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ライブレポ:UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2021 「Normal」 @Zepp Tokyo 2021.2.8

 日本屈指の3ピースライブバンド・UNISON SQUARE GARDENの2021年1発目のツアーの東京公演を観に行った。
 
 2021年のユニゾンは今回の「Normal」ツアー、2012年に行われたツアーの再現ツアー「UNISON SQUARE GARDEN Revival Tour "Spring Spring Spring"」、昨年リリースのアルバムを引っ提げた「Patrick Vegee」ツアーと計3本ものツアーを予定している。
 そして今回は「Normal」と題された、Zeppを中心としたライブハウスツアー(追加公演として2021年3月23、24日にぴあアリーナMM公演が行われた。)。メンバーの田淵(敬称略)は2021年1月31日に更新したブログにて

「いや、ロックバンドは普通ライブをやるだろ」

(「小生田淵がよく喋る2021年1月」2021年1月31日 UP)

という言葉を残していた。
 2020年2月26日に有観客イベントの自粛要請が政府より発表され(自分はこの日Perfumeの東京ドーム公演を観に行く予定だったが、午後にスマホで公演中止を知り落胆した。)、その後多くのアーティストは従来通りのライブ活動を行うことが困難となり、1回目の緊急事態宣言解除(2020年5月)後も、キャパシティ制限、歓声の禁止など様々な制約のもとでそれぞれがライブ活動を行ってきた。
 UNISON SQUARE GARDENも例外ではなく、2020年春に行われる予定だった対バンツアーやイベント出演はすべて中止となった。
 それでもバンドは元々有観客ライブを予定していた7月より3か月連続で異なるコンセプト・選曲での無観客配信ライブを行い、10月から12月にかけては「全席着席指定、1時間限定」厳守によるライブツアー(元々アルバムツアーのために会場を抑えていた。)を行うなど、できる範囲で観客、そしてメンバー自身が最大限楽しむための施策を行ってきた。

 そして2021年は「普通」というワードを冠したツアーからスタート。当然ライブハウスであっても全席指定、キャパシティ制限、マスク着用、歓声はなし、という様々な制約はあり、メンバーが本当に望んでいる「普通」とは程遠い(コロナ前の「普通」が2021年中にやってくるのかももはやわからない。)と思われる状況であるが、バンドが楽曲を演奏し、観客はその時々のルールの範囲内で自由に楽しむ、というのが「普通」だとしたら、今回のツアーは立派に「普通」と言えるものだろう。

 アルバムリリースと関連したツアーではないとあらかじめ宣言されており(田淵ブログでは2019年リリースのシングル「Phantom Joke」のツアーという側面があることが示唆されていた。)、セットリストも新旧様々な楽曲が並ぶと予想されていた。

 18時少し過ぎ、ライブ開始のアナウンスの後暗転。ユニゾンのライブでは恒例のSE・イズミカワソラ「絵の具」が流れる。
 いつものように鈴木、田淵、斎藤の順で下手より登場。(ライトがなくても田淵だけは歩き方と姿勢ですぐわかる。)
 SEを切り裂くようにセッションがスタート。短いセッションだったが場内の空気を一気に変えるものだった。(一瞬「Dizzy Trickster」のイントロっぽいフレーズもあった。)
 そしてセッションが終わり、

悲しくちゃ終われない「まだずっと愛していたい」

と「Phantom Joke」のフレーズを1節歌唱するスタートで同曲を演奏。赤や青の照明とともに激しい演奏を魅せるメンバーは言うまでもなくいつも通りのユニゾンだった。

 斎藤の「ようこそ!」という掛け声とともに2曲目「オリオンをなぞる」へ。当然大盛り上がり。いつもの「Perfectly, Euphoria!」や「暫定ロマン」のパートで声を出すことはできないため、心の中で大熱唱。
 また座席が後方だったため、この曲での盛り上がりが観察できたのもある意味オールスタンディングではないことの副産物なのかもしれない。(ライブハウス公演は自分の場合できる限り一番前のブロックに行くため、会場全体の盛り上がりはよくわかっていないことが多い。)

