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発達障害の女子中学生自殺事件 東大阪市

女子中学生を新人戦のメンバーから排除したことは教育者によるいじめです。
部活動の団体意識を高めることにより、そこに参加できない者の疎外感を増幅させています。
そこから生じる葛藤が自殺に結びついていると思います。
発達障害だけが自殺の原因ではありません。


2019年1月、東大阪市立の中学に通う、当時2年生の発達障害の女子生徒が自殺を図り、翌2月、死亡しました。
この件に関する「調査報告書」を、2021年10月15日、市教育委員会は公表しました。
そして、市教育委員会は、2022年3月定例会(3月18日)にて、本件に係る総括文書をとりまとめました。
これら文書は東大阪市役所のホームページでは見当たらないため次のサイトでダウンロードできるようにしました。

調査報告書は、「東大阪市いじめ問題専門委員会」が作成しました。
この名称の印象から「いじめ問題が有った」と感じるでしょう。
この委員会は、いじめの有無を調査することを本務とする委員会です。報告書を読んでみると、生徒どうしのいじめは無かったことが見えてきます。

東大阪市の教育方針に問題があるのです(私の思い)。その詳細は「(2)女子中学生は泣いた」をお読みください。

いじめの定義が重要になります。
教員が教育の一環として当然のこととして行われていても、不当に精神的な苦痛を与えているのであれば、それを「いじめ」に準ずるものと認定することはあり得るのではないでしょうか。

大人であれば、自殺の直接原因を推測することは困難です。
ですが、中学生という子どもは、単純に、直前に何があったのか、で自殺の直接の原因を知ることができます。下記の「(3)自殺直前の出来事」をお読みください。

本調査報告書は99ページに及ぶ大作ですので、多くの読者は、最後の「第6 問題点と提言」だけを読むことになるかもしれません。
しかしながら、その場合、問題の本質を見誤ります。

本報告書は、発達障害が主な原因である趣旨で取りまとめられています。そのため、教育機関においては、発達障害関係の施策を充実させれば良い、という趣旨の提言になっています。
そして、東大阪市が実施してきた教育方針に関しては、敢えて、言及を避けています。下記「(5)教員E(首席・■部顧問)の人物像」をお読みください。
教育方針のあり方は、市教委が自主的主体的に反省し評価を下しなさい、という思いから敢えて本報告書では言及しなかったのだろう、と私は推測します。

この報告書を受け、市教委は総括文書(2022年3月)をまとめました。発達障害関係の施策が不十分であったことは認め、これを改善する施策を打ち出すこととしています。
しかしながら、女子中学生を部活動から排除した教育方針については一切言及していません


1.報告書の法令根拠 - いじめ防止対策推進法

遺族と中学校との協議において、いじめの疑いが生じたことから、東大阪市教育委員会は、いじめ防止対策推進法(文部科学省平成25年法律第71号)第28条1項1号に該当すると判断し、当時の東大阪市いじめの防止等に関する条例第17条3項に基づき(2021年3月30日に条例改正があり、当時の第17条は現在は無い)、いじめ重大事態として、いじめ問題専門委員会による調査を実施することとなりました(報告書の1ページ。「1 本事案の発生と調査に至る経緯」)。

法による、措置の流れは次の図(2019年東京都板橋区作成)のとおりです。

2019年東京都板橋区作成

(引用元)
文教児童委員会の次第と資料 (令和元年第3回定例会) (2019年東京都板橋区)の「いじめの重大事態に係る調査経過について (PDF 316.3KB)」

https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/014/503/attach_99757_3.pdf

いじめの証拠が当初無くても、疑いがあれば「いじめの重大事態」に認定されます。
いじめが実際にあったのかどうか「いじめ問題専門委員会」で調査が行われます。遺族が自ら証拠集めをするのではなく、委員会(専門家)が第三者的立場から集めてくれるのです。

東大阪市教育委員会が今般公表した事例は、法第28条第1項を根拠とする調査(上の図の中央部分)です。
板橋区の事例(2019年9月時点)では、法第28条第1項を根拠とする調査は既に終了しており、第2回目の調査(法第30条第2項を根拠)の実施の検討を開始したものです。

(参考)報告書作成当時の「東大阪市いじめの防止等に関する条例 」第17条3項

3 専門委員会は、前項各号に定める事項のほか、教育委員会の諮問に応じて、法第28条第1項に規定する重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うことができる。

報告書作成当時の「東大阪市いじめの防止等に関する条例 」第17条3項

https://jorei.slis.doshisha.ac.jp/reiki/c2101-272272-60072443


2.報告書の活用のあり方

法第28条第2項(一部分)では次のとおり定めています。

調査を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供する

法第28条第2項(一部分)

子供の自殺起きたときの背景調査の指針(改訂版)」(2014年文部科学省)では、次のように示しています。

「4 詳細調査の実施(9)調査結果の報告と今後の自殺予防・再発防止のための報告書の活用」(21ページ)

○調査主体は,調査結果を学校の設置者に報告する
○調査の目標・目的に照らし,今後の自殺予防・再発防止に調査結果を役立てることが必要である
当該校の教職員,同地域の学校の教職員で,報告書を共有し,自殺予防への課題等,報告書の内容について共通理解を図る
○報告書について,例えば都道府県レベルで域内のものを収集・検証するなどし,より広範囲で,今後の自殺予防に役立てていく観点が重要
○(略)
○この報告の際,遺族が希望する場合には,その所見をまとめた文書の提供を受け,調査結果の報告に添えて地方公共団体の長等に送付する

4 詳細調査の実施(9)調査結果の報告と今後の自殺予防・再発防止のための報告書の活用(21ページ)

一般市民への公開を主張していません
にもかかわらず、本報告書は、市のホームページで公表されました。
市民とともに、自殺予防への共通理解を図ろうということです。

(参考)「学校の設置者」とは、東大阪市教育委員会のようです(不案内)。


3.公表のあり方の類似例

静岡大学の事例です。

所沢市の事例です。

自殺に至った加古川市の事例です。

類似例では「公表版」を作成したり、当事者間の具体的ないじめ行為・やり取りを非公開にしています。
これだと、誰かの都合の良い部分だけが切り取られてしまう懸念が生じます。

