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今こそ「SKET DANCE」を。

 2021年2月8日発売の週刊少年ジャンプにて篠原健太先生の新連載「ウィッチウォッチ」の連載が開始された。
 篠原先生にとっては約8年ぶりの週間少年ジャンプでの連載である(2016年~2017年に連載された「彼方のアストラ」は「少年ジャンプ+」での掲載)。
 第1話から篠原先生らしいテンポ感あるギャグが満載で、新たな人気学園ギャグコメディ作品となる予感もした。

 そんな篠原先生の連載デビュー作こそ「SKET DANCE」である。
 2007年~2013年に週刊少年ジャンプにて連載され、単行本は全32巻発売、累計発行部数は1400万部を突破し、2011年~2012年にはアニメ化もされた。
 何でも屋集団であるスケット団(学園生活支援部)のメンバーである

ボッスン(藤崎佑助)・・・スケット団のリーダー。

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ヒメコ(鬼塚一愛)・・・紅一点で武闘派。

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スイッチ(笛吹和義)・・・パソコンの音声合成ソフトで話す情報通。

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の3人を中心に織りなす基本的に1話完結の学園ギャグコメディである。
 だが推理ラブコメSF・(時に下ネタ)など、たくさんの要素が含まれており、毎回角度の違うドタバタが展開されるのも「SKET DANCE」の特徴である。
 今回は篠原先生が新たに学園ギャグコメディの連載を始めた今、10年以上前のデビュー作をわざわざオススメしてみる。

魅力1 濃すぎるキャラクター、地味すぎる(?)主人公

 とにかく登場人物が多い。多すぎる。
 第19巻で発表された第2回キャラクター人気投票では648キャラもの投票があったらしい。
 もちろんこのなかにはたくさんのネタキャラが含まれているし、もっとたくさんのキャラクターが出てくる漫画は山ほどある。
 だが「SKET DANCE」の登場人物はとにかく濃い。嫌でも印象に残るように創られている。
 そして主人公のボッスンがとんでもなく地味である。しかも作中でネタにされるレベルに。
 作中にどんな生徒・教師が登場するかというと、

・スポーツ万能美少女だがとんでもない大食いの女子生徒。
・ヴィジュアル系を極めすぎて話す言葉がすべてそれっぽい言葉な男子生徒。(CV:GACKT)←マジ。
・実家の総資産が「5京円」な生徒会女子メンバー。
・実家が忍者の生徒会男子メンバー。
・語尾が基本「ゲス」の言動・行動その他諸々が下衆すぎる(アウトな)男子生徒。
・「子どもに戻る」「性格があべこべになる」「透明人間になる」などの怪しい薬ばかり開発するマッドサイエンティストな担任教師。

 一方主人公のボッスンの特徴は、

・集中力がすごい。
・手先が器用。

 うーむ・・・。ボッスンは悪くない。悪くないんだ。
 むしろ優しいし熱いし、やるときはやる男だしでちゃんと少年マンガらしい心を持っている。
 だが普段はとんでもなく地味なのである。
 しかし、この「集中力」と「手先の器用さ」によって展開していくエピソードも多く、また何よりも彼の真っ直ぐさは、多くの生徒や教師に影響を与えていると言ってもいい。 

 ちなみに新連載の「ウィッチウォッチ」でも、すでに生徒の名前が濃い、という片鱗を見せているので、これからの登場人物たちの展開が注目である。

魅力2 テンポ良いギャグ

 とにかくテンポが良い。
 1話の中でのボケ数も多く、そしてヒメコのツッコミのキレが抜群である。
 ボケに関しては、作者の篠原健太先生は昔「銀魂」のアシスタントを担当していたからか、時事ネタ・パロディへの感度も鋭い。しっかりとその当時の芸能ネタなどが作品に反映されており、漫画・アニメ・映画などのパロディやあるあるネタがこれでもかというくらい作品に散りばめられている。
 ボケの手数が多い分、同じ学校内でも似たような展開にならず、バリエーション豊富なストーリーを楽しむことができる。
 そして圧倒的なボケ数の多さのなか、ほぼ1人でツッコミを担当する「ヒメコ」の恐ろしさよ。
 ぶっちゃけあまりにもボケキャラが多すぎるため、ボケの渋滞が引き起こされることもある。だが、それらをすべて捌いてしまう魔法のようなキャラがヒメコである。
 というか結局SKET DANCEがおもしろい理由ってヒメコというスーパーツッコミの存在があるからかもしれない。
 「銀魂」だって一応ツッコミキャラは新八と土方という2名を用意していたのに

