった。そして嬉しいことにこのタイミングでアニメーションのお仕事を頂いていた私は彼女のアトリエで制作することが出来たのだ。

ただ、おまけで書いておくと、制作開始から割とすぐ。パート勤務中にパン切り包丁で親指をズバッと切ってしまった。夫によると「日本やったら4針くらい縫ってるな」…というまぁまぁの切り傷だった。追い打ちをかけるようにその4日後には昨年10年ぶりに購入した中古の macbook のディスプレイがご臨終...という、なんの冗談かと思うようなアクシデントが続いた。これが美輪明宏の言っていた正負の法則だろうか。良かったね!! で終わらないのが人生である。This is the life. 


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