他の報告事例との比較で分かるように、東大阪市教育委員会が公表した報告書は、(黒塗りはあるものの)当事者間の具体的な事実関係が理解でき、筆者のような一般市民でも、本記事のように、(報告書に記載された意見とは異なる)問題提起ができるようになっています。
そういう意味で、東大阪市教育委員会の公表のあり方は前向きであり、画期的です。


4.報告書の作成方針

報告書の編集方針として、いじめ関連の全容解明のみならず、背景事情についての調査、特に、「子供の自殺起きたときの背景調査の指針(改訂版)」(2014年文部科学省) を考慮した調査をすることになっています(報告書1ページ。「2 諮問内容」)。

この方針に基づき、背景調査は丁寧に行われています。


5.公表時期が遅い

事件が起きたのが2019年1月です。ラグビーワールドカップ2019™が開催された年です。
本報告書が完成したのが、約20カ月後の2020年9月14日です。
本報告書を公開したのが、完成後約13カ月後の2021年10月15日です。
完成から公開までが長すぎます。なぜ1年以上もかかったのでしょうか?
このような疑問は誰しもが感じることなのですから、公表時にホームページに理由を書いておくべきです(筆者の思い)。
ただし、これは、市教委の落ち度おちどではありません。公表する義務はないのです。


6.市民に見解を公表しない

2021年10月15日の会見による、東大阪市教育委員会のメッセージ発出はNHKなど報道機関に対してのみ行われました。

NHKの2021年10月15日の報道

NHKの2021年10月15日の報道は次のとおりでした。このNHKの記事は既にNHKのホームページから削除されています。

東大阪市教育委員会は会見を開き、諸角裕久 教育次長は、「このような事案が起きてしまったことは残念だ。報告書の中で指摘を受けた課題や提言を真摯(しんし)に受けとめ、再発の防止に努める」と述べました。

NHKの2021年10月15日の報道


産経新聞の記事は、報告書の表面的な概要を説明したものです。報告書を深読みしておらず、結果的に、教育委員会にとって都合の良い報道になっています。


市のホームページでは「報告書を公表いたします」としか書かれておらず、報道機関向けに教育次長が発言した趣旨等は記載されていません。
市民にも、教育次長が発言した趣旨等と同等の内容を文書で公表すべきです。
次の図は、2021年10月15日付け東大阪市のホームページです。

2021年10月15日付け東大阪市のホームページ

報道機関には手厚い説明をしていますが、市民にはしません。


7.注目すべき箇所

報告書に問題として記載されてはいませんが、私(この記事の筆者)が気が付いた問題を記しておきます。


(1)原本を破棄

報告書13ページ「キ」について、報告書における主な論評は42ページ「(2)当該生徒への個別対応」に書かれてあります。
ただし、「キ」における、次の文言に対する論評はありません。

母より提供を受けたそれらの資料について、(中略)教員D(1学年時担任)は、紛失等防止のため、後日、提供を受けたそれらの資料(原本)をシュレッダーで破棄した。

報告書13ページ「キ」

発達障害の診断書の原本を破棄することは、あってはならないことです。
子どもは、今後、転校する可能性があり、進学・就職していくのですから、その転校・進学先等に、資料を提出する可能性があります。
なので、原本の破棄ではなく、コピーを学校で保管し、原本を本人に返却することが正しいです。これは、社会の一般的な事務処理の常識です。

また、書類の保管場所に困るのであれば、校長にその旨を訴えるべきです。


(2)女子中学生は泣いた

報告書14ページ「(3) 甲中学校2年生(平成30年度)」の「イ」

イ 同年(2018年)8月下旬、■部では、夏休みの宿題が提出できていなければ同年の新人戦の試合に出場できない(ユニフォームを受け取れない)ということを事前に連絡されていたところ、当該生徒が夏休みの宿題の一部が出来ていなかったことから、教員E(首席・■部顧問)が当該生徒を新人戦の登録メンバーから外し、ユニフォームを渡すことができなかったということがあった。当該生徒は、登録メンバー発表時に泣き、教員E(首席・■部顧問)は、当該生徒に対し、当該生徒の努力を認める旨の声を掛けてフォローをした。なお、この件については、教員E(首席・■部顧問)は、父母へは連絡していない。

報告書14ページ「(3) 甲中学校2年生(平成30年度)」の「イ」

「登録メンバー発表時」ということは、「みんなの前で」ということです。
精神的な苦痛は、相当なものがあります。

宿題を提出しなければ、新人戦に出場できない。
そのルールを、杓子定規しゃくしじょうぎに、教育の場で、平然と、子どもに適用している。
出場できない者(宿題を提出していない者)が誰なのかを、みんなの前で暴露し、新人戦という教育機会を閉ざす、置いてきぼりの教育方針
これが、教育といえるのでしょうか?

本来のインクルーシブ教育であれば、多様性を受け入れ、その個性を活かしつつ、仲間を互いに認め合います。

東大阪市役所では「ワンチーム」「オール東大阪」という言葉を随所ずいしょで使っています。同類を礼賛らいさんし、団結することが望ましいとして多用されています。

しかし、同類にならなければ、集団からは排除されるのです。
少数派を無視するからこそ「ワンチーム」などと言えるのです。

この中学校は、東大阪市役所の縮図しゅくずなのです。
なので、東大阪市教育委員会は、この中学校の教育方針などを死守するでしょう。
巧妙に問題点をすり替える危険があるので、注意して観察する必要があります。その一環が、「提言された内容(特別支援教育の充実)に関してのみ改善し、宿題をしない者は置いてきぼりの教育方針を継続する」ということです。

女子中学生は、泣いた!
誰でも、泣く!
私も、報告書を読んで、泣いた!