 ワンマンツアーで冒頭からシングル曲を2曲連発することはほとんどないため、(そもそも「オリオンをなぞる」がワンマンツアーのレギュラーメニューで披露されるのは2016年に日替わり曲として披露されていた「Dr.Izzy」ツアー以来。)この日のライブは2019年に行われた「プログラム15th」ライブのようにシングル曲連発になるのかと一瞬考えた。
 しかし、この次に披露された「meet the world time」によってその考えはあえなく崩れ去った。
 2014年の「桜のまえ」ツアー以来約7年ぶりの披露となるこの曲を予想することはできなかった。(というかアルバムツアー以外でやっていたのか。)この曲もサビの「メリーゴーランド」というフレーズを歌えないのは残念なのだが(曲調は全然メリーゴーランドではない。)、ユニゾンの演奏、田淵の暴れ具合を観ているだけで大満足だった。(あくまで個人の考えですがユニゾンのライブに行く理由の一つは、田淵が暴れているのを楽しみたいからである。)

 さらに「アトラクションがはじまる (they call it "NO.6")」でダメ押し。

リリースから約5年経っているが、やはりこの曲は本当に盛り上がる。客席前方の観客のはしゃぎようを観ているだけでこちらも楽しくなった。2016年の「Dr.Izzy」ツアーのZepp DiverCity (TOKYO)公演を観に行ったのが自分のユニゾン初体験なのだが、その際2曲目に披露された(「Dr.Izzy」の1曲目「エアリアルエイリアン」から連続)この楽曲の爆発力がすごすぎたせいで、以降もユニゾンのライブ、出演フェスに足を運ぶことになった。だが、まさかこの曲を生で約4年2か月ぶりに聴くことができるとは。(個人としては2016年のCOUNTDOWN JAPAN 16/17以来)。
 盛り上がる楽曲なのでもっとライブでやってほしい。
 だがこの曲の歌詞をあらためて読むと、

守りたいものはある 例えば何気ない約束とか
時間はかかるし 悲しいことは断続にある
だけど容易に投げ出したりしない
さあ格別のshow timeを!オンステージの5分前

「アトラクションがはじまる (they call it "NO.6")」

 という歌詞がある。2021年のコロナ禍では「悲しいことは断続にある」し、元通りのライブを行うには「時間はかかる」かもしれない、でもライブ現場という「守りたいものはある」。
 だからこの楽曲を演奏することによって「格別のshow time」を届けるし、あらためて山積みになっている課題を「容易に投げ出さない」という宣言を行ったのではないだろうか。

 考えすぎか。次行こう。

 斎藤の「Normalツアーへようこそ!」という短いMCから2nd Album『JET CO.』の冒頭を飾る「メッセンジャーフロム全世界」と「コーヒーカップシンドローム」を連続で披露。アルバムリリースから約11年経った2021年にこの2曲を連続で聴けるとは。
 その後もユニゾン楽曲の中でも随一のカオス曲「BUSTER DICE MISERY」、四つ打ちによるダンスナンバー「instant EGOIST」、高速ポップナンバー「10% roll, 10% romance」を文字通り"間髪なく"演奏。(「10% roll, 10% romane」で場内ほぼ全員が飛び跳ねていたし、このあたりの楽曲での田淵の暴れ具合は相変わらずだった。)

 ここまで9曲披露されているがアップテンポナンバーしかない。観ている自分は座席ありにも関わらず、まるでオールスタンディングで楽しみまくったときのような疲労感を感じ、「10% roll, 10% romance」が終了し暗転した際には思わず水筒のお茶を飲んだ。
 観ているこちらでさえこれだけ充実した疲労感を中盤時点ですでに覚えたが(自分が老化しているだけかもしれないけどね。)、メンバーの疲労感は演奏への集中度合い、演奏・歌唱の難しさから察せられるものである。
 だが、このとき斎藤のMC(ユニゾンのワンマンライブでロングMCは基本1回。)で発せられたのは、

「みんな熱い?それとも寒い?(観客に手を挙げさせる。)あっ、熱いんだ。こっちはね、まあまあ寒いです。」

(UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2021 「Normal」 2月8日Zepp Tokyo公演・斎藤宏介MC要約。)

だった。
 何そのあっさり具合!?別に疲れた~とか言ってもいいはずなのに、そんな姿まったく見せない。それは田淵、鈴木も同様なのだが、ここまでのハイレベルの楽曲をほぼ間髪なく演奏し続けたうえで、涼しい顔をしてMCを行えるUNISON SQUARE GARDENは「普通ではない」、とあらためて感じることができた。

