『AND ON Open Innovation Garage 2022』の第3回目「スタートアップ向けファイナンス勉強会」をオンライン開催しました!
こんにちは! AND ON運営事務局です。
2022年12月8日(木)に、『AND ON Open Innovation Garage 2022 ♯3』として、オンラインの「スタートアップ向けファイナンス勉強会」が開催されました。前回に引き続いてテーマは“ファイナンス”です。
今回のゲストは、AND ON SHINAGAWA会員でもあるGemstone税理士法人で顧問を務める石割 由紀人(いしわり ゆきと)氏。Gemstone税理士法人では、2021年度に8社、2022年度に4社のIPOに関わっており、石割氏は『資本政策立案マニュアル』(中央経済社)という著書も執筆しています。
ファイナンスの専門家である石割氏によって、ベンチャーキャピタルやファンドの目線とは違った角度から、スタートアップのためのファイナンスについて語って頂きました。
資本政策はEXITを常に意識する
そもそも資本政策とは、企業が、いつ、誰に、いくらで、どのような方法で株式の異動、増資などをしていくかを立案することです。一度実行するとやり直しがきかないことがあるため、事前準備が大事になってきます。
資本政策の目的は主に以下の6つになります。
・資金調達
・安定株主対策
・創業者の利潤確保
・従業員や役員へのインセンティブ付与
・株式上場基準の充足
・事業継承対策
ベンチャーキャピタルなどから資金調達をするのが一般的ですが、この時に重要になるのはEXIT(投資の出口)です。EXITは、投資価値を実現化することであり、具体的には株式公開(IPO)とM&Aによる事業売却(BUYOUT)になります。
石割「例えば、ベンチャーキャピタルから投資を受けた後に、大きな成長することなく、EXITが見えなくなる会社があります。このような会社は“リビングデッド(ゾンビという意味)”と呼ばれ、その場合、ベンチャーキャピタルは経営陣に株式買い取りを要求することもあります」
つまり、ベンチャーキャピタルから資金調達をするということは、EXITをコミットさせるという意味になります。
資本政策を代表する6つの手法
資本政策の実現するための具体的な手法は以下の6つになります。
1.増資(普通株式or種類株式“優先株式”)
2.現物出資(役員からの借入金、未払金)DES
3.ストックオプション(税制適格、有償、信託、J-KISS)
4.株式分割
5.株式異動(低額譲渡、高額譲渡、自己株式、みなし配当)
6.資産管理会社(受取配当金益金不算入)
資本政策を行うには、様々な制度やルールの理解が必要であり、専門性が高い分野になります。
例えば、ストップオプションの項目では、用語の基礎知識から始まり、具体的な種類、数字の捉え方、活用した際のトラブル事例やリスクの存在まで、1つ1つを石割氏は丁寧に解説してくれました。
増資額を左右するエクイティストーリー
制度の細かいルールを正確に理解することは必要ですが、スタートアップの代表者は事前にしっかりと用意しておくべきものがあります。それがエクイティストーリー(EXITに至るまでの成長戦略)です。
先ほどご説明したように、スタートアップの資本政策はEXITをゴールにしているため、出口時の時価総額がポイントです。そのため、増資株価が高いかどうかの判断は、出口の推定時価総額によって変わってきます。
石割「例えば、上場時に時価総額1000億円が想定されるスタートアップの場合、シリーズA(※投資ラウンドの1つの段階のことで、ビジネスを開始した段階)での時価総額が10億円でも安いかもしれません。逆に上場時、時価総額50億円を狙っているスタートアップの場合、シリーズAで時価総額5億円では高いと思われる可能性があります」
現在の時価総額と将来の推定時価総額の懸け橋となるのが、エクイティストーリーです。
石割「エクイティストーリーに裏付けがないものは、魂がなく、信用に足らないものとされます。人々の記憶に残るものは、スプレッドシードではなく、ストーリーの方である、と言われています。それくらい重要なものです!」
例えば、スマホアプリで『将棋ウォーズ』などを作成した『HEROZ』は、IPO時点での収益貢献の中心はほぼゲーム事業でした。ゲーム会社の時価総額を調べると、競業企業と比べても10倍程度の成長余白しかありません。
しかし、ゲームサービスにはAIテクノロジーが使われているため、AIテクノロジー企業と比べてみたら、時価総額が100倍以上の企業が多数あります。成長の余白があるということは、投資的魅力があるということです。
このように、着眼点を変えることで、資本政策を大きく前進させることができるようです。
勉強会を終えて
1時間以内の勉強会でしたが、“リアル”な情報が多く、スタートアップの方にはとてもためになる時間だったのではないでしょうか。
AND ON SHINAGAWAでは、今後もスタートアップ向けに事業相談会や勉強会、交流イベントなどを開催していく予定です。ぜひ、ご参加をお待ちしております!