(3)自殺直前の出来事

報告書20ページ「チ」の直後が、23ページの「(4)本事案発生後」(自宅にて自死行為に及んだ)になります。
なので、「チ」に書かれてあることが、自殺の直接の原因であることは明らかです。

次の引用文は「チ」です。上記「(2)女子生徒が泣いた」に登場した「教員E(首席・■部顧問)」が登場します。「当該生徒」とは、自殺をした女子中学生のことです。読み易いように、適宜改行をいれています。

チ 同年(2019年)1月■日、教員E(首席・■部顧問)は、甲中学校内の会議が終了した後の午後4時40分頃、■部の■をしていた当該生徒を■空き教室に呼び出し、以前に■について尋ねた。
当該生徒は、生徒Pより借りたと説明したが、教員E(首席・■部顧問)が生徒Pが当該生徒に■を貸していないと話していたことを伝えると、■が生徒Rのものであることを認めた。
当該生徒は、生徒Rの■を所持していた理由について1月■日の■後に自宅で鞄を開けたところ、生徒Rの■が入っており、■部員らから■を盗んだと思われたくないことから返却できずにいたところ、生徒Pに渡したと説明した。
しかし、教員E(首席・■部顧問)が、■に生徒Rの名前が記載されており、生徒Pが■に気付くと思われることを指摘すると、当該生徒は■と説明した。
それに対して、教員E(首席・■部顧問)は、■にもかかわらず■が生徒Rのものであると知っていたことについて指摘し、「これ以上嘘をつくな」と大きな声で話したところ、当該生徒は、自ら■ことを認めた。当該生徒は、それらの話をしていた最中に泣き始めた。
 教員E(首席・■部顧問)は、当該生徒に対して、嘘をついてその場を逃れようとしたこと、間違ったことをした際に素直に謝れないこと、■を盗んだと思われたくないという理由ですぐに返却しなかったこと、他人の■を使用したことがあること、■生徒Pの机の上に■を置くなどして証拠を残さないようにしたりしたことについて指導をした。
教員E(首席・■部顧問)の指導方法に関して、特段、声を荒げたり、執拗に詰間したり、責め立てたりということはなく、教員E(首席・■部顧問)は、当該生徒に対して、嘘をついていたことなど間違ったことをしたことを認めたことはよかったと伝えた。
 その上で、当該生徒は、■を生徒Rに返さなかったことを反省しており、謝罪の意向を有していたことから、当該生徒が生徒Rに謝罪することとなった。
 同日午後5時00分頃、教員E(首席・■部顧問)は、当該生徒を指導していた教室に残したまま、一度職員室へ行き、教員J(特支Co・■部顧問)に対し、当該生徒が生徒Rの■を持っていたと認めたこと、及び、これから当該生徒から生徒Rに直接謝罪をさせる予定であることを報告した。
 そして、同日午後5時10分頃、教員E(首席・■部顧問)は、■部の■中であった生徒Rを呼び出し、■に関して、当該生徒が所持していたことを説明し、当該生徒が教員E(首席・■部顧問)立会いの下での謝罪をする機会を設けた。
当該生徒は、生徒Rに泣きながら謝罪した。
そして、教員E(首席・■部顧問)から、生徒Rに対して、当該生徒は間違った行為をしたが反省しており、二度と同じことをしないことや、これまで部活動を一緒に頑張ってきたようにこれからも一緒に頑張っていこうということを伝えた。
また、教員E(首席・■部顧問)は、事実に反する内容が伝わることなどを危惧し、当該生徒と生徒Rに対して、他の■部員には、明日、■部顧問自ら説明するのでそれまでは他の■部員に本日の話をしないよう伝えた。
もっとも、教員E(首席・■部顧問)は、この時、どのように■部員に伝えるかについて具体的な内容は想定していなかった。
 その後、当該生徒は、普段一緒に帰宅する■部員とともに帰宅した。
 教員E(首席・■部顧問)は、職員室に移動した後、教員J(特支Co・■顧問)と教員F(担任・■部顧問)に指導状況を報告した。
教員E(首席・■部顧問)は、教員J(特支Co・■部顧問)より母へ連絡を入れる際に当該生徒が正直に話をしたことから母に叱らないように伝えた方がよいとアドバイスを受けた。
そして、午後6時頃、教員E(首席・■部顧問)は、母へ電話にて、発覚した事実及び指導状況を報告した。
母は、教員E(首席・■部顧問)に新しい■を購入して謝罪したい旨を述べたが、教員E(首席・■部顧問)はそれは不要であると説明した。
その連絡において、教員E(首席・■部顧問)は、翌日に■部員の前で■の一件を報告することは説明せず、教員J(特支Co・■部顧問)からのアドバイスを受けた内容(当該生徒が正直に言えたので叱らないこと)を伝えることを失念した。
 また、教員E(首席・■部顧問)は、生徒Rの母にも電話したがつながらなかったことから、同日には報告はできなかった(翌日に報告した。)。
 そして、教員E(首席・■部顧問)は、教員J(特支Co・■部顧問)や教員F(担任・■部顧問)と翌日に■部員らにどのように■の一件を伝えるかについて協議し、当該生徒が間違って■を持ち帰ってしまいその後正直に話ができなかったと伝えることなどを確認した。
 母は、教員E(首席・■部顧問)からの電話の後、帰宅していた当該生徒と話をし、■すぐに返却しなかったことについて、注意した。
当該生徒は、その後、食事も入浴もせずに、自室にて泣き続け、母の問いかけにも反応はなかった。

報告書20ページ「チ」

以上が「チ」です、報告書では、この後、「(4) 本事案発生後」に続きます。

24ページ「ウ」には次の通り書かれています。

当該生徒は、遺書らしきメモを携帯電話に残しており、同メモには、甲中学校が自分には向いていなかったかもしれないこと、迷惑をかけないようにすること、全部忘れて一からやり直したいこと、及び死んでやりなおしたいことなどが記されていた。

報告書24ページ「ウ」

制服に着替えた後に自死に及んでいることから、学校への思いが強かったことがわかります。思いが強いにも関わらず、そこに自分の居場所が無い。本当につらいことです。


(4)報告書の信頼性

報告書の「第6 問題点と提言 1 はじめに」(62ページ)に次の文言があります。

 本調査においては、自死行為との直接的な因果関係をもつ具体的な行為や事象は特定できなかった。

報告書 第6 問題点と提言 1 はじめに (62ページ)

上記「(3)自殺直前の出来事」で述べたように、自死行為との直接的な因果関係をもつ具体的な行為や事象は特定できます。

にもかかわらず、「特定できなかった」と報告することはあり得ず、本報告書の信頼性は無いに等しいです。


(5)教員E(首席・■部顧問)の人物像

全ての教員が、「宿題を提出しない子供は新人戦から排除する」という教育方針どおりに振る舞うのでしょうか?
「新人戦という教育の場から排除することは不当だ」と考える教員もいらっしゃるのではないでしょうか?
そして、「その規則が不当だ」た考えることもできるのではないでしょうか?

