「マッチョは優しい」論がある。実際優しい。

文化系の人生を生きてきた。

中高6年間は美術部で、温室育ちで、大学や大学院は忙しかったものの、汗かきや上下関係と無縁だった私は、卒業後の進路にゴリゴリの体育会系企業を選んでしまった。

ミスチョイスだったな、と思う。しかし、自分にとっては沢山の気付きがあった。

そのひとつに、「人間、追い詰められて強制されたら案外達成出来る」。これが一番かも知れない。死ぬ気でやっても死ななかった。

私の勤めていた会社の新入社員研修では、試用社員としてハードな課題をこなす。

正直、人を気遣う余裕なんてなかった。恥ずかしいことだが研修中の私には余裕というものが皆無で、1番つらかった登山カリキュラムの前日には自分を奮い立たせるため自由時間に隣町まで髪を切りに行った。当日急に短髪になっていて驚かれた。

周囲の足を引っ張っていることが悔しかったし、クラス全員で達成することが重要で、私が脱落したら連帯責任なのはとても怖かった。仮病でパス出来ないかマジで当日の朝まで迷っていた。

そういう環境で、同期が優しく気遣ってくれたり色々工夫を凝らすのを見て(というか、普段通りに生活していること自体が)、辛い状況でも自分を失わないのは本当に偉いとしみじみ思わされた。

前日緊張でろくに眠れず当日は生理でコンディション最悪でも、箱根山が踏破出来たこと。こんな自分でも、周囲の助けがあれば結果を出せる、と知れたのは良い経験だった。

「マッチョは優しい」論に戻ると、体力が有るから優しく出来るのだろう。辛い状況でも人に優しくする余裕がある人は凄い。学生時代に、体育会系の厳しい上下関係やハードな練習に慣れた学生を採りたがる企業が何故多いのかよくわかった。

その後、ハードな職場に配属された(私から見てパーフェクトな)同期たちが酷く痩せてしまったり、メンタル不調で休職していることもあった。マッチョも無理をさせ続けたら折れる。過信しすぎるのはよくない。

よく「やりがいのある仕事」などと言うが、仕事で自己実現を達成するのは結構難しい。自分に向いた仕事内容でストレスなく働き、困らないだけの報酬が貰えて、社会貢献出来るのが理想的。そんな仕事ってあるのかなあ…。

「やりたい仕事」は「受けたい拷問」みたいな矛盾した言葉だ、と誰かが言っていた。

職探しをして、いま再び「やりたい仕事」を日々考えている。好きなことが必ずしも向いているとは限らなくて、ストレスなく続けられること、更に周囲の人間関係が重要だ。

幸い時間だけはあるので、まずは身体を鍛えようかな。

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