『働けるおまえのためのうた』(日向子)
おまえのために。テンプレートをつかって宛てたメールを効率良く処理する。電話口のおまえに共感を示しながら、商品のいいところをすり込む。おまえは隣の席の他愛もない話に笑みを浮かべて相槌を打つ。数字を追うのも苦しくない。電話に出るのも怖くない。強い心の、傷つくことをおそれない、全部、おまえのためにやる。働くことは案外むずかしくないおまえのために書く。逃げなくてもうたえる、働きたくないけど働ける、世の中に価値を生み出す、周りのひとと溶け込む、おまえに、詩がある。わたしとおまえはうたっている。詩はわたしとおまえに。社会に適合しようが/しなかろう/が、おまえとわたしに詩がある。働くために、電車にすし詰めにされるために、朝早く起きるために、夜早めに寝るために、ご飯を作るために、寝床の中で、まな板のまえで、/わたし達はつぶされて/詩がなくても シワの伸ばされたシャツを着ていても せすじを伸ばして笑顔で電話口に喋りかけていても おまえとわたしに詩がある。毎日8時間働く私たちはうたう。働くおまえに詩情は・ふつふつと・必ずあって・世界の詩は・必ずわたしたちのもの
世界の詩は・
わたしの詩は・
おまえの詩は
世界のおまえのもの
必ずおまえのもの
働けるおまえのもの
安心してください
皆さんそうおっしゃいますから
ただ その場合は
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