しかし、教員E(首席・■部顧問)は、規則どおり運用し、新人戦という教育から、女子中学生を排除しました。

そして、父母との面談において、女子中学生の自死前日の指導のあり方について、次の発言をしています(報告書27ページ「テ」及び91ページ)。

もう1度同じような出来事が起こったとしても同じように指導する

報告書27ページ「テ」及び91ページ

この発言に対する報告書の評価として、91ページに次のように書いてあります。

甲中学校による十分な説明や検証がなされていない状況において、教員E(首席・■部顧問)よりそのような発言がなされたことから、遺族の甲中学校への不信感がさらに増大した。

報告書91ページ

遺族の不信感は増大したのでしょうけど、遺族の感じ方だけではなく、報告書では、発言への評価の行う必要があります。
教員Eの発言に対して「良くない」という暗黙の評価を報告書から読み取ることはできますが、報告書では、明言をする形での評価を避けていることは明らかです。
この報告書が、学校の教育方針への意見陳述を意図的に行っていないことがうかがえます。(ここ重要)


(6)真の原因の隠蔽いんぺい

本事例の中核は、何故、女子中学生は、他人の物を所持していたのか、という点です。そこに女子中学生の苦悩があることは明白です。

報告書は、この点に言及していません。
「第6 問題点と提言」を設けることによって、「発達障害が原因で、他人の物を許可なく所持した」との主張を遠回しに言っています
「発達障害に適した教育的処遇をしていれば自殺を防げた」との主張であると受け取れます。

この学校では、教員E(首席・■部顧問)を含めた部活動で、子どもたちに、団体圧力を加えたことが、推測できます。
ある条件を満たした子ども達は団体行動についていくことはできました。
本件の女子中学生は、何かの条件を満たしていなかったため、ある物品を所有しておらず、何かの条件を満たすため、他人の物品を所持してしまい、それを隠し続けた、という見方が、妥当だと思います。

他人の物品を所持していた原因は、発達障害だけであるとは考えられません

何らかの社会的な圧力があったのだろう、と推測できます。

これらの解明・公表がなされていません。

発達障害を有するため、学校で定める基準(例えば、宿題をする)を満たすことができなかったのだろうと思われます。
このため、部活動から排除されることになります。
それは、精神的苦痛になります。
団体からの排除を回避するため、生徒は、発達障害であることもあり、安易な方法(他人の物品を継続して所持することなど)を取らざるを得なかった、ということだろうと、推測します。

この場合の原因を、発達障害にあるとするのでしょうか。それとも、団体主義の教育方針にあるとするのでしょうか。

自殺の真の原因は、団体主義を是とする教育方針であり、その方針を硬直的に運用したことであると推測できます。

報告書は、自殺の原因を、子どもの側の発達障害であると認定しているからこそ、「第6 問題点と提言」を著せたのであり、硬直的に運用されている教育方針に対しては何も言及しないのです。

真のインクルーシブ教育を目指すのであれば、全ての子どもを対象とする教育方針を変更することが妥当です。

今後、「第6 問題点と提言」のとおり改革を行ったとしても、境界領域にいる子ども達などには団体圧力による精神的苦痛を与え続けるでしょう。


(7)境界領域の課題

発達障害とは定量的(程度で評価するもの)であって、定性的(有るか無いかの2値判断)ではありません。
無数の神経細胞で構成される脳の話なので、障害の有無を明確に線引きできるわけがありません。境界領域の者がいるのです。

医師は発達障害の「有るか無いかのどちらか」を診断しますが、それは、社会が求めているからです。

「第6 問題点と提言」は、「発達障害だ」と診断された子どもへの問題点と提言です。

本報告書の指摘どおり教育体制を整えたとしても、境界領域の子どもをどうするのかという課題は残ります。

なので、上記「(6)真の原因の隠蔽いんぺい」で記したように、団体主義を是とする教育方針を改めることが必要です。


(8)社会経済の観点からの検討

報告書29ページから31ページに書いてある件(生徒Tと生徒Rにかかる件)は、物品の紛失・所持に関する事柄です。

黒塗りされた報告書を読む限りでは、子どもたちが、好奇心で他人のモノを所持している印象を持ちます。それはそれで、子どもの心情ということで理解はできます。
ただし、好奇心が動機という解釈で本当に良いのでしょうか。

仮に、貧困が原因で学習用物品の調達が困難であったり、
または、仮に、価格の高い物品を購入しなければ教育を受けられないならば、社会の側の問題となります。

教育関係だけの問題ではなく、社会経済関係を含めた行政全般の問題としてとらえるべきかどうかという検討はできるようにすべきです。その検討を行えるようにするためにも、黒塗りにしているのは困ります。


8.残念な結末

女子中学生を新人戦のメンバーから排除したことは教育者によるいじめです。このような排除に教育的意義はありません。
部活動の団体意識を高めることにより、そこに参加できない者の疎外感を増幅させています。
そこから生じる葛藤が自殺に結びついていると思います。
発達障害だけが自殺の原因ではありません。
むしろ、発達障害が原因である、とすることは発達障害への誤った認識であるように思われます。

排除は教育方針として実施しています。なので、新人戦の件の他にも類似する事件はあると思われます。

これらがきちんと調査・報告されていなかったのは残念です。


9.法の問題点

解決の手段として期待されたのが「いじめ防止対策推進法」でした。

「いじめ」とは、他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為です(法第2条)。
「児童等」とは、学校に在籍する児童又は生徒をいいます(法第2条第3項)。
教育方針によって精神的苦痛を与えたとしても、それは法で定めるいじめではない、というとです。
「重大事態」とは、「いじめ」が原因によるもの(法第28条第1項)とされています。
いわゆる「再調査」(法第30条第2項)は「重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生の防止のため」行われます。

本事件においては、報告書で、法で定める「いじめ」は無いとされていることから、「重大事態」も発生していないこととなり、いわゆる「再調査」が行われることはありません。

いじめ防止対策推進法の限界(問題点)は次のとおりです。

(1)自殺の原因がいじめ・児童に限定されている
自殺そのものを防止しなければならないのですから、原因をいじめや「児童等」に限定する必要はありません。
本事例のような、学校の教育方針が原因で苦痛を与えられた場合には対応していません。
報告書のまとめ方はいじめの有無・あり方が中心になるため、いじめ以外の原因であった場合には、まとめ方が中途半端になります。

