F1小噺【初見で察するクソパーツ①】
F1チームはタイム短縮のためなら何でもします。アッと驚くソリューションだったり、機能美を有するパーツなど様々です。
今回はタイトルにある通り「本当に効果あるん?」と思えるようなパーツを紹介しましょう。そして不思議な事に「これは失敗だろ」と直感で感じるのは偶然ではないハズです。
なので、ここに挙るパーツは単年の使用で翌年には綺麗サッパリ無くなる物が多いです。
2017年 シャークフィン + Tウィング
白く大きいパネル、これがシャークフィンです。直訳すると「鮫の背鰭」で、そのまんまですね。で、シャークフィンの先端に付いてる極小のウィングがTウィング。
まず、シャークフィンから説明します。
シャークフィンは2008年にデビューしたパーツなんですが、効果はイマイチ不明なんです。理論上はリアウィングへの気流を整流するはずなんですが、ドライバーは口をそろえて「違いが判らない」、酷い時はデザイナーも「効果は不明」と。一応、スポンサーへの商業面積が増えるのでチームにとってはそっちの方がメリットなのかも知れないパーツです。
そしてTウィング、コイツは2017年のレギュレーション設定のミスで生まれたんですよ。わかりやすく噛み砕いて言うと「ウィング禁止エリア」というのが定められているんですが、何故か前後50mmの空間がポッカリと未設定になっていたんですね。んで、チームはそれに気づいてウィング取り付けたというのが実情。
見ての通りダウンフォースを獲得するにはサイズが小さすぎるので、整流目的で搭載されているのだと思います。とは言え、リアウィングとの相関を見ても本当に影響しているか怪しいレベルです。
ハイ、見た目のダサさから翌年禁止になりました。
2011年 前方排気
この時代は排気ガスを積極的に空力利用するソリューションが大流行しました。マシン後方から生えるエギゾーストパイプをディフューザー付近に配置し、排気ガスをあの手この手で制御してダウンフォース獲得を目指していました。そんな中、ルノーが目を疑う場所から排気しました。
マシン中央のサイドポンツーンの下部からエギゾーストパイプが出てるんです。
マジでここから排気ガスが出ていて、エンジンから前方に向けて長いパイピングをしてるんです。つーか、ドライバーの背中は熱くないんだろうか。
前方排気の目的は、フロアのシーリングです。
シーリングについてちょっとだけ解説。F1マシンはフロアと路面の隙間を負圧にしてダウンフォースを獲得しています。マシン下部が負圧という事は、フロアの横の隙間から空気が流入してくるんですね。空気が流入してくると、せっかく発生させた負圧が正圧へ推移するのでダウンフォースが弱くなります。なのでサイドからフロアへ流入する空気を防御するのがシーリングと呼ばれる技術で、とても重要な役割なんです。
通常はシーリングをボルテックスと呼ばれる空気の小さな渦で行うのですが、ルノーはより強力な排気ガスによってシーリングしたのです。凄い発想ですが、残念な事にマシンは遅かった。
ちなみに何回かフロアが燃えました、そりゃそうだろう。
2014年 バタフライサスペンション
この時代はビームウィングと呼ばれるパーツが禁止されていました。
現在ではビームウィングが復活していますが、このウィングは重要な役割があります。もちろん、ビームウィング単体でダウンフォースも稼ぐのですが、その下のディフューザーの効率を高める目的でも使用しています。ウィングと違いディフューザーは拡散によって流速を高め、その結果として負圧が発生する仕組みです。そしてビームウィングの下部は負圧です。そこにディフューザーから排出される気流が引き寄せられるので、結果としてディフューザーの効率も上がるというカラクリです。
さて、本題のバタフライサスペンションを見てみましょう。
まず、ディフューザーがクッソ小さいのに気づきますかね?この時代のF1マシンは、リアでダウンフォースを獲得できる仕組みが乏しかったんです。そこでマクラーレンはサスペンションでビームウィングを形成し、ディフューザー効率を上げてやろうと思ったに違いありません。
で、マクラーレンはバタフライサスペンションを考案したんですが、レギュレーション違反か否かが争点です。F1ではサスペンションアームでダウンフォースを獲得できないようにレギュレーションが定められています。文言を簡単に書くと以下の通り。
・断面が上下が対象でなくてはならない。(翼断面の禁止)
・角度は水平から±5度まで。(上方へ気流を跳ね上げるの禁止)
さて、バタフライサスペンションの気になる断面と仕組を見てみましょう。
え~っと、一応、気流を上方へ跳ね上げていますがド素人が見てもクソパーツだという事が判ると思います。これがビームウィングの代替になるはずもなく、どのチームも真似しませんでした。