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2on1(2対1)の哲学。※クロスグリップの話じゃないよ。(全文無料)

今日も今日とて柔術は楽しい。今日は考え方の話。


最初に。一般的な2on1

一般的な2on1は手首と肘の外側を持つ組手のことをいうことが多いです。今日はそれのことではなく(この組手のことも含みますが)、全体的な考え方を書いていきます。

1.2on1

シンプルに数で勝っているので強いです。相手の一つの部位に対して二つのもので制するのでコントロール、崩し、アタック、なんでもできます。柔術の技術はこの2on1を作る形が多いです。

よくよく考えてみると「アレ、言われてみるとこれも2on1だな」みたいなことがたくさんあります。

片っ端から、例を挙げていきましょう。

・手2 対 手1(肩1)
→一般的な2on1、キムラクラッチ、リバースキムラクラッチ、リストロック、ショルダークランチ、両手で片方の袖を袋どりする組手など。

・手1+足1 対 手1
→スパイダー、ラッソ

・手1+足1 対 足1
→デラヒーバ、リバースデラヒーバ、シントゥシンフック

・足2 対 足1
→トップのボディロックで相手のスネに自分の両腿を当てる形、エックスガードのエックスフックがかかった奥足、ハーフガードで挟む(※ハーフは相手もこちらの足を挟めたり、挟んでないもう一方の足が活きてることもあるので必ずしも強いわけではない)

・足2 対 胴1
→クローズド、リバースクローズド、バック、マウント

・手2 対 胴1
→ボディロック、リバースボディロック、もろ差しの四つ

・手2 対 首1
→バックチョーク、送り襟絞め、袖車、ギロチンなどチョーク・絞め全般

・足2 対 首1
→洗濯バサミ、ノーアーム三角絞め

・手2 対 足1
→トゥホールド

・手2 対 襟1 
→両手で片襟持つ組手

余談。これも2on1?片袖片襟

片袖片襟は、襟を袖に手を一本ずつ使っているので一見2on1には見えませんが、考え方によっては相手の半身(例えば右側)を両手でコントロールしているのでこれも1種の2on1かもしれません。そこにさらに足で腰や肩を蹴れば、相手の半身に対して手2足1を使った3on1をしていると考えられます。

2.3on1、4on1

一つの部位に3つ以上仕掛ける形もあります。これまた強い。

・足2+手1 対 足1
→ワンレッグエックス

・足2+手2 対 足1(しがみつく系)
→ディープハーフ、シングルレッグハーフ、片足タックル

・足2+手2 対 足1(足関節系)
→足関全般。フットロック、トゥホールド、ニーバー(膝十字)、ヒールフック。足関は力の強い足を極めるので手2の力だけでなく足2で全身を使ってポジションを制することが大事です。腰の突き上げなども含めると「足2+手2+腰1 対 手1」で5on1。

・足2+手2 対 手1
→腕十字。手2足2の四本で全身を使って一本の手を伸ばす。腰の突き上げなども含めると、「足2+手2+腰1 対 手1」で5on1。

・手2+肩(首)1 + 手1
→腕固め(リバースアームバー、カッティングアームバー)、肩口で手を固定して極める。膝で肩を挟んだりすることもあるのでそうすると「足2+手2+肩1 対 手1」で5on1。

よく、「手の力じゃなくて全身を使え」「腕じゃなくて背筋で取れ」とかいいますが、あれも2on1的哲学かもしれません。なるべく多くのものを動員した方が強いですから。


3.手足だけじゃない頭や胴体やラペラも動員して2on1、3on1する

顔は第三の手といってもいいでしょう。ラペラを使うのはも手が伸びるようなもんです。胴体(胸、腹)も使えます。肘、肩、なども。使えるものは全部使います。

柔術における頭は第三の手っていう話(全文無料)|柔術哲学(アンディ)

・ラペラ1+手1+足1 対 足1
→ワーム、リバースデラワーム、ポリッシュワームライダー、スクイッド

・ラペラ1+手1 対 手1
→クローズドからラペラで手を巻き付けるやつ、バックから手にラペラ巻きつけるやつ(手錠とかいいますよね)

・手1+足1 対 ラペラ1
→ラペラスパイダー、ラペララッソ

・腰1+手1 対 足1
→レッグドラッグ

・手1+肩(首)1 対 足1
→肩口で取るダックアンダー(ライイングレッグドラッグ)、片足かつぎパス

・手2+胸1 対 手1
→胸で極める手首固め、顎で極めるやつもある

・手2+脇1 対 首1
→ノースサウス

・手2+顔1 対 首1
→バックチョーク。最初の2on1で「手2 対 首1」として紹介しましたがこれも顔を使っていますね。もっと言えば胸や肩の圧力とかもつかっているのですが、こういうことまで言い出すとキリがないのでやめます。

手2+ラペラ1 対 首1
→襟絞め系。これも最初の2on1で「手2 対 首1」として紹介しましたがこれもラペラ(襟)を使っていますね。

・手1+頭1 対 首1
→ワンハンドのバックチョーク。

・手1+ラペラ1 対 首1
→ワンハンドの襟絞め。



ちなみに「1.2on1」で書いたクローズドやボディロックは以下の様に考えることもできます。

・足2 対 胴1 → 手2足2胸1 対 胴1
→クローズド、リバースクローズド、バック、マウント

・手2 対 胴1 → 手2胸1 対 胴1
→ボディロック、リバースボディロック、もろ差しの四つ

4.3on2

三角絞めの3on2

三角絞めの形などは腕1+首1の2つをまとめて攻めるので 〇対2 の形になります。実際アプローチしてるのは首1なのでこれを2とカウントするか微妙ではありますが。

・足2手2 対 腕1+首1
→三角絞め。頭を引き付ける両手を含めると4対2。頭を引き付けなくても極まることもある(後述)