 その後斎藤は、今回のツアーのコンセプトが2019年にリリースされたシングル「Phantom Joke」のリリースツアーに近いこと、アルバムツアーではないため様々な選曲が行えること、バンドにも「ずっとやりたかった楽曲」や「あんまりやりたくない楽曲」があること、そんななか今回はメンバー内で「演奏するかどうかのボーダー上」にある楽曲を中心にチョイスしたことを話した。(若干ニュアンスが間違っているかもしれないがこんな感じでした。)

 この後もそういった楽曲を演奏していくと宣言したうえでの10曲目は「RUNNERS HIGH REPRISE」。2017年リリースのシングル「10% roll, 10% romance」のカップリング曲(2019年リリースのB面アルバム『Bee-Side Sea-Side 〜B-side Collection Album〜』に収録。)であり、田淵が敬愛するバンド「the pillows」の楽曲「RUNNERS HIGH」へのオマージュ(パクリ?)ソング。(「the pillows」は週刊少年ジャンプの漫画「SKET DANCE」に多大なる影響を与えている、ということだけは書いておく。篠原先生、新連載ありがとうございます。)
 田淵はよくインタビューやブログで「カップリング曲はリリース時以外では演奏しない。」という発言をしていたが、2019年のB面アルバム発売以降そういったルールを徐々に緩和する姿勢なのだろうか。(2017年のツアーで過去のカップリング曲「ノンフィクションコンパス」を披露していたり、2020年のオンラインライブでランキング上位だった「I wanna believe、 夜を行く。」を披露していたりしたことはある。)、こういった楽曲が聴けるのは嬉しいし、カップリング曲にも良曲が多いのはユニゾンの特徴なので、個人的にはこの傾向は是非続けてほしい。

 さらに2nd Album収録のレア曲「キライ=キライ」(ツアー単位では約9年ぶりの披露。)、「Phantom Joke」のリリースツアーというコンセプトどおり同曲のカップリング「ぼくたちのしっぱい」とレア曲を披露。さらにシングル曲ながら演奏頻度は高くない名曲「流星のスコール」。美しい。まるで登山時に見ることができる綺麗な夜空が目の前に浮かんでいるようだ。(何言ってんだこいつ。)それくらいこの日の「流星のスコール」は美しく、神々しいものだった。

 ユニゾンのライブでは恒例の鈴木貴雄大先生によるドラムソロを経てラストパートへ。「パンデミックサドンデス」、最新アルバム『Patrick Vegee』収録の「スロウカーヴは打てない (that made me crazy)」で観客を揺さぶりまくった後、ライブ定番曲(ユニゾンにとってこのフレーズが正しいのかはもはやわからないが)「君の瞳に恋してない」「桜のあと (all quartets lead to the?)」を連発。(「君の瞳に恋してない」では、あの「どれだけ暴れようとコーラスの際には必ずマイク前に戻ってくる」田淵が少しだけラスサビに遅れていたことだけは記しておく。もちろん楽曲の盛り上がりには何の影響もない。)

 そしてこれまた恒例斎藤による「UNISON SQUARE GARDENでした!ラスト!」という掛け声とともに始まったのは16th Single「Phantom Joke」のカップリング曲「mouth to mouse (sent you)」(2020年7月に行われたオンラインライブでは20位に選ばれたこともあり披露されていた。)
 「Phantom Joke」のリリースツアーという意味でなら、収録曲3曲がすべて披露されたわけだが、「アトラクションがはじまる (they call it "NO.6")」同様、この曲の歌詞にもこのツアーのセットリストに入れる意味を感じた。

さよならが聞きたいんじゃなくて
また会えると言ってほしい
楽しいことだけしか見つからない
そんな時が来たら教えてね
ずっと繰りかえしながら

「mouth to mouse (sent you)」

 もちろん楽曲制作時やリリースの際にはコロナのことなどまったく考えていなかったわけだが、楽曲というものは時にリリースの後に起きた出来事に対して強い意味を持たせるメッセージ性を発することがある。
 コロナ禍において、今まで頻繁に会っていた人と会うことすら難しくなり(時には会うことに罪悪感すら感じることもある。)、大切な人に1回会うことが「最後」になることすら起こり得るこの時代において「mouth to mouse (sent you)」の歌詞は痛いほどに響く。