(2)調査を実施するまでの時間が長い
自殺の原因としていじめの疑いが生じた後に、重大事態に認定され、調査が実施されます。

(3)予算措置が手薄
旭川市では、いじめ問題専門委員会の「専門委員への報酬は条例で日給7700円と定められて」いるとのことです(下記のリンクを参照)。「それが弁護士等の専門家への報酬として低いことは認識している。」(旭川市教育委員会)


10.市議会での質疑応答

(1)令和3年(2021年)12月6日

令和3年11月第4回定例会 令和3年(2021年)12月6日(月) 鳴戸鉄哉(なると てつや)議員による個人質問

令和3年11月第4回定例会 令和3年(2021年)12月6日(月) 鳴戸鉄哉 議員による個人質問

鳴戸鉄哉議員
 次に、発達障害児に対する無理解について御質問します。
 今年10月14日、東大阪市教育委員会は、2019年1月に起こった市立中学2年生が自宅で自死行為に及び、翌2月に死亡した事案についての、いじめ問題専門委員会の報告書、2020年9月14日作成を公表しました。亡くなられた生徒に対して、心より御冥福をお祈りするとともに、御遺族にはお悔やみを申し上げます。報告書は、直接的な因果関係を持つ行為や事象は特定できなかったとしながらも、学校側の生徒への配慮などが不十分だったと指摘しています。また、専門委員会は教職員らが、いじめ防止対策推進法や発達障害を持つ生徒への指導法を学ぶ研修を行うよう求めています。土屋教育長は、配慮が欠けることなく、十分にできていたならば、違う結果があったのではないかとのコメントを出されています。この報告書を読ませていただいて、最初に疑問に思ったのは、この事案に対する責任は誰が取られたのだろうか。そしてそれぞれの教職員がこのようなことを二度と起こさないよう肝に銘じるだけでいいのかということであります。この事案について、教育委員会として、当時の学校長や主席などへの処分は行われたのでしょうか。処分が行われていたのなら、誰にどのような内容で行われたのか。また、行われていないのならば、なぜ処分に値しないのか、お答えください。
 この報告書を読んでいて、学校という組織の中で、教職員の中には、生徒たちに規律を守らせる、時間を守らせる、うそはつかせないという考えが前提にあり、その徹底が重んじられていることがよく分かりました。もちろん私もそれを否定する気はありません。ただ、報告書の中で母親が、発達障害の診断をした医師から助言された内容が記されていますが、処理速度の遅さや言語理解の苦手さに加えて、不注意さもあるため、学習やコミュニケーションの場でつまずきやすい特性があると記されています。そして、発達障害の生徒には、規律、コミュニケーションは非常に生きづらく感じることがあることを指摘されています。2005年に発達障害者支援法が施行され、2006年3月に学校教育法等が改正され、2007年4月から特別支援教育の本格実施が始まっています。もう14年前の話であります。教育長のコメントで、配慮が欠けることなくとありますが、14年もたって、子供たちの未来に関わる教育現場において、なぜこのような障害に対する無理解が存在するのか理解に苦しむところであります。報告書が指摘している、学校側の生徒への配慮などが不十分という事態がなぜ起こったのかという総括はされているのでしょうか。報告書では、当該の生徒を診断した医師の助言をすぐさま母親は学校に届けましたが、あろうことか、廊下での立ち話で終わり、挙げ句の果てに母親が渡した原本は養護教諭がコピーは取ったものの、シュレッダーで処理されています。例えばこれが生徒の喫煙問題であったなら、廊下での立ち話で終わるでしょうか。また、原本をシュレッダーにかけるでしょうか。学校現場において発達障害児への対応、配慮が必要な子供たちへの対応が後回しになっている証拠だと思うのですが、いかがですか、お答えください。
◎諸角 教育次長  いじめ重大事態調査報告書に係ります数点の御質問に答弁申し上げます。
 教育委員会としては、調査報告書における本事案の問題点や提言を真摯に受け止め、二度とこのような事案を起こしてはならないこととして、全力で再発防止に取り組んでまいります。今回の事案においての学校や教職員の責任の取扱い、とりわけ行政上の処分の取扱いに関しましては、法的な観点も含めて検討していく必要があると考えております。
 次に、発達障害児への対応につきましては、教育委員会といたしましても、当該校の対応が不十分であったと認識しております。特に、調査報告書にもある、保護者からの相談に対する組織的な対応、専門機関等との連携、スクールカウンセラーとの協働、具体的な支援プランの策定、発達障害への配慮、発達障害への理解を深める研修の実施などが不十分であったと考えております。当該校には、発達障害に関する理解や発達障害児等への対応に関する教職員研修を行うとともに、学校が作成している支援体制や対応等についてまとめた特別支援教育の手引の改正と、今後それが形骸化しない運用について指導、助言を行っております。また、今年度には、市全体としても、支援教育の理解を深めるため、東大阪市特別支援教育ガイドブックを作成し、学校の実態に照らし合わせ、課題の洗い出し、改善に活用できるよう、各学校園に周知しております。学校が作成する個別の指導計画につきましても、特別支援学級に在籍していなくても、保護者からクリニック等の診断や所見、手帳等をもって相談があった場合は、必ず作成する、その他、発達に関する相談があった場合においても、特別支援部会等において共有し、作成を前提とした協議を行うこととし、組織的な対応ができるよう全校に指示したところです。今後もこの事案を教訓とし、発達障害児等への支援の充実に関する取組を進めてまいります。
 以上でございます。
◆30番(鳴戸鉄哉議員) 2度目の質問でありますんで、自席から質問をさせていただきます。
 教育長のほうに尋ねたいんですけども、この、2019年1月に起こった、中学2年生の自死されたということでありますけども、お母さんが、発達障害ということで、お医者さんの助言というか診断の結果を学校に持っていったと。そのときに、処理速度の遅さや言語理解の苦手さに加えて、不注意さもあるため、学習やコミュニケーションの場でつまずきやすい特性があると、このようなお医者さんの意見ですね。ところが、これを持っていったときに、学校側は、廊下の立ち話で終わってる、いうのが、この報告書の中に記されてあるわけでありまして、いろんな経過があるんですけど、この、ほとんど黒の塗ったんで、あんまりよく分からないです。教員Eという方が、これ以上うそをつくなという大きな声を出してると、いうような、発達障害児に対する理解が本当にこの学校にあったんか、またこの教員にあったんかということが、大変この報告書を読んでても、不安になるんですけど、その点の教育長の御見解をお願いします。
◎土屋 教育長  今、鳴戸議員のほうから、この調査報告書の中で指摘を受けている事案のお話、ございました。私も、やはりこの調査報告書、もちろん学校からの報告もあったわけでございますけれども、ほんとに誠に遺憾な対応と言わざるを得ない。これはやはり教育の現場で、実際に子供たちと第一線で関わっている教員、これの、この教員という立場としての対応から、少し私も本当に怒りを抑えられないような、そういう話であったと思っております。このことについては深く私もおわび申し上げるとともに、今、諸角のほうから様々な答弁いたしておりますけれども、教員の支援を要する子供たちに対する理解、この辺りを、本当にきちんと一からやり直すと、この覚悟を持って、この問題を将来に向けて生かしていきたいと、このように思っております。
◆30番(鳴戸鉄哉議員) 今、教育長のほうからもお話ありましたけども、この質問の中でも処分の問題、書いております。何事も物事いうのは起承転結があると思うんですけども、この処分のことについては検討するというような御回答でありますけども、この問題が起きたんは2019年、もう2年前でありますんで、いまだにその処分という問題では曖昧な対応を取っておられると。またこの報告書の42ページには、支援を要する生徒に対する特別な配慮は、全ての生徒に対して公平、公正な対応をしたいという考えに反するという教師の発言があります。これは障害児に対する合理的配慮を否定してる、こういう文言もある。大変、この報告書を読んでおって、私は問題があるんではないか。この発達障害者支援法いうのは2005年に出来てるわけでありますから、もう15年前に出来てる。こういう法律の趣旨を、こういう学校現場の教師とか教師集団とかが理解されておらない。法律違反犯してるわけですわな。法律違反犯してるのに、何ら、2019年からの処罰の対象にならない。この辺はやっぱり今後考えていただきたいというふうに思います。
 まだ2分ありますけど、最後に、この報告書99ページあるんですけども、この報告書の中で書いておられるのが、ちょっと紹介したいんですけども、98ページにあるんですが、絵を描くことが大好きで、これからの人生に夢や希望を膨らませていた中学2年生が、14歳の誕生日を目前にして、なぜ死を選ぶに至ったのでしょうか、この問いは遺族だけでなく、関係者の全てが抱くものであり、自死に至るプロセスを解明しようとしてまいりました、その1年余りに及ぶ調書の結果をここに報告をしております、いうてこの99ページにまとめていただいてる。この冊子をやはり全教師が読んでいただきたい。ぜひ教育長、もう一遍答弁お願いします。
◎土屋 教育長  この事件については、私も本当に言葉にならない思いでございます。この事案につきましては、まだ御遺族の方と様々なお話をしておりますけれども、まだこの問題終わっていない、将来の東大阪の教育のために、これが少しでも役に立つといいますか、我々の先に、これに基づいたほんとにこういうことのない教育が築けるように全力で尽くしてまいりたいと思っております。

