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2024.12.29・日本武道館〜BUCK-TICK「ナイショの薔薇の下」

「ハレの日」から1週間。
慌ただしい年末年始を終えて日常が戻り、あの日の喪失感にじわじわと侵食されている。これからも揺り戻されては立て直しながら、この悲しみや喪失感とともに日々を重ねるしかないのだ。きっと。

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以下、第二期BUCK∞TICK最高だった!かっこよかった!これからもついていく!という前向きな内容ではありません。
これまで櫻井敦司一点集中でコンサートを観てきた、櫻井敦司を愛してやまない一人のおさかながあの日感じた正直な気持ちを綴りました。

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2024年12月29日、一年ぶりの武道館。
去年とは違う不安と緊張で迎えたこの日。
1年前に比べたらずいぶん気持ちも落ち着いたし、事前に見所も教えてもらったし、いざ幕が開いて音が鳴ればきっと楽しめる。そう思っていた。

でも現実はそうじゃなかった。

もうステージ中央にマイクスタンドはない。
わかっていたはずなのに、幕が開いてもどこを観たらいいのかわからなくて、ステージやスクリーンをぼうっと眺めていた。
マイクを手にステージを駆け回る今井さんも、雷神みたいに金棒を振り回す(?)ヒデさんも、蜃気楼みたいで現実とは思えなかった。

いつもならオープニングで彼らの世界に没頭して終演まであっという間なのにちっとも入り込めなくて。会場の盛り上がりにもついていけなくて。
どうしてここにいるんだっけ?何を観てるんだっけ?って混乱していた。

何かが決壊したのは序盤「PINOAICCHIO」のイントロが流れた瞬間。
あぁ、もう過去曲をやるんだ。でも4人でやり続けるってこういうことだよね。…そう思ったら、涙が止まらなくなった。

どんな時も振り返らず果敢に進む。
容赦なく過去を壊し、乗り越え、新たな世界を構築していく。
そんなBUCK-TICKが大好きで、その姿に勇気づけられてきた。
彼らが壊し、乗り越え、創り続ける未来を見続けようと思っていた。

だけど、今回は無理だった。

ヴォーカルを失ってたった一年で新しいアルバムを出しコンサートを開く。
過去曲を4人で演奏して歌う。
それがどれほど困難で勇気のいることか頭ではわかっているし、成し遂げた彼らをすごい人たちだ、と思っている。
この1年、前進する姿を見せ続けてくれたことにも感謝している。

なのに。
大好きで面白がっていたはずのその”容赦のなさ”に、果敢に前進する姿に、今回ばかりはずたずたに切り裂かれた。

去年と違ってスクリーンにあっちゃんの姿は無い。
もちろん声も聴こえない。
聴こえてくる今井さんとヒデさんの声があっちゃんの不在を突きつける。
それが悲しくて苦しくてたまらなかった。

続くEnfant。
畳み掛けるように演奏される過去曲に耐えられず、耳を塞ぎたくなった。
その場から逃げ出したくなった。
コンサートなのにまるで苦行だ、と思った。
そして、大好きで楽しいはずのBUCK-TICKのコンサートでそんなことを思っている自分が嫌で嫌でたまらなかった。

わたし、何をしているんだろう。
どうして、この特別な日の武道館にこんな気持ちでいるんだろう。
悲しくて苦しくて、途中で何度も外に出くなった。
この2曲で泣き疲れ、その後はほぼ何も見えていないし覚えてもいない。

新曲が続いて少し落ち着いたところで「ミナシ児〜」、「SANE」。
あっちゃんの声があろうとなかろうと過去曲をコンサートで聴くのはまだ無理だ…と思いながらも外に出るのを我慢していたら「薔薇色の日々」。
耐えきれずに号泣して本編が終わった。

一旦外に出て少し落ち着いて、アンコール。
「ラララでいいんで歌ってください」って今井さんに丸投げされた「LOVE ME」では去年のあっちゃんのいたずらを思い出し、「Villain」では映像の手や目があっちゃんなのでは?とスクリーンに目を凝らす。
「狂気のデットヒード」や「ICONOCLASM」では、脳内で再生されるあっちゃんの声や仕草と現実の乖離に戸惑う(それでもヒデはすっごくすっごくく頑張っていたと思う)。

こんなふうに目の前のステージにまったく集中できず、あっちゃんを探してばかりいた。(こんなふうにステージを見るなんて4人にとても失礼だったな。と思うけれど、当日はそんな余裕はなかった)
そういえば、メンバー紹介の音声もあっちゃんの声を加工したような声だったな。

過去曲のみで構成されたアンコール。
辛うじて手ふりはできたものの、音が鳴っても体が動かず、あっちゃんの声じゃないことに気持ちがついていかなくて。いろんなことを思い出しては、あっちゃんの声が聴きたい、あっちゃんに会いたい、って思ってしまって。
会場の盛り上がりにも馴染めず、楽しむこともできないまま終演を迎えてしまった。

***

終演後に次々と発表された2025年の予定。
ライブハウスツアーの追加公演、ホールツアー、BUCK-TICK展、映画公開、12/29の武道館公演。
いつもなら大喜びするはずが、ああ、そうか。やるんだね。迷わずに、止まらずに、これからも進み続けるんだね。と、どこか他人事のように思っただけで、驚くほど心が動かなかった。

そして、大歓声に湧く会場を眺めながら
もうBUCK-TICKのコンサートに行くことはないんだろうな。
もう武道館ここにくることもないだろうな。
静かにそう思った。

4人になったBUCK-TICKが嫌いなわけじゃない。
だけど、今の私にあっちゃんがいないBUCK∞TICKは辛すぎる。
いつかまた彼らに会いたいと思えるまで、一旦PARADEから離れよう。
あっちゃんが遺したものを大事にしながら生きていこう。

櫻井敦司が歌うBUCK-TICK。
それが私にとってのBUCK-TICKだった。
櫻井敦司の声を、彼が4人と作り出す世界を、彼が纏う空気を、彼のすべてを、私は愛していた。今も愛しているし、これからも愛していく。
あっちゃんの代わりなんていないし、いらない。

特別な日、特別な場所で、自分の本当の気持ちがわかってよかった。

2013年から(コロナ禍を除き)通った武道館。
ありがとう、さようなら。

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一年かけて少しずつ気持ちが安定して、曲もだいぶ聴けるようになったし、大丈夫だろうと思っていたけど…全然大丈夫じゃなかったな。

武道館で会いたいが募って、寂しさがぶり返して、でもステージで歌うあっちゃんを観ることは二度とないってわかってるから虚しくて。また気持ちがぶれぶれになっている。でも仕方ないよね。時間をかけて整えていこう。

開演前に大好きなおさかなさんとゆっくり会えたし、4人のステージを体験して自分の本当の気持ちがわかったし、終演後にその気持ちを共有できる友だちもいたし。辛かったけど2024年の武道館公演に行けてよかった。

そして、この日の約束のおかげで2023年の武道館からの1年をなんとか乗り切ることができた。何もかもが未知の状態で2024年12月29日の武道館公演を決め、発表してくれた4人には感謝してもしきれない。
本当に本当にありがとう。

2013年初めての武道館から2019年の代々木まで。2023年、2024年。
B−Tに出会ってから、12月29日はずっと特別な日だった。
その特別な日に別れを告げるのはとても寂しいけれど、自分の気持ちを大事にしながら、あっちゃんがくれた宝物と一緒にこれからの日々を生きていこう。

たくさんの幸せと思い出をありがとう。



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