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脇差しのコンセプト(全文無料)
今日も今日とて柔術は楽しい。今日は脇差しの話。
1.脇差し(アンダーフック)の形
脇差しの形や種類について、簡単にまとめます。スタンドの脇差しの攻防でこれらの名称は使われることが多いです。
1-1 片方の脇だけ差した形
・相四つ(がっぷり四つ)
お互い片方の脇を差した形。対等。右手を差していたら右四つ、左手なら左四つ。差した側をカチ上げて差された側を絞って下げるのが基本です。
・ケンカ四つ
右構え対左構えの前手がぶつかる形で一方だけが片方の脇を差せる。差した方が有利
1-2 両脇を差した形(差された形)
・もろ差し
→両脇を差した形。有利な形。英語だと double under hook(ダブルアンダーフック)です。
・外四つ
→もろ差しされた形。基本的には不利だが、小手を巻いて相手をコントロールしたり、「閂(かんぬき)」という極め技(サブミッション)をしたりすることもできる。
2.2種類の脇差し+上手組み(オーバーフック、小手巻き、コムロック)
①高い位置の脇差し(カチ上げ)
→相手の脇下に自分の腕や肩が入る形。肩をコントロールできる。深く入れて肩を差すと肩を浮かせて、浅く入れて肩に手をひっかけると肩を落とすことができる。
②低い位置の脇差し(下手組み)
→相撲の回しを取るような脇差し。深く取ると強い。道着なら帯持ち、グラップリングならボディロックの位置。腰のコントロールが強い。自分の頭の位置が大事。
③上手組み(オーバーフック、小手巻き、コムロック)
→脇を差された形。上手は基本的には浅く。上手を深く取る(奥の回しを取る)と相手の下手を深く取られてしまう。脇を絞るようにする。
→相手の腕を抱えて自分の手が自分の胸の前に来るような形を「閂(かんぬき)」「小手を巻く」「コムロック」などという。うまくやれば相手がバックに回るのをディフェンスしたり、コントロールしたり、サブミッションを取ることもできるが、脇を差されている形なのでポイントを抑えないと、コントロールされる。
3.脇差しのコンセプト
柔術の脇差しのコンセプトは、
「相手の上半身(肩か腰)をコントロールすること」
です。
もう少し細かく言うと、
①高い位置(脇をカチ上げる)の脇差しのコンセプト
→肩のコントロール
②低い位置の脇差し(下手組み)のコンセプト
→腰のコントロール
脇差しのコンセプト(目的)を防ぐのが、上手組みで脇を絞ったり、小手を巻くという行為です。
4.脇差しのポイント
4-1 脇は差すことよりも差されないこと
脇を差すことは大事ですが、それ以上に大事なのは脇を差されないことです。雑に差しに行って差し返されるのが最悪です。
相撲では脇を締めて肘をあばらに押し付ける「おっつけ」という技術があります。また、レスリングやムエタイでは首をとって相手をコントロールできる「首相撲」もあります。肘のフレームを有効に使う技術で相手の脇差しをブロックできます。
4-2 脇を差しに行くときの注意点
・小指から差し返す
主にスタンドで有効な差し方。肘を上げてクロールをするように小指を上にして相手の脇のすき間に差し込んで脇を差し返す。
寝技のトップでも有効だが、肘が上がって重心が浮いた瞬間にスイープされるリスクがある
ボトムだと体重をかけられて潰されるので基本的にNG。ハーフの下やサイドで小指から脇を差しに行くと肘が上がった瞬間により深く脇を差される。
・肩や肘から差す
自分の手の平を自分の胸に当てるような形から脇を差す。スタンドでも寝技のトップでもボトムでも使える方法。ハーフの下からの脇差しではこの意識が大事。
4-3 脇差したあとの三つの使い方
「A:腕(かいな)を返す」
「B:脇を絞る」
「C:下手を取る」の
三つを立体的に使います。
A:腕(かいな)を返す(①高い位置(脇をカチ上げる)の脇差し)
→上(頭方向)に上げる。手のひらを下に向けて(スタンドなら小指を上にくるように)相手の脇をカチ上げる。コントロールが強く相手の力が入らない。
→スタンドなら腰投げ系の技やバックに回るのにつながる。
→寝技のトップなら肩固めやV1アームロックのエントリーにつながる。
→ボトムならタックルスイープやバックテイクにつながる。
B:脇を絞る(①高い位置(脇をカチ上げる)の脇差し)
→下(足方向)や手前に引く。脇を差した手で相手の肩をカップする。相手の肩を落とす(下げる)ことができる。
→スタンドなら崩しや足技の投げに使える。
→寝技のトップならハーフのコントロールや腕十字のエントリーで相手の上体を引き起こすときに使える。
→ボトムなら体重を利用した”ぶら下がる”崩しで使う。
C:下手を取る②低い位置の脇差し
→柔道・柔術なら帯、相撲ならまわし、ノーギならボディロックの形。腰をコントロールできる。引く力と自分の頭や肩の位置が大事。
→スタンドなら腰投げやサバ折りができる
→寝技のトップならボディロックのコントロールとなる
→ボトムならタックルスイープやバックテイクにつながる
5.応用の脇差し
5-1 相手の肘が90度以下の脇差し
一般的な形の脇差し(相手の手が自分の肩口)に対して相手の肘が90度以下になる形の脇差し(相手の手が自分の胸の前)があります。主に寝技のトップでマクラと合わせてクラッチして使うことが多いです。ハーフパスを狙う時に脇が固い相手に有効です。ボトムからだと体重を使えないので脇を差し返されることが多いです。スタンドでも差し返されるリスクはありますが、クラッチができればスタンドでも使えます。
5-2 手以外で脇を差す
脇を差すのは基本的に腕ですが、別のものでも脇差しできます。
・頭
→肩固めの形
→スタンドでも寝技のトップでも使える
・肘
→襟を持った形で肘を脇下のマットに差す。
→寝技のトップで使う。クロスニーなど。
・逆の手の肘
→後ろ袈裟の形
→寝技のトップで使う
・膝
→相手の脇を自分の膝でカチ上げる。
→マウントやサイドで使う。
5-3 キムラロック
正面からでなく背中側から脇を差しているのがキムラロックです。これも相手の肩をコントロールしています。そして極めも狙えます。
大事なのは相手の手をなるべく上(肩)側へ引くことです。相手の力が入らなくなります。
「ハーフのトップで、脇を差して相手の肩をマットにつけさせたいけど、脇が固いとき」、背中側から脇を差してキムラロックを作ると肩をコントロールしてハーフパスできます。
6.まとめ
他競技から学んで柔術に転換する
今回紹介した、「閂(かんぬき)」や「おっつけ」は相撲の技、「小手巻き」や「上手(うわて)」などはレスリングでもよく使われます。
レスリングと相撲は歴史も実力もある競技でその脇差しの技術は学ぶ価値ありです。脇差しを学ぶならレスリングや相撲はオススメです。
その際、相撲やレスリングの形そのままでは使えない場合もあるので柔術用にアジャストする作業が必要になります。
柔術は道着があるので、ついついそちらの道着のテクニックに偏りがちですが、脇差しは肩や腰を強くコントロールできる有効な技術です。脇差しを練り上げて自分の柔術に深みを出していきましょう。
動きの意味を理解する
脇差し自体に攻撃力やポイントがあるわけではありません。脇を差すことで相手をコントロールしやすくなる、というだけです。
ただ形を作るだけではなく脇差しの意味やコンセプトを理解して脇差しを使って相手を制していきましょう。
2024/9/3 アンディ
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