令和3年11月第4回定例会 会議録第3号 2021年12月6日(月)

(2)令和4年(2022年)3月10日

令和4年3月第1回定例会 令和4年(2022年)3月10日(木) 鳴戸鉄哉議員による個人質問

次に、いじめ問題と人権意識についてお尋ねいたします。
 日本国憲法では、平和主義、国民主権、基本的人権の尊重が3大原則としてうたわれています。基本的人権の尊重では97条で、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものと定められ、第13条で、全て国民は個人として尊重される、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とすると定められています。私はこの憲法でもうたわれている基本的人権の尊重について、職員の皆さんはどう思われて日々実践しているのかという視点から数点質問いたします。
 さきの第4回定例会において、2019年1月に起こった市立中学2年生が自宅で自死行為に及び、翌2月に死亡した事案についてのいじめ問題専門委員会の報告書を基に、私は、この事案に対する責任は誰が取られたのだろうか、そしてそれぞれの教職員がこのようなことを二度と起こさないよう肝に銘じるだけでいいのかということで、教育委員会として当時の学校長や主席などへの処分について質問いたしました。その本会議で教育委員会は、行政上の処分の取扱いについては、法的な観点も含め検討していく必要があると答弁されました。その結果はどうなったのでしょうか。
 今回のいじめ重大事態に関わった先生も生徒も、誰も、基本的人権は尊重しています、差別はしていませんと答えると思います。でも一人の女子生徒が生きづらさを感じ、自死行為に至ったのです。それは先生をはじめ、みんなが発達障害について理解していなかったからで終わるのでしょうか。問題は、なぜ理解できていなかったのかということではありませんか。生徒の基本的人権を尊重するのであれば、少なくとも母親が生徒の主治医に書いてもらった診断や、生徒への支援の在り方について知ったときから対応が変わるはずです。しかし、先生たちは生徒への対応を変えるどころか、ひどくなっていったのではないでしょうか。これでも生徒の基本的人権は尊重されていたのでしょうか。なぜ生徒に寄り添った対応ができなかったのか、それをしっかりと振り返ることが重要だと思います。発達障害の特性から、情報処理に時間がかかる生徒に、うそをつくなと、なぜ大きな声を出して怒ってしまったのか、その背景にどんな考えがあったのか、その考え方を改めていくこと、未来に向けて、今これまでの真実を示し、そこから目をそらさず、謝罪し、償い、賠償を行い、日々改善した態度を取っていくこと、それが責任を取るということであると私は考えています。教育委員会のお考えをお聞かせください。
 市長にお尋ねいたします。全ての人が幸福を感じることのできる社会の実現は、基礎自治体の使命とおっしゃっているのに、なぜ市政運営方針には、今述べました教育委員会における発達障害のある中学生の自死行為について、また、障害児者についての無理解について、一言もなかったのでしょうか。現代社会において生きていくことに苦しんでいる人がいます。人権、共生、協働のまちづくりにとって、ウィルチェアスポーツだけでなく、障害当事者に寄り添う障害施策の充実も重要だと思いますが、市長のお考えをお聞かせください。

令和4年3月第1回定例会 会議録第4号 2022年3月10日(木)

