anemos アネモス

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記事一覧

『心の天気、雨のち晴れ』(愛理)

何か理由があるわけじゃないのに、すっきりと朝起きられて、ご飯を美味しく食べられて、ご機嫌でにこにこ過ごせる日がある。  何か理由があるわけじゃないのに、心が重く…

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『染色』(桃萌)

誰が手を離したのだろう 型取られた感情と形容されない言葉 夏と冬が共存しないように 秩序だけが線引くのは空虚か 気まぐれは流動か 氷を咀嚼できない古い傷の痛み …

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『また砕いて、すり潰して』(愛理)

何度も何度も、同じ夢を見る。 ギリ、ギリ。 夢の中で、砕ける。 砕けるまで、歯を食いしばる。 夢の中で、痛い、痛い、そう思っても。 自分で緩められない。どうにも出…

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『察してよ』(桃萌)

よく耳にする言葉。 「察してよ」「空気読んでよ」 それは察せなかった者への怒りであり、 空気を読めなかった者への咎めである。 それを聞くたび、ごめんねって、一応思…

8

『歳をとるのが楽しみな話』(愛理)

「若さは最大の武器」 「今がいちばん華なんだから」 高らかに告げるそんな文言に、どこか鼻白む私がいた。 22歳の私は、まだまだ生きづらい。 世間で言う「若い」におそ…

5

『エピローグまで』(桃萌)

変幻自在な「じぶん」を見事に操る。その方法論は結晶みたいに複雑だけど、経験則が指差すから迷わない。雷紋の一筋を流れるその明るく眩しい銀は、ツヤツヤで繊細で、完璧…

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『祝福』(愛理)

※今井夏子「星の子」のネタバレを含みます。 今井夏子さんの「星の子」という作品を読んで、「信じる」ことについて考える。 数年前、この作品の主人公を演じた芦田愛菜…

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『愛と勇気だけが友達さ』(日向子)

アンパンマンマーチの歌詞読みなおした、きのう初めて気づいたんだけれど、アンパンマンは真の孤独なんだ。ほんとに愛と勇気だけが友達で、どれほど胸の傷がいたんでも愛と…

2

『フェアリー・ゴッド・マザー』(桃萌)

3歳のころから、私の中にはフェアリーゴッドマザーがいた。 暗い場所を選んで泣くことが多かった。幼いわたしにとって世界は知らない言葉と知らない感情ばかりで、何もか…

4

『きねんび』(桃萌)

くるしいのはわたしだけじゃないことを確認して安心するのは、他人の不幸をビリビリに破って半分ずつ分け合うことなのか。傷を舐めあって、お互いの塩分で真っ赤に爛れさせ…

4

『花束』(桃萌)

人間の心は底なしだから、どれだけ大丈夫をもらっても暗いほうへ落ちていく。まわりがいろんな色の、いろんな形の大丈夫をくれるのに、暗いほうに落下した瞬間、それは粉々…

8

『幸せの定義』(桃萌)

苦しくならないように1番上のボタンをあける 立ち上がる前にひとつぶのチョコをくちに含む いつもより大きな音で好きな音楽を聴く 私が生きやすいように、 あなたを傷つけ…

5

『夢』(日向子)

夢を見ている暇はなかった 私たちはただ朝起きて、空洞の頭蓋で朝の支度をして 夢を見ている暇はなかった 数字とにらめっこする、その数は 私が毎日心の数を減らすこと…

4

『春』(桃萌)

空気が冷たい理由は定かじゃない。ひんやりとした冷たさより、張りつめた冷たさ。 鼓膜の閉鎖感に気が付き、少し考え耳鳴りだと理解する。目を瞑ってしまうほどまっすぐな…

7

『悩むことって、贅沢かも』(愛理)

こないだ、初めてひとりバーなるものに挑戦した。 …うん、そわそわする。 隣の人はさっきから物思いにふけっている。 奥の人は窓の外を見ている。 私も真似事をしてみ…

8

『働けるおまえのためのうた』(日向子)

おまえのために。テンプレートをつかって宛てたメールを効率良く処理する。電話口のおまえに共感を示しながら、商品のいいところをすり込む。おまえは隣の席の他愛もない話…

5

『心の天気、雨のち晴れ』(愛理)

