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夕日ハンター、サントリーニ島で流した涙
旅の相棒との「旅の契約」がはじまった。
契約1年目の旅先は、ギリシャ。
契約どおり、夕日ハンターの行きたい旅先をえらび、夕日ハンターのやりたいことをし、食べたいものを食べる。
夕日ハンターはその名のとおり、夕日がすき。世界中で夕日をさがしている。
だから、世界三大夕日が綺麗な場所にランクインしている、ギリシャのサントリーニ島で夕日をみるというのが、今回の旅のメインイベント。
サントリーニ島の夕日スポットは西に面しており、晴れた日にはまんまるで巨大な夕日が見れる、らしい。
エミレーツでドバイ経由アテネに入り、ミコノス島で2泊。
真っ白な壁に、それぞれの家に一色だけ加えることを許されたこの街は、白ベースなのにカラフルで、おもちゃの街みたい。
そこから船でサントリーニ島へ。
港からはロバに乗り、街の中心地まで登る。
サントリーニ島には2泊することになっていた。
とにかく今回の旅のメインイベントは、世界で3本の指に入る夕日を見ることなので、2日とも、夕日の時間帯は夕日を見ることにささげた。
サントリーニ島到着1日目、天気は悪くなかったものの、夕日が落ちるところに雲があり、まんまるな期待通りの夕日を見ることはできなかった。
気を取り直して2日目。
日中はワイナリー見学へ行き、そのあとホテルを移動し、イアの街をぷらぷら。
夕日の時間が近づいてきたので夕日スポットへ。
お昼から、晴れてはいたけど雲のある日だった。
イアの西に面している崖のうえにのぼり(早めに着いてベストスポットを確保!)、夕日を待つ。
時間が近づくにつれてだんだんと人が集まってきて、まわりを見渡すと、夕日を見るために集まった人だかり。
なにかを食べながら待っていたり、おしゃべりしなから待っていたり。
みんなそれぞれの想いを胸に、夕日を待つ。
お昼から雲のあったこの日。
少しずつ太陽が西日になっていく。
太陽が降りていく先には、雲。
あー、この雲、どいてくれないかな。。。
手に力をこめて、ひたすら願う。
お願い、夕日ハンターが1年もまえからずっと楽しみにしてたの!
。。。
お願い、晴れて!!!
。。。
結局、雲はどいてくれなかった。
夕日は雲のなかにぼやけていった。
悲しいような、切ないような気持ちで夕日ハンターの方を向くと、彼女の頬には涙が流れていた。
そうだよね、ずっとこの日のことを楽しみにしてたんだもんね。
この日のためにがんばってきたんだもんね。
きれいでまんまるな大きい夕日を見せてあげられなくてごめんね。
わたしの力でどうなることじゃないのはわかっていたけど、どうしてもそう思わずにはいられなかった。
はっきりとした夕日は見られなくても、太陽は沈む。
沈んだあとのマジックアワー。オレンジが消えかけて、やってくる紫が街を包む。
白い壁の家々は明かりをつけはじめ、暖かい光が紫のなかをぽつぽつと照らす。
「また来てね、ってことだね。」
夕日ハンターは言った。
「そうだね、ハネムーンでまたおいで、ってことだよ!」
いつも女ふたりでハネムーンみたいな旅をしているわたし達にとってお馴染みとなった冗談を言う。
笑いながらも、なんだかやっぱり諦められなくて、わたしたちは崖の上からなかなか動かなかった。
マジックアワーは終わり、サントリーニ島は紺色の空につつまれていった。
おわり。