見出し画像

ショート 黒色と灰色の間

『さよなら』って言ったら
『いやだ』って引き留めて欲しい
そんな子供じみたわがままで
困らせてみたいけど

本当はそれを言ったら
もうお互いに止められなくなる
と知っているから
言わないでいる
そうじゃない、言えないでいる

私はいつもあなたを困らせる

最初は見たことない顔が見られた気がして
少し面白く感じたりしていたのだけれど
そのうちにあなたはいつも
何か言いたげなのを我慢して
笑ってみせるから
それを見て、何だか少しだけイラついて
それを見て、私の方も笑えなくなった

ひとりでいる寂しさを埋めることと
ふたりでいる気まずさを天秤にかけて
結局のところ、
どちらも望まない選択な気がして、
どちらともなく一緒にいる期間に
反比例してふたりの間に距離がうまれた

あなたは仕事の忙しさを理由に
少しずつ会う時間を短くしたり
少しずつ会う日を減らした

私はそれに少し安堵していたのに
私はあなたをなじった
ふたりの想いは一致してたのに
私だけ遠ざけられているみたいで
それを子供みたいに怒ってみせた

離れていると思い出す
昔行った場所、昔一緒に食べたもの
雨が降れば傘を持っているのかとか
業務連絡みたいな内容の連絡の間隔が
開けば心配だってする

なのにどうしてだろう
離れてしまった感覚は
少しずつ少しずつ突きつけられるように
感じる

わがままを言ったから嫌われた
とかそういうことではないし
嫌いが増えるから好きじゃなくなる
なんて分かりやすさではなくて
恋に冷めていく感じをお互いに
止めることをしなかったのかもしれない

私を選ばない方が良かったんだよ
きっと
冷めかけたコーヒーのようであっても
私はあなたをまだ好きだから
私からはさよならは言えない
でも、
好きだからさよならを言わないといけない
そんな風に思う

黒色と灰色の間にもいろんな色があるように
私の中の感情もいろんな色があるみたい


いいなと思ったら応援しよう!

りよう
よろしければサポートをお願いします。自費出版(紙の本)の費用に充てたいと思います