父が異能力者になった話 その2
その後、違う病院でもあんな先生だったらどうしよう・・・という若干の恐れがあったのだがそんなことは全然なく、やっぱりまた最初から検査をやらなければいけないそうだけど、そこんとこも異議を唱えたらちゃんと説明もしてくれたので納得できた。
そんな頃、前の病院の領収書をみてびっくり!!
総額30万ーーーー!???(゚д゚)
え!?あ・・・いや・・・でも検査とかやりまくったし入院期間も結構長かったし・・・
それくらいはする・・・・・か??
・・・・でも、父の入院手続きをした時受付の女の人にむちゃむちゃ勧められた「医療費限度額」の項目がずっと頭に引っかかっていた。そしていろいろ調べてみましたら父の年収でいくと医療費限度額は絶対そんなにいかないことが発覚!
それがなんでこんな30万も請求されてんのか・・・・なんとあの受付の女の人が勧めてたのは最高年収の限度額だった!(年収1000万なんてねーよ!)
あ、あわわわ・・・・ヾ(゚д゚; )
どーしよこれ・・・・これ今からでも変更できんの?ちょっとやばくね???
慌てふためいて市役所に聞きに行ったら領収書を発行された後でも変更は可能。
ただ支払った後では差額分の金額は半年くらい経ってから返還される・・・・。
そんな半年もかかるのか・・・・なんとかなりませんかね?
役所の人に聞いたらうーん。と首をひねり「今医療費限度額の紙を発行するので試しにそれと領収書を持って病院に行ってみてください。事情を説明したらひょっとしたら変更した金額で領収書を新しく作ってくれるかも・・・・」
役所の人にそう言われて急いで医療費限度額の紙を発行してもらい前に入院してた病院へ
GO!
そして無事に正しい金額の領収書を発行してもらったのだが、
正直言って肝が冷えた・・・・
皆!入院手続きを代理の者が手続きをするときは必ず入院する人の年収を聞くんだぞ!
さもなきゃとんでもない請求が来るぞ!
自分はこれを身をもって感じたぞ・・・・・
話は逸れたけど、それから何回か父の付き添いでおにぎりとドクダミ茶を持って病院へ通う日々が続いた・・・・・。
そして朝、また検査をしに病院へ行くと父の歩きがどうも鈍い・・・
大丈夫か?と聞いてもいつも大丈夫というのでほっといてそのまま待合室で名前が呼ばれるまで待つ。
「○○(父の名前)さーん、お熱はかってください-」
看護婦に呼ばれて熱を測ると、体温計が38,6度という数字をたたき出している・・・・
38.6・・・・・38,6・・・・・
はいい~~!???(゚∀゚)
さんじゅうはちてんろく~~~!???
え?なんで普通に歩いてるの?自分インフルエンザでそのくらいの熱上がったときは寒気と節々の痛みでトイレ行くにも壁を這って行ってたぞ。
心の中で芸能人のやす子ばりの声をあげて急いで看護婦から車いすを借りてそれからは
車椅子の移動に・・・・そして検査の検査は一週間後にしかわからないのでまた家に帰った。
途中、会計をする為にフラフラに車いすから立ち上がって受付の前で料金を払う姿を遠くから
眺めて
(小さくなっちまったなあ~~~・・・・)
自分が小さい頃はもっと大きく見えたのに、その時は背中がずいぶんと、
こんまりとして見えた・・
この頃は毎日38度以上の熱は出て息はゼーゼーしてるわ頭はまわってないわで、
このまま死んじゃっても不思議ではない状態で、
それでも何の病気かもわからないので有効な治療法がなく、だんだんと弱っていくのをただ眺めるしかなかった。(ただ、こんなにひどい状態でも本人は「全く大丈夫だ!」としか言わない)
これ・・・・検査結果がわかる一週間後までもたないんじゃないか?
家族みんなそんな不安がよぎる中で、なんとか検査結果の日まで持ちこたえ、
父と家族も一緒に病院へ・・・。
骨髄検査もやったしMRI、MRI、PET、その他にもやれるもんはすべてやって検査結果に挑んでる。
今度こそ、これでもう病名がなんなのかはっきりするだろう・・・・・・
皆誰もがそう希望を持って先生の話を聞いていた。
ーーーーーーーーー結果、
ここまでやってもわからなかった。。。
医者もただ沈黙するばかりで、どんどん症状が悪化していく父・・・・
そんなことってあるのだろうか・・・・・あんだけ検査しまくってそれでも病名が
わからないとは・・・・・・
ここまで来るまであらゆる可能性のある病名を言われた。
白血病・・多発性骨髄炎、骨髄腫、てふろー症候群、せいじんすちる病・・・・
(星人すちる病?)
聞き慣れない病名ばかりいわれてなんだかよくわからない。
(父はとうとう異星人になってしまったのか・・・・
もう人間じゃないのか?ということは一体何になるのだ?今は何かに変身する最中なのか?
変身が終わったら何になってしまうのだろうか・・・・蛾??)