・手2+顔1 対 腕1+首1
→肩固め。両手に加えて肩や顔(耳)を使います。

・手2+胸1 対 腕1+首1
→ダースチョーク、アナコンダチョーク、ジャパニースネクタイ

肩固めはアームトライアングル、腕三角、とかいいますね。

数で上回る、3on2

・手2+足1 対 手2 → 手2 対 手1
→バックの首を守る攻防で、相手の足を自分の足で上からトラップする形。そうすると相手は手1で手2を相手してチョークのディフェンスをしなければならない。マットヒューズポジションやクルシフィクスなども同じようなコンセプトです。

https://www.jbjjf.com/wp-content/uploads/2024/11/JP_IBJJF_RulesBook_JUN2024_1.pdf

余談。ガードポジションは4対2?

柔術の最大の特徴であるガードポジションでは、足を使って組手を作ることができます。立っている相手の手2に対して下は手足4で組手争いできます。

(実際はトップ側も足を使うことはできるので単純に「手2 対 手足4」となるわけでもないのですが、考え方の例としてあげました。)

5.数が同じ、もしくは劣っていても勝てるパターン。

1対1、2対2、もしくは1対2でも勝てることもあります。効率の良い力の使い方をすればその攻防に勝てます。1つのリソースで相手の2つのリソースを制することができるのでお得です。

柔術のテクニックは、「相手が力が入らず、自分が強い力を出す形」を作ることを目指します。数で上回る2on1はその一つです。でも、この項で紹介する技術を使えば、数で上回れなくても、「相手が力が入らず、自分が強い力を出す形」を作ることは可能です。

5-1 体重や体幹を使う
→パスでは「足1対手1」の形によくなります。このときに体重を使って崩したり、パワーのある体幹の力を使ってさばきます。体重をかけて足を流したり、マットに押し付けたり、スパイダーに対して背筋で一気に足を横に弾いたりすれば、こちらの手1で足1を制することができます。
→トレアナパスも「手2 対 足2」ですが、体重を上手に使えば制圧できます。
→ボトムのカラードラッグは体重でぶら下がる力を利用するので手1で襟を引くだけでも崩せます。

5-2 相手の力の入らない形を作る
→例えば、スマッシュパスの様に上の足ごと潰せば相手が力が入らないです。スマッシュパスで相手の足2を腰1だけで制したり、手1で相手の上の足を抑えつけて足2を制することができたりします。
→お互いの袖を取り合ったとき、自分の肘が90度で相手の肘が伸びているとき、肘が伸びていると相手は力が入らないのでこちらの方が強いです。手1対手1でも勝てます。
→こちらは袖を取っているけど相手は取り返せていない形なども、相手はどこもグリップしていないので力が伝わらず手1対手1でも勝てます
→両足を束ねると力が入らないので「手2対足2」でもタックルをとれたり、パスできます。まあ、これは胸や肩もつかっているのですが、、、

5-3 力の強い部位を使う
→三角絞めは「足2 対 首1+腕1」の2対2ですが、筋力の強い足の力を使えば極まります。
→「5-1 体重や体幹を使う」も力の強い腹筋、背筋、大殿筋を使っているので力の強い部位を使っていると考えることもできるでしょう。体重を使う、というのも究極「重力」という強い力を使っていると考えることもできます。

5-4 パワーが全て
→数で上回るとか、効率よく力をつたえるとか、そんなもんは弱者の言うことです。強者は圧倒的なパワーですべてを粉砕します。相手が全身の力を使って4on1で腕十字を極めてこようが関係ありません。腕十字を極めてきた相手ごと持ち上げてマットに叩きつけて失神させましょう。筋肉があれば何でもできる。

→というのは冗談ですが、圧倒的なパワーの前には数で上回っても負けることもあります。キッズ相手とか、20キロ以上の体重差とか。いづれにしてもパワーがあるに越したことはないです。

5-1,5-2,5-3のどれも考え方次第では、
「手1+背筋1 対 〇〇1」
「手1+重力1 対 〇〇1」 
「手1     対 〇〇0.5」

と解釈することことも可能です。1対1をやっているように見えて実は2on1をやってます。要は相手よりも動員している数が上回って出力が大きくなれば勝てます。

余談。これも2on1?マットも動員する

相手の片足をマットにつけさせるクロスグリップパスや相手の手首をマットに押し付けて”ピン”する動き、

これは「手1 対 手1」「手1 対 足1」のようにも見えますが、

手1+床1 対 足1
手1+床1 対 手1

と考えることもできるかもしれません。

まとめ

「両手で片手を取る2on1はもう一方の手が残ってるからそっちで何かされちゃうんじゃないの?」 そう思っていた時期が俺にもありました。

でも実際はそうならないです。

体の一つの部位をしっかりとコントロールすれば、全身(体幹)の自由が効かなくなるのです。

<手1を制する>
2on1で腕を流した形は体が流れて力が入りません。残った手も大したことができないです。

<足1を制する>
シングルレッグエックスやデラヒーバで片足をしっかりコントロールすれば、もう一方の足も自由が効かなくなります。

<首1を制する>
マクラ(クロスフェイス)で首を制すれば力が入りません。

なるべく多くのものを動員して数で上回る、という2on1の哲学は柔術全般に使える気がします。日頃のテクニックで意識してみると何か発見があるかもしれません。

2025/2/21 アンディ

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