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今月のひと駅-2024年2月

上臼杵(日豊本線)

かみうすき駅 大分県臼杵市
大正6年開業

うすきいろの城下を堪能

 車窓から眺めていると、臼杵の市街はかなり長く感じる。線路が「し」の字を描いてまちの外縁を周回するからだ。熊崎から郊外の住宅地を進み、臼杵川を渡ると列車は金属音をきしませて急カーブを描く。「し」の底の部分に、半ば無理やりの感で片面だけのホームが延びる。ハートをあしらったユニークな駅名標は、次駅の話題にするとして、車両との隙間が大きいホームからは、植え込みも美しい坂の下に、開業以来の姿を忠実に残す老骨の駅舎を見下ろす。

 臼杵はかねてより山あいに鎮座する磨崖仏が有名だったが、平成に入ってから城下町の復元が進み、九州の代表的な醸造元のフンドーキン醤油や高級割烹のフグ料理も注目されて、まち並み観光が活性化した。アクセスには、表玄関の臼杵よりも、上臼杵の方が近い。そう考えると、和の情趣と威厳すら湛える駅舎が、城下町の大手に似つかわしい。

 駅前は雑然として勝手口の佇まいだが、龍源寺三重塔を目指して歩けば、やがてモノクロのコントラストが映えるまち並みに。「二王座歴史のみち」と並行する、八町大路の商店街では「うすきいろ」と書いた黄色い幟をアクセントに取り入れる。駅にもまちにも、武骨と愛嬌が織り交ざって、訪れるたびに新たな発見への期待が膨らむ。


上臼杵駅名標
臼杵・二王座歴史のみち
臼杵・八町大路

【2021(令和3)年取材】

(駅路VISION第32巻・日豊本線Ⅰより抜粋)



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