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身軽になる。
冷蔵庫を捨てる前に、まずはトースターを捨てた。
それは無印良品の製品で、ずいぶんと年季の入ったものだったが、問題なくまだまだ使える状態であった。それでも「もう使うことはないな」と、粗大ゴミとして回収をお願いした。
冷蔵庫の上に置いていたトースターが無くなっただけで、視界がずいぶんと広くなったように感じる。
そう、生活感が薄まったのだ。生活感というのは、それ自体に重みがある。その重みが安心感を与え、時には人生の重荷になる。
子供の頃、4.5畳の部屋に憧れていた。そこには小さな机と椅子、チェストとベッドだけがある。音楽が生活の一部なので、ステレオはチェストの上に置こう。小さなクローゼットには、本当に気に入った服だけが収まっている。そんなスタイルを手に入れたかった。実際は変形の個室で過ごしていたが。
実家を出て、最初に住んだ部屋はよくある1K6畳タイプだった。ベッドが最初から備え付けられいて、自分で買ったのは当時流行っていたアジアンな棚、ブラウンのダイニングテーブルに無印の棚とラタン椅子。最小限の本と服と食器で十分に満足し、日々を満喫していた。
モノが増えてくると、その部屋のことを思い出す。自分はまたいつでもあのときに戻れるのだ。身軽だった自分に。
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