魅力3 時に地味すぎるシチュエーション

 また「地味」についてである。
 SKET DANCEは学園モノである。バトルものでもないしSFでもない。
 基本的にはSKET DANCEは「スケット団部室」で物語が展開される。
 なんなら部室から1歩も出ないまま1話が終わる場合もある。
 他の漫画なら1話ごとに、なんならページごとに視点となる登場人物が切り替わることだってある(例として「ONE PIECE」だったら最近はルフィが出てくるページの方が少ない)。
 だが「SKET DANCE」ではそんなことはしない。
 部室で完結する内容ならわざわざ外に出る必要はない。部室内でいくらでも話を転がすことはできる。
 まあ、第180話「SPIRIT DANCE」(第20巻)にて「銀魂」とコラボした際には、「銀魂」の主人公・坂田銀時から「漫画として成立してんのかコレ!?」とツッコまれる始末だったが。
 でも地味なシチュエーションだからこそ、学校生活におけるリアルさが描写されていたのだと思う。
 学校生活では、不良学校でもない限り日常的にそこまで起伏の激しいことは起こらない。
 だからこそ、そんな平坦な生活が「スケット団部室」という閉じた空間の中で表現されている。

 ここからは全288話の中から個人的なおすすめエピソードを紹介する。

おすすめEP1.
第15話~第17話「見てはいけない」「見たのね」「見るんじゃない」(第2巻)

 学園ミステリーの要素が強いエピソード。
 「スケット団が生徒・教師の依頼を解決する」というのが物語の基本フォーマットだが、そのなかでも王道パターン。
 ボッスンの集中力、スケット団メンバーの正義感が遺憾なく発揮されている。

おすすめEP2.
第49話~第51話「カイメイ・ロック・フェスティバル」「スケッチブック」「Funny Bunny」(第6巻)

 一般的に「カイメイ・ロック・フェスティバル編」と言われているエピソード。
 読み終わった後、間違いなくこの曲を聴きたくなるだろう。

おすすめEP3.
第54話「それが男のヒュペリオン」(第7巻)

 以下のワードはすべて第54話「それが男のヒュペリオン」に出てくるワードである。

・ヒュペリオン
・四人零和有限確定完全情報ゲーム
・アネモイ
・エウロス
・ゼピュロス
・ノトス
・ボレアス
・グランドクロス
・スチーム
・シューズ
・コダクサン
・ドドンドンドドン
・量産型ザフ
・抹茶あずきーな
・OL
・テキーラ
・OTL
・アブラシモビッチ
・アブラシモダッチ
・ストップザミュージック
・ドンストップザミュージック
・サイレントダブルアーツ
・デッドエクストリームアタック
・エクスカリバーの陣
・千手孔雀陣

 ここからどのようなストーリーが想像できますでしょうか。
 1つヒントとしましては、この回は物語の9割が「スケット団部室」で展開されます。
 もしこの話がおもしろかったら以下の話にもハマるかも!

・第19話「ジェネシス・ジェネレーション」(第3巻)
・第91話「壊れてしまった特別な・・・」(第11巻)
・第122話~第123話「ジェネシス・ワールド・グランプリ」(第14巻)
・第159話「燃えろファルケン」(第18巻)

おすすめEP4.
第66話「合コンでツッコんで」(第8巻)
第143話「爆笑ツッコミバトル!」(第16巻)

 「SKET DANCE」という漫画がおもしろく、そしてとてもテンポ良く読み進めることができる理由は魅力2でも書いたが、特に重要なのは「ヒメコのツッコミ」だと思う。
 これらのエピソードでは心行くまでヒメコのツッコミを楽しめる。というかヒメコのツッコミのボキャブラリーやテンポ、その他諸々にむしろ感心してしまうエピソード。
 どんだけ話術達者なんだ、ヒメコは。

 もしこれらの話にハマったら、第201話「ツッコミ禁止バトル」(第23巻)まで読み進めると今度はボッスンのツッコミも堪能できる(普段からボッスンもツッコミに回る話は多いが)。

おすすめEP5.
第270話「The Conte by King of Conte」(第30巻)

 スケット団3人のボケとバイきんぐ小峠のツッコミを楽しめます。
 以上。

最後に

 最後2つに関してはほぼボケとツッコミの話しかしていないが、「SKET DANCE」は学園ギャグコメディという枠組みの中で、様々な手法とリズミカルな会話を用いてこちらを笑わせてくる。
 会話の中には、大多数の人には意味のわからない単語も多く含まれているが、それらを理解できなくても笑える(むしろ理解しなくても大丈夫な箇所がわかりやすく表現されている)のが「SKET DANCE」のすごいポイントである。
 決して派手さがあるわけではないが、読んでいて自然にクスっと笑ってしまう、「SKET DANCE」はそんな作品である。

 ただ1つ問題なのは、ほとんどの話が1話完結だからといって、どの巻から読み始めてもいいわけではない点である。
 1巻から順に読んでいけば、ボッスン、ヒメコ、スイッチの人物像や過去、内に秘めたるものがより理解できるし、登場人物同士の関係の変化などもより楽しむことができる。
 「ウィッチウォッチ」で篠原ワールドにハマり出した方々、ご一緒に「SKET DANCE」はいかが?


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