38度のダンジョン
東からの太陽が頭上を過ぎて、西の空に傾くまで。部屋の中から空の様子を眺めている。時間の過ぎるのを待っている。暑さを避ける為に。
海の近くの家の中から、一日中水平線を見ていたい。一日で飽きるかもしれない。川のそばで水の流れる音を聴いていたい。旅館で浴衣を着て。畳の上を好きなだけごろごろしながら。
あっという間に体力を削られる夏。人で一杯のレジャースポット。どこへだって行けるようでどこにも行っていない。
家から出て皆が同じような場所に集まるなら、それは家にいるのと変わらない。均質性の高まりを感じる。どこを切っても同じ顔が出てくる。
ずっと家の中は疲れるし、心と体の休まらない外では意味がない。ぐるぐる周って結局行き止まりだ。本当にそれでいいのか。
ソフトクリームを溶かしてもう一度積み上げた雲。大きく膨らんで空にいる。そちらからは何が見える?
強い日差しの照りつける、38度のダンジョンに息を潜める。
浅く静かに呼吸をしないと太陽の光線に焼かれてしまう。水分と日差し対策は必須。カメラを持っての散歩も命がけだ。
無理して外に出なくていい?いいえ、ひと遊び終えた後の炭水化物(ラーメン、白ごはん)、タンパク質(肉)、そしてお酒は最高なんです。
飽きるほどぼーっとする休日。汗になった分を麦茶とアルコールで取り戻す。
炭酸の抜けたような、肩の力を入れずに観られる映画がいい。風の抜けるような曲がいい。
どこかから肉の焼ける匂いがする。若者の笑い声。かき消す波の音。花火という名の季節が散る。転がった瓶と缶を片付ける。夏の一日が終わっていく。