野田 市長  鳴戸議員の御質問にお答えします。
 障害施策の充実の重要性についての御質問でございますが、本市では障害の有無にかかわらず、全ての人が幸福を感じられる社会の実現を目指して、新たに策定した第4次障害者プランに基づき、施策の充実を図っています。しかし、障害者の人権が十分に守られず、まだまだ地域の中で生きづらさを感じている方が大勢いるということも忘れてはなりません。市民一人一人が発達障害をはじめ、様々な障害のある人に対する理解を深めるとともに、障害に関する差別や偏見のない、インクルーシブな社会の実現に向けて具体的に行動できるよう、共通理解の普及と啓発に努めてまいります。

令和4年3月第1回定例会 会議録第4号 2022年3月10日(木)

◎諸角 教育次長  学校教育部に係る数点の御質問に御答弁申し上げます。
 まず、いじめ重大事態に係る教職員の処分についてでございます。
 教職員の懲戒処分は法律に基づいた行政処分になることから、教育委員会といたしましては、弁護士や大阪府教育委員会に相談を重ねました。結果、本事象に関わる教職員の行動について、一部、重大とは言えない義務違反や配慮が足りなかった行動があったと判定しましたが、処分を要するまでの重大な義務違反ではないこと、教育的配慮不足をもって処分をすることはできないことから、最終的に教職員の処分は困難であると考えております。
 次に、いじめ重大事態調査報告書を受けてでございますが、議員御指摘のとおり、本件における当該生徒は、生きづらさを感じていたものと捉えております。調査報告書では、当該生徒への学校としての対応の総体が、自死行為に至る複合的な要因の一つであったと考えられるとまとめられており、教育委員会としてもこの内容に疑義はございません。教育委員会として、学校の実態を把握し、適切な指導をすることができていれば、学校が当該生徒の生きづらさにもっと寄り添うことができていれば、違う結果があったのではないかと考えると、ざんきに堪えません。公表からこの間、学校園に対して、全教職員の調査報告書の通読、その内容理解を深めるように指導してまいりました。そのほかにも様々な会議や研修の場において、日頃から特別支援教育の視点を持った生徒指導や、いじめ対応についての認識が深められるように指導を行っているところです。今後とも、本件を風化させることなく、全ての子供にとって安全で安心な学校づくり、深い子供理解と個に応じた適切な対応がなされるよう学校園への指導、支援を続け、再発防止に努めることで責任を全うしてまいります。

令和4年3月 市議会 第1回定例会 会議録第4号 2022年3月10日(木)


11.市教委の総括

東大阪市教育委員会 令和4年(2022年)3月定例会(3月18日 金曜日)
「議案第8号 平成31年に生起したいじめ重大事態の件
本市いじめ問題専門委員会が作成した調査報告書を受け、本市教育委員会とし て、そのいじめ重大事態の総括及び再発防止に向けた取組みについて決定するもの。

【諸角教育次長】 本市では、平成31年1月に、当時、市立中学2年生女子生徒が、自宅にて自死行為に及び、翌月に命を失うという事案が発生いたしました。
 教育委員会は、発生当初において学校から、部活動でのトラブルとその指導に関係する事案ではないかとの報告をうけていましたが、ご遺族との協議の中で、四十九日を過ぎた後に、いじめの可能性があるとの申し出もあり、学校での調査を行いました。その後、さらに第三者性を担保した原因究明の必要があるとの判断に至り、「当該生徒に対するいじめの有無」、「当該生徒に対する学校の指導方法」、「当該生徒が有する発達障害に関する学校の配慮状況」、「事案発生後の学校と教育委員会の対応」について、東大阪市いじめ問題専門委員会による調査を行うこととしました。およそ 1 年と3か月の調査の後、再発防止策を含めた調査報告書がまとめられました。教育委員会として、調査報告書の内容に疑義はなく、そのすべてを重く受け止めていることも含め、ご遺族にもご報告いたしました。そして、調査報告書を基に、学校と共に、ご遺族から意見をいただきつつ、保護者説明会、調査報告書の公表を経て現在に至っております。
 今回、改めて事務局として本資料を作成し、学校園に周知したいと考えておりますのは、本資料は、この事案を決して風化させることなく、子どもの未来に保護者とともに責任を持つものとして、二度と同じような事案をおこさせないという強い決意を示し、学校での指導、支援のあり方について謙虚に振り返り、学校として不十分であった点、教育委員会として不十分であった点を例示して、教職員の資質向上、学校体制の強化に努めるなど、再発防止を進めることを目的としております。なお、本資料の作成にあたりご遺族の協力もいただきましたので、その様子を担当より報告をさせていただきます。
【鳥居学校教育推進室参事】
 本資料作成にあたり、内容精査を行い、本年1月に、本資料作成の意図と、すべてを反映することは難しいものの、今後の実践にいかすため、ご遺族からご意見をいただきたい旨を説明して、原案をお渡ししています。
 ご遺族からは、内容について「謝罪の言葉が明記されていないなど、不十分な点があり納得しかねる」との意見をいただきました。また「なんのために意見をきくのか」などの意見もいただきました。
 しかし、本資料は、事案を風化させず再発防止に向けて、教育委員会としての見解を、市立学校園に発信する主旨であることを改めて説明させていただきました。そのうえで、ご意見いただいたことを重く受けとめ、理解した上で、学校園長に対しての指導の際にも、そのご意見を活かさせていただくことを約束して、原案の大きな変更はせずに、教育委員会の会議にて審議いただくことを伝えました。
 事務局といたしましては、ご遺族の思いと共に、本資料を示すことで、改めて再発防止に努めていきたいと考えておりますので、ご審議よろしくお願いいたします。

東大阪市教育委員会 令和4年(2022年)3月定例会(3月18日 金)

上記は、教育委員会における答弁です。
総括文書は、次のURLにて、PDFファイルとして保存してあります。

https://drive.google.com/drive/folders/1pZYTytHQRB7iCL71q0BG04qvGI0NErYK?usp=sharing


12.総括への質問と回答

上記総括文書について、私(この記事の著者)は、下記のとおり、2022年7月6日付けで市教委あて文書で意見・質問をしました。7月22日付けで文書で回答を頂きました。

(1)謝罪の言葉

・私の意見・質問

 令和4年3月定例会において、学校教育推進室参事は、遺族から内容について「謝罪の言葉が明記されていないなど、不十分な点があり納得しかねる」との意見をいただいた旨の答弁をしています。
 仮に謝罪の言葉を明記した場合であっても、それは総括文書の主旨から特段に逸脱するとは言えず、読者の立場から見て違和感はありません。
 総括文書に関わらず、謝罪する意思は無いということでしょうか。
 他の機会で謝罪の意思の表明をした、ということでしょうか。

