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なぜ柔術の基本原則を学ぶのか(全文無料)

今日も今日とて柔術は楽しい。今日は基本原則について。柔術哲学っぽい記事がかけて満足です。


1.すべてのケースを暗記するのは不可能

柔術には数えきれないほどのテクニックがあります。シチュエーションごとに正解(っぽいもの)と不正解(っぽいもの)があります。また、正解がひとつとは限りません。

でもすべて覚えて対応するのは不可能です。ではどうするか

2.基本原則を学ぶ理由

基本原則を学ぶ理由は2つ。

・効率が良い
・応用が利く

2-1 効率が良い

柔術には基本原則があります。原理、セオリー、理合、法則、コンセプトなど言い方はなんでもいいです。その法則にしたがえば、どのシチュエーションでもある程度は正解が分かります。無限にあるシチュエーションすべてを暗記するのは難しいので、原則を学ぶ方が効率がいいです。

「ひとつずつ暗記」よりも「原則と例外を覚える」

例えば県庁所在地を覚えるとき、47個一個ずつ覚えるよりも県名とは違うものだけ覚えるほうが効率がいいです。

英語の過去形を覚えるとき、すべての動詞を覚えるのはほとんど不可能です。「-ed」の規則を覚えたら、それ以外の不規則動詞を覚えれば効率がいいです。

柔術でも同様です。


基本原則:脇を差すと強い
例外:ニーシールド、フックガードでは脇は差さない

フックガードは脇差しの形よりオーバーフックの組手の方が強い

ちょっと脱線。なぜ例外の形がOKなのか考える

ちょっとややこしいのですが、もう一歩進んで原則の意味(脇を差す意味)を理解できると例外も覚えやすいです。

脇を差す意味:相手の上半身、主に肩を制する
→ニーシールドハーフやフックガードでは相手との間に足が入っているので脇を差しても相手の上半身をコントロールできないから脇を差さない。

視点を変えて、基本原則(コンセプト)は「相手の上半身を制すること」と考えると実はニーシールドとフックガードも基本原則に従っていることになります。

2-2 応用が利く

テクニックを単独で暗記すると、はじめてのシチュエーションでは何をすればいいか分からないですが、基本原則を知っていればある程度対応できます。

例えばシザースイープを形だけ覚えるのではなく原則を知っていれば別のスイープに応用できます。↓

シザースイープの原則:腕の力で相手を横に押すのではなく、相手をしっかりと引き付けて重心をのせて返す

応用:スパイダーシザースイープ(振り子スイープ)、フラワースイープ、フックスイープでも、腕の力ではなく相手をしっかりの引き付けて重心をのせることを意識する。

応用として「新たなテクニック」「別の正解」が生まれる

ハーフガードの基本のパスは脇を差して相手の背中をマットにつけさせて足を抜く動きです。それの応用として別の形があります。

ハーフガードパスの基本原則:相手の上体をフラットにする(背中をマットにつけさせる)。なので、脇を差して遠い側の肩をマットにつけさせれば足が抜ける。

応用:相手の背中をマットにつけさせられるなら脇を差せなくともいい。
・肩固めの形をとる(手の代わりに頭で脇を差す)
・フロントチョークをとって、相手がディフェンスの動きをすると背中がマットにつく
・後ろ袈裟の形で逆側の肘で脇を差す
・腰を抱く(ボディロック)する形で背中をマットにつける
・相手の手前の袖を引く

3.基本原則の身に付け方

3-1 教則を見る、同じ先生のクラスに連続で参加する

YouTubeやSNSの動画を単独で見ても基本原則はなかなか身に付かないです。オススメはパッケージとしてまとまっている教則動画をみること。テクニックのコンセプト、基本原則が学べます。

また、同じ先生のクラスに連続で出るのもオススメです。一回だけのクラスでは伝えきれない部分が分かります。複数回参加することで先生の伝えたい基本原則を理解できる可能性が上がります。

3-2 動きの意味を考える

これは殿堂入り柔術家でALMA FIGHT GYM HOMIES代表の細川顕先生が教えてくれた考えで自分の中でとても大事にしています。

手順の丸暗記も必要ですが、大事なのは「なぜこの動きをするのか」を考えることです。それが分かれば応用が利くようになります。相手のディフェンスへの対処や、似たような形での対応ができるようになります。

クロスニーで襟を持つ理由:相手の半身をコントロールするため
→襟が取れないときやノーギのときはどうするか、
→襟がとれないなら骨盤をカップしてコントロールすればいい