 演奏が終わり、いつも通り照明がつきBGMも流れた状態でアンコールを待つこと数分で、メンバーは戻ってきた。
 
 斎藤の「早く帰したいので1曲だけ。」という言葉で披露された楽曲はまさかの「さわれない歌」。
 2012年リリースの7th Single「リニアブルーを聴きながら」のカップリング曲でありながら、2015年リリースのSpecial Album『DUGOUT ACCIDENT』にも収録され、そのリリースツアーでは1曲目で披露された楽曲である。2019年の結成15周年記念野外ライブ「プログラム15th」でも後半の重要ゾーンで演奏された。
 メンバーとファンとの距離感を表しているとも言われている楽曲だが、歌詞の解釈はとても難しい。
 「突き放したいのか、それとも近づいてほしいのか。」というのはこの曲の一生の謎かもしれないが、あらためて「みんなに届かなくてもいい」楽曲を出し続けたUNISON SQUARE GARDEN。
 結果的にその楽曲たちは本人たちの想定を超えて多くの人々に届いたわけだが(「シュガーソングとビターステップ」のチャートアクションがそれを物語っている。)、そのなかでも、さらにコロナ禍という特殊な時代においても、UNISON SQUARE GARDEN本人たちは変わらず「近づき過ぎないちょうどいい温度感にいる」バンドであることを、この曲の披露によって明示した。
 これ以上の強みがあるだろうか。コロナであろうと自分たちは変わらない、と言わんばかりのメッセージ性。
 100年に1度とまで言われるコロナウイルスの蔓延は人々のライフスタイルにも強い影響を与え、ライブシーンへの影響力も絶大であった。(ユニゾンに関しても2020年10月より行われた着席ツアーはそれまでよりチケットの売れ行きが悪かった。)
 だが、UNISON SQUARE GARDENに関してはコロナがあろうと作風、ライブの方法論に関して変化はないのだろう。そのときそのときの遊び方でライブを行い、楽しむ。
 当たり前かもしれないが、自分たちも学生時代、校則や公園のルール(近所の公園では中学生以上球技禁止というルールがあった。)などを基に、そのとき一番楽しい遊びを考えていた。
 コロナというイレギュラーな方式を持ち込まれたわけだが、ユニゾンはこのような時代においても自分たちが一番楽しい「遊び」を考えついた。
 
 「ルールがあろうが、自分たちの楽曲なら制約下でも集まってくれた観客を楽しませることができる。」
 
やはりこのバンド、とんでもない自信家である。そしてそれを裏付けてしまう楽曲・ライブクオリティが羨ましい。

 この後、UNISON SQUARE GARDENは新たにツアーに出ることが決定しているし、2022年に放送予定のアニメ「TIGER & BUNNY 2」の続編の主題歌で新曲を発表するのだろう。(勝手な予想です。)
 
 このような時期でも演者と観客の双方がルールを理解しながら楽しみ、演者が最高の楽曲とパフォーマンスを用意すれば最高の空間を作ることができる。UNISON SQUARE GARDENはわずか90分のステージでそれらを証明してしまった。
 コロナ禍のライブシーンにおいて、生粋のライブバンドは淡々と自分たちの仕事を「普通」にこなしていた。


セットリスト

1.Phantom Joke
2.オリオンをなぞる
3.meet the world time
4.アトラクションがはじまる (they call it "NO.6")
5.メッセンジャーフロム全世界
6.コーヒーカップシンドローム
7.BUSTER DICE MISERY
8.instant EGOIST
9.10% roll, 10% romance
10.RUNNERS HIGH REPRISE
11.キライ=キライ
12.ぼくたちのしっぱい
13.流星のスコール
14.パンデミックサドンデス
15.スロウカーヴは打てない (that made me crazy)
16.君の瞳に恋してない
17.桜のあと (all quartets lead to the?)
18.mouth to mouse (sent you)

19.さわれない歌

内訳

・8th Album『Patrick Vegee』2曲。
・7th Album『MODE MOOD MODE』2曲。
・6th Album『Dr.Izzy』3曲。
・5th Album『Catcher In The Spy』2曲。
・4th Album『CIDER ROAD』1曲。
・3rd Album『Populus Populus』1曲。
・2nd Album『JET CO.』4曲。
・Special Album『DUGOUT ACCIDENT』1曲。
・B-SIDE Album『Bee-Side Sea-Side 〜B-side Collection Album〜』1曲。
・アルバム未収録カップリング曲 2曲。


※ユニゾンもオリジナルアルバム未収録楽曲、インディーズ時の楽曲を是非ストリーミング解禁していただきたい。

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