自分のままでいることは、怖い。だから、花の力を借りる。
手の中の一輪の花。
この花はどんな表情を持っているのだろう、
どんな姿を見せてくれるのだろう、
どんな思いを抱いて咲いているのだろう。
そんなふうに問いかけながら、
花を見つめる。
わずかな角度、
わずかな向き、
わずかな長短の違いで、
花は驚くほど豊かな顔を見せてくれる。
一枚一枚の花弁の
かたち、色の濃淡、陰影、重なり具合、、、
同じ枝に咲く花でさえ、一つ一つ違う。
見る方向で様々に表情が変わるのは、
花が歪みのない真円の形をしていないから。
そこに「欠け」が存在しなければ、
どこから見ても、どちらを向けても同じ。
「欠け」や「違い」があるらこそ、
生きた美の調和がそこに生みだされる。
その「欠け」や「違い」の間に、
空気が流れ出し、時が動き出す。
一瞬一瞬、変わりゆく美が生まれる。
花は、自分のままで美しい。
命あるものはみな、自分のままで美しい。
私たち人間も
自分のままでいたいけれど、
欠けたままの自分でいることは、怖い。
周りと異質な自分であることも、怖い。
だから、怖れぬ花の力を借りる。
花も、あなたも、私も。
自分のままだから、美しい。