何か理由があるわけじゃないのに、すっきりと朝起きられて、ご飯を美味しく食べられて、ご機嫌でにこにこ過ごせる日がある。 

何か理由があるわけじゃないのに、心が重くて泣きたくなったり、1人になりたいのに寂しさを感じる日がある。

私はこの歳になって初めて、心って天気のようなものだと知った。

自分で生活を整えて、自分の心が何を感じているのか、丁寧にキャッチするようになって。
似たような日々のなかで、

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『染色』(桃萌)

誰が手を離したのだろう

型取られた感情と形容されない言葉

夏と冬が共存しないように

秩序だけが線引くのは空虚か

気まぐれは流動か

氷を咀嚼できない古い傷の痛み

欠伸を噛み殺したまま食いしばった歯

舌を怠惰で醜い曲線にする

目を逸らしたいほどの眩しさ

瞳を差すことで、あなたは手を離した

『また砕いて、すり潰して』(愛理)

何度も何度も、同じ夢を見る。

ギリ、ギリ。
夢の中で、砕ける。

砕けるまで、歯を食いしばる。
夢の中で、痛い、痛い、そう思っても。
自分で緩められない。どうにも出来ない。

朝起きたら、
頬の内側にうっすら残る痛み。

『歯ぎしり 治し方』

『ストレスを溜めないように心がけましょう。』

うんざりだ。
そんな抽象的なこと言われたって、どうしようも無い。

どうやら歯ぎしりって、ストレスの発散

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『察してよ』(桃萌)

よく耳にする言葉。

「察してよ」「空気読んでよ」
それは察せなかった者への怒りであり、
空気を読めなかった者への咎めである。

それを聞くたび、ごめんねって、一応思う。
申し訳なさそうな顔で、下を向いてみたりもする。

でも、「察してよ」って、すごく理不尽だ。

察することができるのは、自身の主観による常識や物事の範疇である。

その「主観」は、私の知識とか経験とかから作られた、オリジナリティ溢

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『歳をとるのが楽しみな話』(愛理)

「若さは最大の武器」
「今がいちばん華なんだから」
高らかに告げるそんな文言に、どこか鼻白む私がいた。

22歳の私は、まだまだ生きづらい。
世間で言う「若い」におそらく自分は入るけれど、

エネルギーがぱんぱんに溜まった感情に振り回されてばかりだし、人の目を気にしては疲れていて。

知識も足りない。経験も足りない。すべきことはどこかで分かっているのに踏み切れない。頭と心が一致しないもどかしさを抱

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『エピローグまで』(桃萌)

変幻自在な「じぶん」を見事に操る。その方法論は結晶みたいに複雑だけど、経験則が指差すから迷わない。雷紋の一筋を流れるその明るく眩しい銀は、ツヤツヤで繊細で、完璧な私だ。

「じぶん」はコントロール下に置かれている。喜怒哀楽は統計的で、操作性が高まるにつれてそれは簡単なゲームになる。

Aで人を笑わせて、Bで人に共感する。360度まわる矢印のボタンを勢いよく斜めにくねらせて、誰かの感情を急かす。

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『祝福』(愛理)

※今井夏子「星の子」のネタバレを含みます。

今井夏子さんの「星の子」という作品を読んで、「信じる」ことについて考える。

数年前、この作品の主人公を演じた芦田愛菜ちゃんが「信じる」とは何かをインタビューで答えていて、
作品も知らなかった私は、ただ凄いなぁなんてぽかんと思っていたっけ。

22歳の、私。
星の子を前にして考える。
「信じる」ってなんだろう。

かつての私は「信じる」という言葉を軽

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『愛と勇気だけが友達さ』(日向子)

アンパンマンマーチの歌詞読みなおした、きのう初めて気づいたんだけれど、アンパンマンは真の孤独なんだ。ほんとに愛と勇気だけが友達で、どれほど胸の傷がいたんでも愛と勇気のために生きてるんだ。へんに友だちを作ると愛と勇気を守れなくなってしまうから。 

アニメの内容はそこまで覚えてないんだけれど、たぶん、アンパンマンが誰かを悲しませないに自分の顔を分けてあげたり、悪いことをするやつを殴ったりする、そんな

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『フェアリー・ゴッド・マザー』(桃萌)

