ロッシーニ
「ロッシーニ」は「上」の大好物です。
レバーパテやあん肝などが好きな「上」嬢が、世界三大珍味のひとつフォワグラを見逃すはずがありません。
ある年の「上」の誕生日プレゼントとして、作ってあげることにしました。
ロッシーニは牛フィレ肉のステーキ、フォワグラのソテー、マッシュポテト、バルサミコソースによって成立する料理です。
著名な音楽家であり美食家であるロッシーニ氏が大好物をてんこ盛りにしたもの…と聞くと、なんだか親しみがわきます。
発想の方法というか、アイディアの源泉というか、そういう意味で「焼きそばパンみたい」だと私は思います。「上」には怒られますが。「美味しいものに美味しいものを合わせたら、もっと美味しい!」という無邪気さが、ロッシーニと焼きそばパンには共通していると感じるのです。
フォワグラと牛フィレ肉は、どちらも麻布の専門店「日進ワールドデリカテッセン」で購入しました。
ロッシーニが作りたいのだ、と牛肉売り場のお兄さんに伝えると二つ返事で良いものを見繕ってくれます。
ここのお店は変わったお肉のラインナップが豊富で、ウズラ、ウサギ、ワニなども手に入ります。
ウズラのローストにチーズリゾットを詰めたものを作ったときも、このお店で調達しました。(その話はまたいずれ)
シェアハウスの名物キッチンで、まずはジャガイモを茹で始めます。
マッシュポテトにするときは、私は火を通す前に全て皮を剥き刻んでしまいます。
それを浅い鍋に敷き詰め、ひたひたの水でごく弱火で茹でます。水気が無くなる頃と火が入りきる頃合いが大体揃うようにたまーに水を足しながら、基本的には放ったらかしで、その間に別の料理を作ります。
グズグズになってきたところでバターをたっぷりと落として混ぜ混ぜ。塩と少量のブラックペッパー。今回はステーキのソースと絡めるので塩気は控えめにしておきます。
ジャガイモの傍らで、肉を焼きます。
愛用の鉄製フライパンをカンカンに熱して、一気に焼き付け。ブランデーでフランベ。アルミ箔に逃がして落ち着かせます。
そのままフォワグラもソテー。表面に小麦粉をまぶしたフォワグラを同じフライパンに入れて、表面がカリッとするまで火を入れます。
フライパンからフォワグラを取り出したら、すかさずニンニクチップ、ブランデー、バルサミコ酢、塩(と、ちょびっとだけお醤油)を入れてソースを作ります。
皿に牛フィレ肉、マッシュポテト、フォワグラ、ソースの順に重ねたら、横にズッキーニのグラッセを添えて、「下」流ロッシーニの完成です。添え物の準備が済んでいれば瞬く間に出来てしまいますね。
この間、「上」はワインを飲みながらカメラを構えて待っていてくれます。カメラ越しにインタビューを受けることもしばしば。
「今日の特選素材はなんですか?シェフ」
-日進のお兄さんが選んでくれたフォワグラと、私のお父さんが送ってくれたブランデーですよー。
「この料理にはどんなワインがあうでしょうか?」
-今あなたが持っている、一本700円のワインでも最高に楽しいディナーになりますよー。
「できましたか!食べていいんですか!」
-もちろんです。熱いうちにどーぞ。
こんな感じ。
ブランデー多めで甘めに作ったソースは、「上」嬢のお口に合ったみたいです。
食後のデザートワインと、誕生日プレゼントのネックレスも喜んで受け取ってもらえました。
大切な記念日デートなのに、ついついキッチンで過ごしてしまう。
ロッシーニの「上」と「下」は、だいたいいつもこんな感じです。