バンクシー展の感想
多くの日本人は、バンクシーの作品を受け入れられない、と思います。
バンクシーは、他人が所有する壁に許可なく絵を描くからです。
作品を発表したいのであれば、美術館で発表すれば良いのです。
だが、しかし、世界には、それができない地域や主張があります。
1.作品「ナパーム」
3人が手をつないでいる絵です。
何も知らなければ、何の感慨も無いでしょう。
何故、この作品名が「ナパーム」なのでしょうか。
この作品を理解するためには、次の動画を視聴した方が良いでしょう。
The Vietnam War 1945–1975: “Napalm Girl”
彼の作品を正確に?理解しようとすれば、それなりの解説が必要になります。
なので、(当事者の許可を得ず)美術展で掲示されていたキャプション(展示解説パネル)も掲載しておきます。
この作品「ナパーム」をどのように解釈するのかは個人の内面の自由です。
ただ、その解釈を言語化して表明した場合、どこぞの企業から訴えられるリスクがあります。
なので、絵画は絵画として、言語化せず、「解る者は解る」という共感しかできません。
2.Love is in the air
上記のように、バンクシーは本当は重いテーマを掲げています。
3.毛利嘉孝先生の講演会
私は講演会「バンクシーを語る」を聴講しました。
・2024年11月3日(日)14:00-15:30
・講師:毛利嘉孝(もうり よしたか。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授)
・会場:東大阪市民美術センター 特別室
講演内容の一部を意訳すると、次のような趣旨でした。
バンクシーが住んでいる文化は日本とは異なります。それを前提にバンクシーを理解した方が良いです。
日本の警察は「おまわりさん」と呼ばれ、道案内をするなど市民と一体になっています。しかし、バンクシーの生誕の地、イギリスは、警察は国家権力であり、一般庶民と対立する構図になっています。
バンクシーは音楽家との関係を広く持っており、そのお金持ちが絵を買っています。
バンクシーの生誕の地では、他人が所有する壁に絵を描くことは、違法ではありますが、広く行われています。描いた絵に、別の絵師が上書きすることもあります。絵師同士が相互に上書きしあうこともあります。元の絵の一部分を残して、他の部分を他の絵師が上書きすることもあります。そうした上で、それら全部を真っ黒に塗りつぶすこともあります。描いた時点毎に写真に撮って記録に残すのです。それを時系列で表示すれば、絵師同士の対立が見れて、鑑賞する立場としては印象深いです。
4.ネズミの絵
バンクシーの作品は、一目で、社会風刺だな、と理解できますが、ネズミの絵は何を意味するのか、私にはわかりませんでした。
そこで、私は講演会で毛利先生に次の質問をしました。
問「バンクシーの作品には社会に宛てたメッセージがあります。東京で見つかったネズミの絵にはどのようなメッセージが込められているのでしょうか?」
毛利先生の回答の趣旨
「東京にあったネズミの絵は、ほぼバンクシーの作品だと言ってよろしいです。ネズミは害獣だという認識です。描かれたネズミは人間であるとみなされます。つまり、このネズミは社会において底辺にいるような人達です。犯罪者という意味ではなく、支配する立場から見て、社会の底辺で害をなす人という解釈です」(この文は、私が先生の発言を私なりに解釈したものであるので、先生の正確な発言ではありません)
私の解釈が正しいのであれば、「ネズミの絵」は一般庶民による公職への反抗であるのだから、都知事が喜ぶようなハナシではない、ということです。
ネズミは傘をさしていました。
傘に関して次の作品があります。
この傘の絵の作品のキャプションには、
「傘をさしている自分の地域だけ雨が降り、外では降っていない」
という趣旨の説明がありました。
つまり、恩恵を得るハズであるにも関わらず、不幸になってしまっている、という解釈ができます。
東京で描かれたネズミは傘をさしていましたね。
バンクシーが有名であることに有頂天になってしまっていて、東京都知事には作品の意図が伝わっていないようです。
そういう構図まで含めて、社会風刺になっているのです。
5.バンクシー展について
【会期】2024年11月1日(金)~12月26日(木)
【時間】10:00-17:00(入場は閉催時間の30分前まで)
【休館日】 月曜日(月曜日が祝日の場合は、翌平日が休館日)
【会場】東大阪市民美術センター 第1・2・3展示室
【主催】東大阪市民美術センター(指定管理者 東大阪花園活性化マネジメント共同体 HOS株式会社)
【協力】医療法人宝歯会グループ 財団法人梶原浩喜財団
【観覧料】500円、東大阪市内在住65歳以上の方(住所・生年月日記載があるものの提示が必要)、高校生以下、障がい者手帳等をお持ちの方(介助者1名を含む)は無料
【問い合わせ】東大阪市民美術センター
【公式HP】https://hos-higashiosaka-art.com/
※この事業は、「東大阪市第3次文化政策ビジョン:②文化施設の公共的役割の徹底(東大阪市文化振興条例第8条)」に基づき実施しています。
この展示会のキャッチフレーズ
「分離壁に、アート界に、そして社会に風穴を」
このフレーズはいいね!
とても、あの体育会系の東大阪市役所が背後にいるとは思えないね。
約50万人もの多様な市民が暮らしているにも関わらず、東大阪市は「ラグビーのまち」にさせられました。
ラグビーのような趣味娯楽を政策にすることは明らかに不当です。
私は絵師ではありませんので、絵ではなく、言語で意見を言います。
「ラグビーのまち」政策を廃止しよう!
「ラグビーのまち」政策に風穴を!
以上