人工股関節置換手術のあとさき40〜QOLが上がった!後編
さて。
退院してもすぐには通常モードにはならず、回復を目指してリハビリに精をだしていたころ、友人から
「足が痛くなくなったら何したい?」と聞かれたことがある。
その時、わたしは、
「そうだなぁ。
すごく地味な答えになるけど、
うちの中で、部屋の隅にほこりがたまっているとか、読みかけの本が置いたままにしてあるとかに気づいた時に、サッと動けるようになりたいな〜」というようなことを答えた気がする。
そう、旅行に行きたいとか、ライブに行きたいとか、そういったことももちろんしたいけど、いちばん思ったのはそういったことではなかった。
ちょっと動こうと思った時に、そこまで移動するだけでまた股関節が痛むと思うと、ついつい まいっか!となってそのままにしてしまうことがよくあった。
けれども心は、あ、またそのままにしてしまった、とわかっているので、その釈然としない気持ちがほこりのように降り積もっていた。それでも、その都度、足の痛みとそれを天秤にかけて、やり過ごしてしまうほど動けなかった。なので、ついつい最小限の動きになってしまう。
それでわたしは一日の大半をソファに腰掛けて過ごして、ソファに置かれた大きなぬいぐるみのようになっていた。(それであんなに編み物に励んでいたのかもしれない)
それが解消できたらどんなにいいだろうと思ったのだ。
さて、今はどうだろう?
かなり動けるようになってきた。
先に書いたように、ちょっと気がついたらすぐに動ける。
だからといって家の中がピカピカになったわけじゃないけれど、自分的にはかなり満足している。
つい億劫になりがちだった、室内にたくさんある観葉植物にも、以前よりは頻繁に水やりをするようになったので、植物たちはとても元気になってきた。
気がつけば、日々のごはんの食卓もたくさんのおかずが並ぶようになった。
以前は、あともう一品つくるといいなと思ってももう足が悲鳴を上げていたのでまいっかとなることが多かった。
そうだ、手術の前は
「まいっか」だらけの生活だった。
暮らしの中の、こうすればいいな、これもやっておこう、ということに「まいっか」で目をつぶらざるを得なかったなあと気づく。
暮らしの中で「まいっか」が減ってきて、気がついたらすぐに動けるようになった。
そう!
それは本当にささやかなことかもしれないが、それによって確かにQOL(人生の質)が上がったといえよう。それは言い換えると、暮らしにゆとりができてきたということでもある。
「ゆとりのある暮らし」
なんて素敵なことばだろう〜!
動きたい時にいつでも動ける!という基本的なゆとり。
‥
手術を受ける前に、
いろいろな人から、手術を受けた方がどうだったか、を聞いた。
「地獄から天国に来たよう」と言った方もいたし、
「もうこんなに歩けるなんて!今はもう楽しくて仕方ない」と言った方もいた。
術後3ヶ月を前にして、わたしにもその方たちの気持ちが、こういうことだったのね!とわかるようになってきた。身体が動くということがどんなにありがたいことかも身に染みてわかる。
この地球では身体が資本だ。
大切にしようと改めて思う今日この頃である。