私の意見・質問 (1)謝罪の言葉

・回答

他の機会において、教育委員会として至らなかった点について謝罪の意思を表明いたしました。

市教委からの回答 (1)謝罪の言葉


(2)校内の情報共有体制

・私の意見・質問

 総括文書の4ページの「調査報告書から読み取れる学校の対応等についての課題点」の「1年生時」の3について。
 個人情報の紛失を懸念するのは全ての学校においてです。
 このため、学校側だけの体制不備を指摘するだけに留まらず、教育委員会として紛失を防止する業務のあり方を提案し予算・物品等を各学校に配賦するなど、教育委員会側から学校を積極的に支援する必要があると思いますが、いかがお考えになりますか。

私の意見・質問 (2)校内の情報共有体制
総括文書の4ページの「1年生時」の3

・回答

これまでも情報共有体制や個人情報の取扱いについては、指導をしてまいりましたが、今後も本調査報告書等を参考に、情報共有や個人情報の取扱いについて、徹底するよう学校園に指導してまいります。

市教委からの回答 (2)校内の情報共有体制

・私の思い
情報の取扱い方は標準化が可能であると思われますので、技術で解決できる事項は誰か(ここでは市教委)が専門的に研究して普及させれば良いと思います。


(3)教育方針

・私の意見・質問

 総括文書の4ページの「調査報告書から読み取れる学校の対応等についての課題点」の「2年生時」の1について。
(1)教育方針への評価
 発達障害の有無に関わらず、宿題が出来ていなかった事を理由として生徒を新人戦の出場メンバーに入れず、新人戦という教育の機会を閉ざした学校の教育方針は不適切であると思いますが、いかがお考えになりますか。
(2)「課題点等」に記載しない理由
 この不適切な教育方針を「課題点等」に記載すべきだと思います。この教育方針を「課題点等」に記載しなかった理由を説明してください

私の意見・質問 (3)教育方針
総括文書の4ページの「2年生時」の1

・回答

総括文書には記載はいたしませんでしたが、ご意見いただいている件も含め、適切な指導について、今後も引き続き会議や研修の場で学校園に対して指導をしてまいります。

市教委からの回答 (3)教育方針

・私の思い
「課題点等」に記載しない理由、つまり、一般公開しない理由への回答がありません。
新人戦という教育の機会を閉ざした学校の教育方針への評価を公表しない、ということです。
何が「適切な指導」なのかわからないままです。
この「適切な指導」こそが、本件の中核であるにも関わらず。
教育委員会にとって不都合なことがらは公表しない、というように感じます。


(4)環境要因

・私の意見・質問

 総括文書の4ページの「調査報告書から読み取れる学校の対応等についての課題点」の「2年生時」の4について。
 「具体的な対応等」や「課題点等」では発達特性に原因を限定して記載していますが、当該生徒は他の生徒の物を持たざるを得ない心理に追い込まれた、という環境要因も考えられます。発達障害があれば誰しもが他の生徒の物を持ち続ける、ということはありえません。有島武郎による自身の体験に基づいた小説「一房の葡萄」にあるように、本人の特性ではなく、むしろ、置かれた環境が原因であることの方が大きいと思います。「他の生徒の物をもっていたが、言い出せなかった」ことは発達障害ではない生徒でも生じる事例だと思います。
 当該生徒は、部活動の中で他のメンバーとは異なる処遇を受けており、その仲間外れを逃れようとする心理(一体感を持ちたいとする心理)により、他の生徒の物を持っていたとも推測できます。
 新人戦から排除するなど仲間外れにされたという環境にも課題があると思いますが、いかがお考えになりますか。
 「他の生徒の物をもっていたが、言い出せなかった件」について環境要因という観点からも総括文書に記載すべきだと思いますが、いかがお考えになりますか。

私の意見・質問 (4)環境要因
総括文書の4ページの「2年生時」の4

・回答

総括文書には記載はいたしませんでしたが、推測されていることについては、本事案に限らず、生じる可能性があると考えられますので、今後も引き続き会議や研修の場で学校園に対して指導をしてまいります。

市教委からの回答 (4)環境要因

・私の思い
「推測」という控えめな表現をしましたが、(発達特性だけではなく)環境要因も自殺の原因であることは、常識的に考えて、ありうることです。


13.おわりに

報告書98ページに記された「おわりに」は次のとおりです。

絵を描くことが大好きで、これからの人生に夢や希望を膨らませていた中学2年生が、14歳の誕生日を目前にしてなぜ死を選ぶに至ったのでしょうか。この問いは遺族だけではなく、関係者のすべてが抱くものであり、私たち東大阪市いじめ問題専門委員会のメンバーは、その問いに応えるべく調査活動を進め、当該生徒自身及びその周辺で起こった事実を確認し、それらをつなぎ合わせながら、自死に至るプロセスを解明しようとしてまいりました。その1年余りに及ぶ調査の結果を、ご報告申し上げます。
当該生徒に関わりのある関係者、とりわけ学校や教育行政に身を置くものは、再発防止に向けた取組を進めなければなりません。そのためにも、本報告書が、これからを生き抜く多くの子どもたち、とりわけ、支援を要する子どもたちに対する、教職員の指導力の向上や関係機関等との連携による支援の充実、さらには学校における特別支援教育やいじめ問題に係る教育の改善に役立つことを念願してやみません。
最後に、衷心より当該生徒のご冥福をお祈りし、報告書を閉じることといたします。

報告書98ページ「おわりに」

(報告書深読み)
報告書14ページに「部」、「試合に出られない」及び「ユニフォーム」
という言葉があることから、所属していた部活は、団体で競技をする運動部であることが推測できます。

(余談)私は東大阪市民です。
私は、以前、大阪で、一般人を対象にした講習会に参加した時、「マンガで分かるADHD 『ブラックジャックによろしく 大人のADHD編』」を無料でもらってきました。講習会の主催者など忘れてしまいましたが、大阪では、ADHDへの理解を進めようという動きはあります。聴講者には看護師と思われる女性が多く参加しており、講師のADHDのご本人に、積極的な質疑が行われていました。

ブラックジャックによろしく 大人のADHD編


以上

#発達障害 #東大阪市 #部活動 #いじめ防止対策推進法