『祝福』(愛理)
※今井夏子「星の子」のネタバレを含みます。
今井夏子さんの「星の子」という作品を読んで、「信じる」ことについて考える。
数年前、この作品の主人公を演じた芦田愛菜ちゃんが「信じる」とは何かをインタビューで答えていて、
作品も知らなかった私は、ただ凄いなぁなんてぽかんと思っていたっけ。
22歳の、私。
星の子を前にして考える。
「信じる」ってなんだろう。
かつての私は「信じる」という言葉を軽々しく使っていた。
今思えば当時の私の「信じる」は、「期待する」でしかなかった。
自分の理想像や、そうであってほしいという願いの檻に、自分自身や相手を押し込める。
檻の中に入れたと思った幻想が暴れたとき思う。
「信じてたのに裏切られた。」
『期待していたのに、裏切られた。』
「信じているからね」って相手にわざわざ伝えたとき。
今は思う。あの時の私。
それは信頼じゃなくて期待であり、脅迫だ。
じゃあ、揺るがない「信じる」って、一体何なのだろう。
22歳になった私。
今の私にとっての「信じる」とは、
その人のその人らしさを祝福すること。
その人との関係において自分が後悔しない選択をすること。
人間は全員、それぞれ色んな側面を持っていて、全て表裏一体となっている。
不完全で矛盾だらけなのが、人間の愛しいところらしい。
でも、きっとその「信じる」って、
とても難しい。
だからまずは、自分を祝福するところから。
自分の清い心も濁った心も知って、
自分に自分が背中を預けられるようになって。
そうなって初めて、他人も信じることが出来るのかもしれない。
全部を知ることなんて出来ない他人を、祝福できるのかもしれない。
星の子は、とある宗教にのめり込む両親と、成長するにつれ抱く違和感に苦しむ主人公・千尋の物語。
物語のラスト、3人で星を見る。
父と母が見た流れ星は、千尋には見えない。
千尋が見た流れ星は、父と母には見えない。
それでも、3人で星を見る。
見ているものが違えど、
生きる世界が違えど、
それでも同じ星を見て、笑っている。
私とあなたは違うけれど、
見ている世界は違うけれど、
そんなあなたを、そんな私を祝福する。
いつか私も、そうやってあなたを祝福できるでしょうか。
祝福したいと、祝福できる人間になりたいと、
私は心から思うのです。
(5月テーマ:信じる)