朝起きたら蛾になってしまったのを思い浮かべながら深い絶望感を覚え
その他にも色々と言われたが、ようするに決定的なものが何一つ見つからない、とのことだった。
そして生きてるのが不思議なくらいな数値の貧血をたたき出していたのでそのまま入院する運びに・・・
その後も続く検査検査の毎日・・・・
膠原科、血液内科、脳外科、皮膚科、その他諸々・・・・父の主治医はそれぞれの科を合わせると総勢6人の大所帯の主治医を抱え、病院の中で一番の主治医の量を抱えるVIP人間と化していた・・・
何度も何度も医者から説明のために呼び出され、こーじゃないかあーじゃないかといろいろな病名を告げられ、本人も多分そうだろうとは思うけど、家族自体ももう「白血病でもなんでもいいから頼むから病名を診断してくれ!」と心の中で思い、無情に月日は流れるばかりでどんどん疲弊していった・・・・
ここまで来るともう病名不明のままで終わるんじゃないか・・・あと、お金の不安もある。
医療限度額と保険に入ってるとはいえ、現状のままでずっといくとなったら一体どうなってしまうのだろう・・・・・
医者も治療方針がないままこのままずっと入院し続けるのは後から次々に入院を希望する患者さんのことを考えると困難な状態もあり、このまま退院して自宅療養で悪くなったらまた点滴を打つ。というのも視野に入れておいたほうがいいという提案もされ、
いよいよ本当にそれが現実になりかけた頃、
またもや主治医の先生に呼び出される。
ああ・・・また意味わからん病名を言われて結局これといった進展はないのだろうな、
と半端諦めの面持ちで家族で病院をあとにする。
ーーーー皆さん、病名がわかりました。
医者からの第一声がそれだった。
それで・・・・病名はなんて?
固唾をのんで医者に聞くと、
病名は「ベクサス症候群」です。
・・・・・・・・・べくさす?
べくさす・・・べくさす・・・・ペガサスじゃなくて???
多分、これを読んでる人もおそらく初めて聞く病名だろうからネットで上がってた説明をここにあげとく。
ベクサス症候群とは・・・・
2020年に米国で発見された比較的新しい後天性自己炎症性疾患。 骨髄造血幹細胞のUBA1というE1ユビキチン活性化酵素に機能喪失型変異が生じ,さらにクローン造血が起きて発症します。症状は多彩ですが,VEXAS症候群を疑う患者像には炎症高値,全身皮疹,肺浸潤,軟骨炎,大球性貧血などを認めることが多いです。
ネットであがってたやつをただ貼り付けただけだからアレだけど、要は遺伝子の突然変異で起きる病気。
女性の染色体はXX染色体で、男性の染色体はXY染色体。
ベクサス症候群はこのXとYの二つの染色体の内「X」の染色体に異常が起きて発症する。
女性の場合はXの染色体を二個もっているので一つのX染色体が異常を起こしても、
もう一つのX染色体が補ってくれるけれど、男性はX染色体を一個しか持っていないため異常を発症しやすい。
よってこの病気は女性よりも男性の方が発症率は高いらしい・・・
(とはいっても女性も発症する確率はゼロじゃない)
そして日本では全国でこの病気に罹患していると思われる割合は300~500人ほどで、今現在この病気だと認定されている患者の人数はもっと少なく、200人ほどしかいないそうだ・・・・。
全国で200人て・・・・・
一億人いる中でのたったの200人て・・・・・・・・・それって、
異能力者になって、
チート級の能力を手に入れられる人間くらいの確率じゃん!(゚д゚)
すげーな・・・・ウチの父って異能力者の持ち主だったんだ・・・・・
なぜその確率をこんなところではなく、20年以上も買い続けている宝くじに使わなかったのか・・・・
でもこれでやっと病名がはっきりした。
病名がわかったことで明確な治療方針も固まり、
薄々気づいているとはおもうけど、ベクサス症候群もりっぱな指定難病なので医者の勧めるままにすぐさま国の指定難病申請の手続きに移った。
最中、今までずっと何の病気かわからず重々しい説明を受けてたけど病気がわかってちょっと心に余裕が出来て、医者に
「いやあ~~、でも本人は特に辛いとか何も言わないし全然辛そうじゃないし、
治療なんかしないでこのまま退院してもいんじゃないですか?」て軽く言ったら
「そんなわけないじゃないですか」と医者に即答される。
「○○さん(父の名前)は本当によく頑張ってらっしゃる。普通なら辛いとかもう検査はいいとか諦めてもいいくらいな状態だったと思います。それでも一言も弱音も吐かずここまで頑張ったのは本当に偉いことですよ」
「・・・・あ~~~~・・・・そう・・・なんですか・・・」
その後も父に向けて我慢強いだのよく頑張っただの、早く良くなってまた元気な体になって退院してくださいね。だの、やたら労いの言葉をかけている医者。
そして指定難病など諸々の手続きを終え、父だけが看護婦に囲まれてどこか痛くないかだの、ゆっくり歩いてて大丈夫ですからね、だの、○○(父の名前)さんは本当に頑張り屋だ!と看護婦と医者に最大限にチヤホヤされて病室に戻っていった・・・・
「あれ、退院しないでさ・・・ずっと入院してたほうが本人的にいんじゃね?」
そんな父の後ろ姿をみてボソリと呟く。
「・・・まあ家に帰ってもまたないがしろにされるだけだし、そうかもね・・・・」
遠くに消えていく姿をみて家族全員がそう思って眺めていた・・・・
それから一週間後・・・・・
あんなに死ぬ寸前のような状態と顔色だったのに、それがまるで嘘みたいに
劇的な回復を果たした。
指定難病の診断も下りたので今までかかった費用に対して国から助成金が降りるそうだ。
でも指定難病の許可が下りるのは申請してすぐではなく2~3ヶ月後・・・・
結構長いのね。。
それから更に一週間後、退院することになった。
・・・・なんだかわかるまでは目的地のない砂漠をずっと彷徨っているような気分でいたけれど、
わかってからの後はものすごく速い。
そして、10日くらい前に無事に退院して今目の前でテレビを見ながらざるそばを食っている・・・。
「そいやあ、入院してる間どうだったん?」
「・・・・ん・・普通」
「いやさ、友達とかできたん?」
「いんや」
「へえ・・・他には?なんかこう・・・変わったこととかなかったん?」
「ーーーー別にない。普通」
「・・・・・・・・・・・・普通・・・」
ーーーーーー父にとっては最初から最後まで
「普通」だったらしい。。