縁のかたち
数年前、実家の近所にスタバができた。普段そのスタバに行くことはない。避けているわけではなく、今住んでいる家から遠いのだ。
そんなスタバに、友達が行こうと言うので行った。
「同級生がいるかも。いてもわからんか、ハハハ」とか言いながら入ったら同級生がいた。コーヒーを飲みながら専門書を読む彼はあまり変わっていなかった。20年ぶりだった。
とはいっても、高校2年生のときに同じクラスだったというだけで、お互い目立つ方ではなかったため2回くらいしか話したことはないと思うし、お互い友達が少ないので共通の友人もいなかった。3年生のときに何組だったのかも知らなければ、どこに進学したのかも知らなかった。つまり私は彼にあまり興味を持っていなかった。
とはいっても、私は彼に話しかけられた状況を割とはっきり覚えていた。内容はまったく思い出せず、「この人は私に好感を持っているようだ、そして私はそれが別に嫌ではない」と思った感覚だけが残っている。そして、(この人友達少ないな)と結論づけるほど彼を観察していたのは他ならぬ私であり、その結論に少し親近感という満足を持っていたのも記憶している。つまり私は彼に興味がないわけではなかった。
話しかけないの?と友達は言った。なんか向こうも見てるよ、と言った。でも話しかけてどうするんだ?いろんな意味で。まぁfacebookに5年ぶりにログインしてみるか、と思ったところで、私は彼の苗字しか思い出せず、しかも高校の卒業アルバムは去年の断捨離で捨てたことを思い出した。友達に彼のことを聞いたら案の定、誰も近況は知らなかった。
我々らしい縁だ、と思った。