矛盾だらけの世界 #婚外恋愛
婚外が始まって半年間、
私はめちゃくちゃ追われていたと思う。
毎日数分単位で連絡のラリー。
布団の中では通知をオンにして
私が寝るまで起きていてくれた。
ケンカをしてしまった時には
夜中40キロほど離れた自宅から抜け出し
私に会いに来てくれたこともあった。
『○○を傷つけてしまうことになれば離婚する。』
『家族と離れる覚悟を直接話したい。』
そう伝えられたこともあった。
私とのことを呟くXのアカウントまであったほど。
その頃の私は彼を避けていた。
会おうと思えばいくらでも会えたのだろう。
だけど分かっていた。
この人との幸せな未来なんて存在しないこと。
だから怖かった。すごく苦しかった。
どうにもならない人にアプローチされても
どうしたらいいのか。
きっと望んでもいなかった。
望んでも叶わないことを分かっていた。
『離婚するなんて言わないでください。
私と結婚したところで誰に祝福されるんですか。
家族を大切にしてください。』
『そうだね。諦めるよ。』
『はい。』
これで終わればよかった。
そこで終わらせることができれば
これ以上傷つくことは少なかったのに。
だけど私は抜け出せられなかった。
割り切ればいい。好きだからいい。
いずれは終わるだろう。
離れようともしたけど
彼の熱量に丸め込まれ、流れに身を任せた。
こんな安易な考えが、後の自分を苦しめる。
この頃の彼は、もう居ない。
幻だったのだろう。
こんなにも自分のことを考えていてくれた。
『すごく嬉しい。
私と一緒になりましょう。』
あの時の私がもしそう伝えていたとしたら
どうなっていたのか。
それでもきっと、
彼は私の元へ来てくれてはいなかったと思う。
すべては私の気を引くため。
それだけのためにしていた発言なんだ。
私のためではない。自分のため。
この時も辛かったはずなのに、
この時に戻りたいと思う自分が存在する。
“好きな人に追われていたから”
理由はそれだけ。
今はもう、私を追いかけてくれる彼は居ない。
『来世では一緒になろうね。』
『約束だよ。』
どうにもならないけど、
ただ一緒に過ごしたかった。
“家族が居なければ”
生涯、彼と一緒に過ごしたかった。
そんな世界、どこにもないのに。