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おひとりさまへのおもてなしを考える

行きつけのカフェ、コメダ珈琲。

書き物をしたいなぁ。
本をゆっくり読みたいなぁ。
そんな思いが頭をよぎると、無意識に足が向かっているコーヒー屋さんだ。

ルーティンのように雑誌棚から手にするのが、日経MJ。
マーケティングに関わる記事が紙面を埋め尽くしていて、昨今のトレンドに触れさせてくれる。
田舎暮らしの自分に刺激を与えてくれるありがたい存在。

今日もいつも通りざーっと目を通していた。
すると、こんな見出しが飛び込んできた。

『ホテルでひとりステイ、おこもりする女性が増えている』

自宅だと子育てや家事で自分の時間が取れない。
気づいたら自分の好きなことがなんだったかわからなくなっている。
そんな女性が増えているそうだ。

資格をとるために。
積読している本を読むために。
自分へのご褒美に。
日常から距離を置くことで前向きになれ、送り出してくれた家族に感謝の気持ちが湧くという。

僕は女性ではないけれど、ひとりステイする女性の心理はとっても共感できる。
日常から離れ、自分の好きや心地よいを追求する非日常を味わう。
すると、日常の大切さ、ありがたみを感じることができるものだ。

ありがたいものを当たり前と思わないように、旅に出る。
以前、そんな思いを綴った。
旅という非日常が僕らに与えてくれる貴重な贈り物だ。


自分の心地よいを追求できる時代

私の働く旅館でもこの10年間で大きくお客様が変化してきたと思う。

おひとりさまがとにかく増えている。
かつては女性がひとりで旅館に泊まりに来ると、旅館側としてはなにかあったんじゃないか(訳アリ)、と危惧したと聞く。
それゆえ、一人客お断りという旅館も多かったようだ。

以前、当館にある日本酒BARに、50代の女性がいらっしゃった。
島根の地酒がなみなみと注がれたお猪口を片手に、
「主人は家に置いてきたの(笑)そもそも趣味が違いすぎるから、一人で自由に動けた方がいいのよ。お互いにとってね。」
と仰った。
今やどんな世代でも、自分の「好き」や「心地よい」を追求できる時代なんだな、と実感したことを覚えている。


おひとりさまの潜在的な欲求とは?

さて、そんな時代に、我々はどんなおもてなしができるのだろうか?
ひとりステイをする方が求める潜在的な欲求とはなんだろう?

ひとり旅のきっかけはさまざまだ。
ただただリラックスしたいという場合や、好きなことを誰も気にせずに集中したいという場合も。
ただ共通している思いは「自分の時間を大切にしたい」であろう。

お客様が自分の時間をどう捉えているか?
そこをしっかり掴むことがポイントになりそうだ。

私ならば、こちらから積極的に会話を働きかけることはしないだろう。
お一人だからといって気を遣って、当たり障りのない会話をするよりは、あえて必要以上の接客をしない。
しかし、お客様への注意は怠らない。
何か求めていそうなシグナルを察知できる、程よい距離感を維持する。

ただ、もちろんスタッフと会話を楽しみたいおひとり様も一定数いらっしゃるので、そのあたりの空気感を察することも大切。

程よく距離を置くのも、会話を楽しむのも、臨機応変に。
それがおひとりさまの時間を大切にすることではないか、と思う。


脱デジタル旅。
ひとり絶景ワイン旅。
ひとり芸術アート旅。
など、星野リゾートではさまざまな一人旅を提案している。

さまざまなひとり時間を求める方がいらっしゃることだろう。
私たち、おもてなし業に従事するものは、接客のマニュアルを一旦脇に置いておく必要がありそうだ。
そして、
目の前のお客様にとっての大切な自分時間ってなんだろう?
こんな質問を自分に投げかけてみるといいのかもしれない。



おもてなし産業をかっこよく。
あんでぃでした。



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