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2013年 バス停で

「バスがくる前に、誰かが私を連れ去っていってくれたらいいのに。」

私はバス停横の鉄柵に腰掛けながら
どうしようもない事を思っていた。
適当に選んだスカートとパンツを通して
鉄の冷たさがお尻に伝わってくる。


バスの予定時刻まではあと4分。
誰か勘違いして止まってくれたらいいのに
と、意味もなく麦藁帽子をぬいで
それを手に持ち、ぐぐーっと伸びをする。

21時半を過ぎた原宿明治通りは人の気配もまばら。
平日だからといって、原宿がこれじゃあ…と
少しさみしくもなる。
そんなに原宿を知ってる訳でもないくせに。

いつまでも残る「連れ去られたい願望」は、
いつの間にか刷り込まれたお姫様願望なのだろうか。
しかし私の妄想の中で思い描くのは
「連れ去られた先が、いかに素敵か」ではない。
「私が望んでいない不可抗力により、ここから消え去ること」である。
主体は今立っているこの場所・空間であって、
私が主体ではない。
常に焦点として観ているのはこの空間で、
その焦点から私は私を逃がしたいのである。

すごいスピードで車道の脇を抜けていった車が
風を起こして、私のスカートを巻き上げた。
今朝見た、太ももの細い綺麗な女の子のことを思い出して、冷えたお尻を鉄から離した。

バスが時間通りにやってくる。
私はバス停でバスを待っていたのだから、
おとなしくそれに乗った。
suicaで200円を押し当てると
10円不足でピーーッと鳴った。

***

昔のメモより
2013.6.10. 21:53


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