貢献力(あね)
いもうとへ
ヘアードネーションお疲れ様。のびのびと伸びた髪の毛。さぞ、扱いが大変だったことと思います。
三男の病をきっかけに、あなたがそれを決意してくれたこと、とてもうれしく思います。ありがとう。
小児がんの親の会、きょうだい児の会、子どもを失った親の会、そうした、苦しみを経験した当事者の方々が立ち上げた会が、たくさんあります。骨髄のドナー登録をしたり、頻繁に献血をされる方もいます。子どもがお世話になったから。今度は役に立ちたいから。あなたのとった行動も、そのひとつだと思います。
これは、あれに似ているな、と思いました。第一線で活躍されたスポーツ選手が引退するときの言葉。「今度は、体操界のために、相撲界のために、◯◯界のために、貢献したいと思います。」「もっと、このスポーツのことを知っていただけるように尽力したいと思います。」
感謝と貢献。
この間ね、あるカウンセラーの方のお話を聞いていて、その方がお母さんからの質問に答えていたのだけれど、その時の答えが、「子どもに聞いたらいいのよ。お母さん困ってるんだけど、どうしたらいいと思う?って。子どもは貢献するのが好きな生き物だから。喜んでお母さんの役に立ちたいって思うよ。」って。それを聞いて、うん、わかる、って思った。子どもにとったら、お母さんに相談されるなんて、信頼されてるみたいでうれしいし、ぜひとも日頃感謝をしているお母さんを助けたいものだ、そんな気持ちになりそうだと思った。
そして、子どもだけでなく、大人ももちろん貢献するのが好きなのだろうと思った。ありがとうという言葉に、誰も悪い気はしないように。そこに、多少なりとも、自分が貢献したいと思った気持ちがあれば。あるいは、自分が貢献したのだと気付かされたのなら。
それが、人を生かす力なんだろうな。生きる力を失いつつある人が必要なのは、ありがとうという言葉だと思う。生きる希望は、人によって与えられるものだと思う。そこに誰かがいるから、人は生きようとするのだと思う。
それを貢献力と呼ぼう。自分は貢献することができるのだと、信じる力だ。
ありがとうね。ヘアードネーションのことだけでなく、あなたがいてくれて本当にうれしい。こうして往復書簡ができること、感謝しています。