3歳のころから、私の中にはフェアリーゴッドマザーがいた。

暗い場所を選んで泣くことが多かった。幼いわたしにとって世界は知らない言葉と知らない感情ばかりで、何もかもが分からなかった。きっとそれが誰からも許されなくて、わたしは何回もわたしを殺した。信じたものはぜんぶ星屑みたいにほどけて、うるさい雨音になった。よく分からないまま泣いて、よく分からないまま眠った。

そうしてわたしの小さな心臓からこぼれ

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『きねんび』(桃萌)

くるしいのはわたしだけじゃないことを確認して安心するのは、他人の不幸をビリビリに破って半分ずつ分け合うことなのか。傷を舐めあって、お互いの塩分で真っ赤に爛れさせてしまうのか。
まいにち毛繕いする動物のように、いつか崩れてしまう毛並みを整え続けるのは、逃げることとおなじなのか。

だれも肯定してくれないのなら、おなじ動物どうしで手をつないでぴったり寝ることしかできない。ことばにしたら押しつぶされてこ

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『花束』(桃萌)

人間の心は底なしだから、どれだけ大丈夫をもらっても暗いほうへ落ちていく。まわりがいろんな色の、いろんな形の大丈夫をくれるのに、暗いほうに落下した瞬間、それは粉々になってキラキラ鳴きながら散る。

明るさは痛みや不快をもたらすから、耳鳴りがするほどの不幸を吸い込みたいんです。あなたがくれた優しさは、わたしがおおきな音を立てて咀嚼してからばらばらになり、真っ黒に液状化した共感と融合する。あなたの優しさ

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『幸せの定義』(桃萌)

苦しくならないように1番上のボタンをあける
立ち上がる前にひとつぶのチョコをくちに含む
いつもより大きな音で好きな音楽を聴く

私が生きやすいように、
あなたを傷つけないように、
意地悪じゃなくてできること

ことばを理解すること
水の中で息をすること
空を飛ぶこと

同じくらいに冷たい手を繋ぐこと
純白ではないが透明で
消えがちな淡く脆いマヌス

私が息をしやすいように、
あなたに気づかれないよ

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『夢』(日向子)

夢を見ている暇はなかった

私たちはただ朝起きて、空洞の頭蓋で朝の支度をして

夢を見ている暇はなかった

数字とにらめっこする、その数は 私が毎日心の数を減らすことで、やっとのことで手に入る

朝起きるという健やかな生活

すべては明日いきていくための

明日 同じ夢をみないための

この夜 あなたと一緒におなじ夢を見ること それだけが私の夢だった

あちらの世界で 喜びは この夢が私に隠された

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『春』(桃萌)

空気が冷たい理由は定かじゃない。ひんやりとした冷たさより、張りつめた冷たさ。
鼓膜の閉鎖感に気が付き、少し考え耳鳴りだと理解する。目を瞑ってしまうほどまっすぐな音が頭を循環する。
それが後頭部に退くのを見守りゆっくりと目を開けると、正面に1人の少女が座っている。

わたしは電車が発車するのを待っている。座席に座り、薄暗い外の景色を見ていた。

わたしは、音楽について問いたいようだった。

「あなた

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『悩むことって、贅沢かも』(愛理)

こないだ、初めてひとりバーなるものに挑戦した。

…うん、そわそわする。

隣の人はさっきから物思いにふけっている。
奥の人は窓の外を見ている。

私も真似事をしてみたけれど落ち着かない。慣れていない。
文庫本を出しては、仕舞い。
スマホを開いては、閉じ。
バーテンダーさんに話しかけられ、陰キャ全開で噛み倒してしまった。

私の指が、助けを求めるように動く。

「1人飲み 何する」

「1人飲みで

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『働けるおまえのためのうた』(日向子)

おまえのために。テンプレートをつかって宛てたメールを効率良く処理する。電話口のおまえに共感を示しながら、商品のいいところをすり込む。おまえは隣の席の他愛もない話に笑みを浮かべて相槌を打つ。数字を追うのも苦しくない。電話に出るのも怖くない。強い心の、傷つくことをおそれない、全部、おまえのためにやる。働くことは案外むずかしくないおまえのために書く。逃げなくてもうたえる、働きたくないけど働ける、世の中に

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