ほんとにあった○○|【役員貸付】の恐怖!金融機関に門前払いされ、倒産…破産…
今回は弊社のお客様ではなく、私が会社勤めをしていた頃の同僚の話です。
弊社を創業したのが7年前のことですが、同僚は私より1年早く退職し建築の会社を立ち上げました。
在職中、私は本社と関連子会社合わせて住宅系建築、不動産、飲食専門コンサルの3社の役員をしており、常にどれかの決算に関わっている状況でした。
そのおかげで複数の業種の決算について、経理的な側面からも経験を積ませてもらいました。
同僚も実績を上げ、当時は本社の課長の役職で退職しましたが、会社の決算に直接かかわることはないまま、知人の紹介で知り合った税理士と顧問契約をし、独立開業しました。
同僚が立ち上げた会社は、残念ながら4年目で倒産・破産となってしまいました。
今回は、その原因と思われる致命的なポイントが3つありました。
創業年度から黒字、そして拡大路線へ
同僚の会社は初年度から黒字になり、数名だったスタッフもすぐに募集、広告費も同様に増やし、拡大路線に舵をきりました。
建築業においてキャッシュフローはとても重要です。
契約が高額になれば、その分大がかりな工事になりやすく、受注から納品まで数か月以上かかることは少なくありません。
様々な仕入れや外注などの[先に支払いが発生]し、[数か月後に売掛金を回収]することは珍しくありません。
キャッシュポジションがないキャッシュフロー
同僚の会社はキャッシュポジション(現金として持っておく基準額)がないまま運営をいました。
これが致命的なポイントの一つ目です。
創業当初は問題がなかったのですが、拡大路線にすると現金化されるまでの時間差に資金繰りが厳しくなりました。
最寄りの信金へ融資相談をし、「1期分の決算書」の他、「試算表」「売掛金リスト」「売上見込み」「売上計画」などを提出し運転資金として融資を受けました。
この時はスムーズに希望額の融資を受けることができましたが、そもそもキャッシュポジションがないので、現金の余力がどの程度あるのか?それとも不足しているのか?誰も判断できない状況です。
現場から離れ自己投資、使った費用に領収書がない
その後、新たに雇用したスタッフも業務に慣れ、同僚は第一線から退き、次の会社のフェーズに向け社長としての勉強を積極的にしました。
東京や大阪のセミナーや勉強会、海外への合宿等に度々参加するようになりました。
仕事の延長なので会社の資金で移動費や宿泊費、接待費などをつかっていました。
カードを主に使っていたようですが、現金支払いの時に領収書を貰わないことがたまにあったそうです。
原価のズレ、クレーム多発、離職
2年ほど自己投資に没頭していると、現場では予想原価がズレる現場が多発、急な拡大で業務過多によるサービスの低下、それに伴いクレームも起きるが使える費用がない、という負の連鎖が起き始めました。
その状態が続くことで業務負担が増え、離職者が続き、それを補うために募集をしますが、不慣れな社員が現場を回ることで事態はさらに悪化していきました。
広告は先行投資
人の入れ替わりが激しいということはそれだけコストがかかります。
建築業の場合、年収+250万を超えることも多く、一人前になる前に退職すると250万 × やめた人数分を捨てることになります。
さらに研修中は指導する社員のパフォーマンスも落ちてしまいます。
否応なしに同僚は現場に戻ることになり、拡大当初とは違う資金繰りの悪化を体感します。
さらに増額した広告費が追い打ちをかけます。
広告は未来の売上を掴むために行うので、全額が先行投資となります。
しかし、創業期から大きな変化がない広告は徐々に反響率が下がっていき、出口が見えず、この頃から眠れない日々が続いていたそうです。
自分の給与は未払い、社員の給与を確保
すでに全ての支払いをする現金は会社の通帳にはなく、自分の給与を未払いにし、個人預金を切り崩すようになりました。
そして追加融資を申し込むことを決断します。
まず最初に、顧問税理士に相談しますが難色を示し、その詳しい説明は受けませんでした。
この時点で、顧問税理士と業務上のコミュニケーションがとれていなく、毎月の試算表や、毎年の決算に対しての意図や意思の共有がされていなかったと思われます。
これが致命的なポイントの二つ目です。
追加融資は実行されず
信金への追加融資を打診しますが、結論から言うと実行されることなく会社は倒産し、個人破産となりました。
金融機関はお金のプロなので、1度目の拡大に向けての資金繰りの悪化と、負の連鎖での資金繰りの悪化は、一目瞭然でした。
さらに広告に対しての反響率の低下も、拡大どころか維持をするだけでも以前よりコストがかかる状況でした。
そして問屋への支払い滞納により、業界内で一瞬の内にウワサが広がりました。
すると取引してくれる問屋もなくなり、
仕事をしてくれる外注もなくなり、
打つ手なしの状況になりました。
借りる前に、社長が会社にお金を返したら?
金融機関からの返答は「融資は不可」でしたが、その理由は【役員貸付】がおよそ300万になっていたことでした。
役員貸付は役員(社長)が会社から借金をしている状態になります。
金融機関の担当者から「会社にお金がないなら、社長が会社から借りた300万を返してから出直して」と門前払いだったそうです。
後輩は会社のお金に手を付けた記憶がなく、顧問税理士に詰め寄ったそうです。
原因は、東京や大阪、海外へ自己投資をしていた時の「領収書のない支払」を【役員貸付】として経理処理をしていた300万でした。
これが致命的なポイントの三つ目です。
すでに個人預金も切り崩していたため、資金移動はできませんでした。
領収書がなければ経費処理せず(プライベートの出費)にしていれば、預金を切り崩す前に損益計算書に反映されていたでしょう。
役員貸付は貸借対照表に記載され、拡大路線に注力していた同僚は、
【年商(売上)ばかり気にしていて】
貸借対照表を読むことはなかったそうです。
いずれも毎月の試算表、毎年の決算書について、顧問税理士とシッカリ意図と意思を確認し合えば経理処理、ついては決算書そのものが変わっていたでしょう。
なによりキャッシュポジションがないということは融資希望額も根拠がなかったことになります。
まとめ
人間的な相性より、経営観が共有できる税理士との出会いに恵まれると、経営者にとって、
【税理士は、最も身近なコンサルティングとして活躍】
してくれます。
開業時、個人事業主の場合は決算ではなく確定申告となります。
弊社もお客様には、自分で確定申告をするのは経験という意味で、人によってオススメしることも多々あります。
会計のすべてを知る必要はなく、自分の事業やお店に起きることだけを憶えればいいだけです。
しかし、将来的な展望が現状維持でなく展開や拡大などを想定している場合は、そのタイミングが来る前に、シッカリとコミュニケーションがとれる税理士と顧問契約をすることをお勧めします。
金融機関や調査会社に提出する書類が自己流経理ではなく、プロがつくった書類は強力な武器になります。
事業転換や拡大を行動する数年前から顧問税理士と一緒に決算書・確定申告書を積み重ねるが大切です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。