3-3 スパーでデータ収集

基本原則を学べるのは座学や打ち込みやレッスンだけではありません。むしろ実戦のスパーこそが原理原則を学ぶ一番の場です。

実験で、いろんな種類の大量のデータが集まればそこから法則や傾向を見出せます。スパーでデータ収集、情報収集、ストック集めをしましょう。

・格下(格下といういい方は好きではないですが)とのスパー
→格下相手に得意技をガンガンかけて気持ちよくなってもあまり意味がない。新しい技や制度が低い技を試す。打ち込みとは違い、スパーのリアルなリアクションの中で練習する技は貴重なデータとなる。新技は同格以上の相手ではできないことが多い。。

・同格とのスパー
自分の技の完成度を測れる貴重な実験の場。得意技の完成度を測るデータ収集でも、新技のデータ収集でもなんでもOK。大事なことはやられてもいいからトライすること。同格の相手では勝敗を意識しすぎてパスやスイープされたくないからと、膠着してしまったり、毎回同じ展開しかやらないことも多い。非常にもったいない。

・格上とのスパー
→力でがむしゃらにあたっても、ただ潰されるだけのデータしか集まらない。ディフェンスを意識するといい攻防ができることが多い。格上に自分のやりたいアタックをしようとしても形を作る前に潰されてしまう。やられるのは仕方ない。毎回同じパターンでやられないよう頑張る。別のやられ方をしてるならそれは成長
正しいリアクションを取る。そうすれば格上の相手はそれに対して正解のアクションを見せてくれる。それが貴重なデータになる。

どんな相手であっても大事なことは「スパーの内容を覚えておくこと」です。それが情報収集になり、自分の中にストックとして蓄積されます。それらのデータをもとに基本原則を発見することができます。

これだと基本原則を身に付けるのは難しいかも

・クラスに出ない、自分で教則や動画も見ない
・技のつながりや動きの意味を考えない
・スパーで毎回同じことをする(同じように見えて実は細かい変化、微妙に違うデータ収集をしている場合は別)。毎回、できる相手にできる技をかけている。

4.白帯のやるべきこと

とはいえ白帯で基本原則を身に付けるのは非常に難しいです。教則やクラスで先生の言っていることを本質的に理解するのは無理だと思います。自分もそうでしたし、他の人の話を聞いてもそうでした。

4-1 先生の言葉を覚えておく

とりあえず、先生の言葉を大事にして覚えておきましょう。経験を積んでいけばいつか「あのとき先生が言っていたのはこのことだったのか!」がきます。言葉は待ってくれてます。そのときまで大事に言葉を持っておきましょう。

4-2 いつかくる「良く気付いたね」。柔術をやっていて最高の瞬間

あとはひたすら積み重ね。とりあえず道場に来る。初心者ならソロムーブと打ち込み。スパーも分からないなりに考えてやってみる。そうすればいつか「実は〇〇って△△なのでは?」と基本原則にたどり着くときが来ます。

そのときは先生や先輩に聞いてみてください「お、良く気付いたね、だれかに教えてもらった?」と言われるので自信満々に「やってて自分でそう思ったんです」と答えましょう。間違っていることもあるかもしれませんが、他人からただ与えられた正解よりも、自分でたどり着いた答えは価値があります。

4-3 教則やYouTubeやSNSのテクニックは・・・

見てもマイナスにはならないですが、白帯のときは「そのテクニックが今の自分に合っているか」「SNSで流れてくるテクニックが見せ技なのか」「ほかのテクニックとの組み合わせ方」といったことが分からないのでYouTubeやSNSはあくまでサプリ程度に考えておくのがいいです。とりあえず道場にコツコツ通いましょう。

あえて言うならば、動画は有料の教則動画がオススメです。無料のものよりも質が担保されています(無料でもいいものはありますが玉石混合)。そしてパッケージとして体系的にテクニックまとめられているので基本原則やコンセプトを理解しやすいです。でも長いものが多いため、内容が難しくて頭に入ってこなくて途中で見るのが苦痛になって挫折してしまうことも多いです。苦痛にならない程度に。

5.まとめ

・基本原則を学ぶことは丸暗記よりも効率が良くて応用が利く
・基本原則を身に付けるには「教則やクラスでのインプット」「動きの意味を考えること」「スパーのデータ収集」が大事
・白帯はとりあえず道場にいく。すぐにはできなくてもいいので先生の言葉を大事にとっておく

基本原則を学ぶことは強くなるためにも、より柔術を楽しむためにも効果的です。

この記事が柔術を楽しむ一助となればうれしいです。

2024/6/14 アンディ

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