開業ノウハウ|【居抜き物件】事務所だった飲食店
弊社は札幌の会社です。
北海道に限らず寒冷地の冬に入り口のドアが開きにくいお店に入ったことは多いと思います。
今回も居抜き物件を契約されたお客様のケースを紹介します。
個性的な大家さん
20坪ほどのカフェバーだった物件を居抜きで契約、カフェで開業のお客様の依頼を受け下見に伺いました。
季節は冬に入ったばかり、譲渡条件の合意もほぼ済んでいて10日後に契約が確定していました。
仲介に入った不動産屋さんは、とても丁寧な仕事をしていました。
以前のカフェバーの営業状況から譲渡する物品の一つ一つ、個性的な元大家さんのことまで詳細にお客様と共有し契約へむけて進めていました。
元大家さんというのは息子さんに仕事は引き継ぎ、自身は隠居したというテイ。
しかし実際には管理会社はそっちのけで全面的に口を挟み、息子さんも一切歯向かうことはできず、元大家さんが今も大家さんです。
排気の位置に違和感
現場に下見に伺ったとき、採寸をしていると排気用の換気扇の位置が通常より低いことが気になりました。
建物の外から見ると、もともとは窓だった部分を活用して排気経路を確保しています。
建物には触らせたくない大家さん
現場はどう見てもカフェバーでしたが、外からみると無理やり飲食店にした感でした。
不動産屋さんを通じてカフェバー以前の使用状況を確認したところ、事務所で貸していた物件でした。
給湯室用に完備されていた給排水設備を厨房活用し、窓だった場所に排気ダクトを作ったことがわかりました。
当時、窓の場所以外のところに厨房を配置したかったようですが、壁に穴をあけて排気経路を作るのを元大家さんが許さなかったので厨房位置が強制的に決まったという経緯です。
閉まらないエントランスドア
その経緯を聞いてもう一度下見に行きます。
気温は3℃、検証したいことがあったので暖房設備を入れて1時間そのままにして室内の温度を温めました。
20℃ほどまで温度が上がったところで検証を開始します。
厨房の換気扇のスイッチを入れエントランスドアを開けます。
ドアクローザーという自動で閉まる部品がついていたので、ドアが閉まるのを待ちます。
あと2センチというところで外気がビュウビュウ入りドアが閉まりませんでした。
典型的な[吸気不足]という現象です。
空気は冷たい方から暖かい方に動きます。
暖かい室内が換気扇で強制的に排出されるため、その分冷たい風も強制的に入ります。
飲食店で店内が寒いというのは致命的なマイナスポイントです。
解決策は簡単で、吸気の経路を確保すれば症状は治まります。
しかし新しく壁に吸気用の穴をあける必要があります。
激高する大家さん
吸気用の穴の位置と大きさを[図面][写真に書き込み][構造上に問題がない説明]も付け加え、不動産屋さんを通じて元大家さんの許可を仰ぎました。
不動産屋さんも「クセのある方ですがここまでわかりやすければ、許可でると思います」といってくれましたが、実際には激高。
危うく弊社はまだ何もしていないのに出禁になるくらい怒らせました。
ただ単に壁に穴をあけることが許せなく、吸気の必要性は全否定でした。
吸気の必要性を体験してもらう
不動産屋さんも困ったようなので、弊社から依頼をして関係者全員を集めてもらいました。
元大家さん、お客様、不動産屋さん、弊社、管理会社は大家さんがいるならと不参加の4人です。
名刺交換する間もなく、元大家さんは私たちへの不信感を語り始めました。
一通り伺い、換気扇のスイッチをいれエントランスドアを開けました。
スキマ風を実際みてもらいましたが、元大家さんはドアクローザーの力が足りないという理論になります。
実際に力で締めようとすると、かなりの力が必要なのを体験してもらい、その力が加わると子供が手を挟むと大変なことになると説明しました。
そのあとエントランスドアから離れたホールにある小窓をほんの少しだけあけるとドアが閉まるのをみてもらい、何度か同じことを繰り返しました。
許可をその場でもらい、そのあと建物の他の相談を何個も受けることになりました。
結果的に壁に大きくない穴を開け、吸気経路を確保し真冬のスキマ風を防ぐことができました。
居抜きでも物件のクセは様々
今回のケースは、居抜き譲渡をする店舗の情報だけでは問題が解決できなかった話です。
いつくつもの事業やお店を経て、今の姿になっている場合があります。
積み重なった歴史が、時にはクセとなりお客様の負担になることもあります。
弊社が創業間もない頃の話です。
狸小路とススキノの中間にあたる、まさに一等地で元は美容室の物件で10年近く空きテナントが続いている美容室かアパレルのみが対象だった場所の話です。
当時、飲食店が初めてOKとなった途端に10数社の申し込みが殺到して入札のような状況になりました。
内装業者も同じだけ、みな図面をかいてプレゼンします。
ライバルの多くは札幌では誰もが知る名店や複数店を経営するような飲食業界の名だたる方達です。
弊社のお客様はこれから開業をする方、他のライバルに比べると不利な立場でした。
お客様と打ち合わせを重ね、図面やパースを提出します。
ただ、弊社だけ元の店舗が美容室ではなく理容室だったはずだから配管経路、とくに排水経路は気をつけないといけないことを付け加えてビル側へ提言しました。
結果、指定の仲介不動産屋さんが勘違いし美容室といっていただけで、実際は読みがあたり理容室でした。
それが大家さんと管理会社さんにとって好印象だったようで、お客様のプレゼンで無事に契約、独立開業されました。
いまや名店といわれる複数店舗を展開することとなる最初の店舗です。
建物の状況を正確に把握し、望ましい形のすることは事業にいい影響を出すだけでなく、建物の所有者や管理をする方にとっても意味のあることです。
まだ悩んでいる段階、なんとなく気になる程度でも、弊社は下見同行を何回でもします。
それが結果的に自分たちのいい仕事に繋がるからです。
もし、そんなタイミングになりましたらいつでも気軽にお声がけください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。