蜃気楼に浮かぶ
物体との距離が近づき、見ようとしていたものの輪郭がはっきりとし始める。
初めは遠くの空にポツンと浮かんでいた点だった。点は光を放つ星であることが分かった。近い将来、空に浮かぶ星へ辿り着く。その為に打ち上げられた宇宙船。
あと少しで星に手が届きそう。求めていた答えがきっとそこにある。残り一歩の所で遠ざかってしまう。
僅かに記録に残ったのは、蜃気楼に浮かぶ星の輪郭だった。
毎日うんうんと考えていたことについて、ある日分かったような気持ちになる。
これが答えなのではないか。これこそが求めていた景色なのではないか。そう信じて土を掘り起こし、人が通れるよう整備して道を作る。試しに幾らかの距離を歩いてみる。
ところが歩いても歩いても中継地点に辿り着かない。遠くに旗は見えている。どうやら分かった気になっていただけみたいだ。もう一度道を敷く前から始める。
ファインダーの奥に浮かぶ像について、本当は何も知らない。きっと何も知らないまま一生を終える。誰もが涙を流すハッピーエンドには辿り着かないだろう。
ただ何も知らないから、少しでも心に捉えていたくて、よく見ようとする。向かった先が人の住めない星であっても。
空っぽの箱の中に、答えを求める為の問いを作り出す。
何も無い真っ白な空間に一つの点を打ち、一本の線を引く。土地と土地を結ぶ道を作り、街を作り、人が動く為のルールを作る。
一番最初は何も無かった。遠くの空に星を見つける前。
ファインダーに浮かぶ像を探す。僕たちは目を凝らして、もう一度よく見る所から始める。
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