柔術教則レビュー「松本一郎 DAWN OF KOD キスオブザドラゴンの夜明け」(全文無料)
今日も今日とて柔術は楽しい。今日は教則のレビュー。NR柔術の松本一郎先生のKOD(キス・オブ・ザ・ドラゴン / 内回りべリンボロ)とリバデラ(リバースデラヒーバ)の教則です
松本一郎先生の紹介
松本先生は大会結果も残しているバリバリの柔術家でありながら、国家資格を持つ治療家(柔道整復師)でもあります。体の構造の話が分かりやすかったのも納得。しかも東大寺に勤務する僧侶でもあるとのことです。パッケージのデザインも面白くて奈良の鹿とお寺のデザインが目を引きます。
五か所で指導をされてるとのことで、指導経験も豊富で教則内の説明も流暢でした。
内容紹介 (フローチャート)
0-9までがKODの基本的なやり方と展開、10はリバデラへの入り方(引き込み)、11-19が相手の体勢ごとのアタックやカウンター、20,21は体の構造について。KODのみならず、KODに入るまでの攻防、入った後の攻防、KODをディフェンスした相手へのアタック、効率的な体の使い方などKODをメインに使わない選手でも学びの多い教則です。
イントロで話していましたが、松本先生は週6の稽古をしながら全然ケガをしていません。無理のない効率の良い体の使い方をされているのだと思います。ケガをしないことは上達の最重要事項といっても過言ではありません。ケガの多いマスター世代はもちろん、上を目指すアダルトも松本先生の体の使い方は参考にしたいです。
柔道整復師の知識と経験に裏打ちされた体の使い方の説明が理にかなっていてスッと入ってきます。動きの意味や背景が分かると理解度が上がります。
ガードリテンションのコンセプト・メリット(なぜKOD、リバデラなのか)
コンセプト
私の考えるリバデラ(KOD)のコンセプトは、
「相手の力を利用するカウンター」
リバデラはハーフガードの一種です。ハーフは足を越えられていてパスに近いガードです。しかしパスに近い分、こちらもバックや股下に近いです。例えばクローズドからもぐって相手の股下に入るのは難しいです。片袖片襟やスパイダーで相手の下にもぐるのは可能ですがやや距離があります。
ハーフガードの名手の岩崎正寛先生も言っていましたが「ハーフはカウンターに優れてる」(岩崎先生のハーフは足のフレームの入っていないハーフなので少し別物ですが)
パスに近い分相手は圧をかけて乗ってきます、それを利用して近くなっている股下へアタックしていくのです。デメリットである「パスに近い」という要素もカウンターのチャンスとして利用して、メリットである「股下に近い」と組み合わせて強力なアタックとするのがKODなのです。
カウンターで大事なのは「後の先」と呼ばれる先読みです。松本先生が言うように自分だけが3秒後の展開を知っている状態で「先手のカウンター」をとりましょう
リバデラというガードの特徴
リバデラは上の足のフレームを入れて距離を作れるのでハーフの中でもディフェンスに優れています。オープンガードの防御力(距離)とハーフの攻撃力(カウンター)の両方の性質を併せ持つのがリバデラです。
リバデラ(KOD)は、「強い形でコントロールして自分からガンガン攻めるガード」ではありません。ディフェンスをする中で相手の攻めてくる力を利用してカウンターを取るのがリバデラ(KOD)のコンセプトです。
メリット
デメリット
松本先生は茶帯時代からほとんどパスされていません。ハーフ(リバデラ)はパスに近いのでディフェンス(ガードリテンション、フレームワーク、カウンター、先読み)ができないと使いこなすことができません。教則内で紹介しているフレームや組手やディフェンスの部分もしっかりと身に付けたいです。
向いている人
教則内でも言っていましたが、体の柔軟性はそこまで必要ないとのこと。確かに松本先生はそこまで体が柔らかいわけではありませんでした。
手足の長さは正直どちらでもいい気がします。長いとフレームが強くて厄介だし、短くてもコンパクトに回れるのでそこまでのデメリットにもならないと思います。
向いていない人
向いていない人というのはあまりいない気がしますが、ガードリテンションに自信がない人が最初からリバデラだけをメインに戦うのはややリスキーです。ディフェンスの習得と合わせて練習すれば誰しもが使えるガードだと思います。
有効な相手
相性のいいテクニック・合わせて覚えたい技
使ってみた感想
KODは個人的に好きなテクニックではあったのですが、今回の教則を見て知らないディティールが多かったです。リバデラは距離を取れる反面、固定力がないためアタックしても取り切れずに終わることが多かったです。バックに回った後の処理、上下反転した後の処理、崩し方など、これを意識してやったら逃げられていた場面で取り切ることができました。
教則内ではアタック前のフレームやディフェンスや組手を丁寧に説明していてそれがかなり参考になりました。リバデラを作っても強いプレッシャーをかけられてニーカットやロングステップをやられることも多かったのですが、教則内のフレームと組手を意識したところ止めることができました。まだカウンターを取る段階まではいけてないですが、積極的にカウンターも狙っていきたいです。
個人的に好きなテクニック
NO.14で紹介している KODの際の下の手の使い方が面白かったです。自分が今までやっていたものとは違う使い方で新鮮でした。これが攻撃するときも防御するときも有効にワークしてくれました。
カウンター系のNO15-19の5つのアタックは全部身に付けたいです。リバデラでよくやられるリアクションなので。これを持っておくとアタックとしても牽制としても使えます。全然知らないアタックでした。18ストンプスイープと、19オモプラッタからのバックテイクが特に好きです。
NO.21 背骨の構造、NO.22 脚の構造、NO23 基礎動作は参考になります。柔道整復師の松本先生の教える体の構造に沿った体の使い方を学ぶことで、柔術の技術の解像度が上がります。
まとめ
リバデラは、フルガードを解除された後のオプションとしても、メインガードとしても、他のガードとのつなぎとしても使えて非常に便利です。これをできることで自分の柔術の幅が広がります。
今まで回転系の技を食わず嫌いしていた人も、この教則で効率的な体の使い方を学び、リバデラとKODを身に付けて、柔術をよりエンジョイしましょう!
2023/1/9 アンディ
追伸
松本先生のガードリテンションの教則が発売予定とのこと。この記事で書いた通りリバデラを使うにはガードリテンションが大事です。リバデラ使いでなくともガードリテンションに自信があれば思い切ってアタックに行けるし、カウンターも取れるし、非常に重要な技術です。試合で勝つには失点しないことが何より大事なのでこの教則も必見ですね。
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