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藤井風HEATツアーat大阪城ホール2021.10.17(2日目)

この記事はライブ当日の記憶を元に書いています。セットリスト(演奏曲順)や内容など実際の公演とは異なる点があります。ご了承ください。


まだ誰の姿もないステージ。藤井風のカバーするLizzo「Good As Hell」が流れ出すと、どこからともなく手拍子が始まった。高まる期待。

「風よ」

流れるようなイントロに乗って、サックスの音色と共に藤井風が現れた。サックスはお姉さんが中学時代に吹奏楽部で吹いていたそうだが、手ほどきを受けたのだろうか。フレーズ始まりのポルタメントや中間部の膨らませ方が絶妙だ。ピアノと同様に歌心のあるフレージング。歌謡ショーかと思うようなオープニングだった。

ゆったりとしたカーキ色のセットアップにインナーは白いTシャツ。無精ひげ風のリラックスした雰囲気だ。ハイブランドの衣装でも、まさに”こなれた”感じに着こなしてしまうのは、スタイルに恵まれた藤井風ならではだろう。

「調子乗っちゃって」

スタンドマイクで体をくねらせながら歌う。サックス演奏の直後で声帯が温まっていなかったのか、まだ声のノリがピークに達していない感じ。

「優しさ」

ピアノ(いつもライブ使用しているYAMAHAのハイブリッドピアノだと思われる)に座り、弾き語り。音域的に無理のない曲なので発声が伸びやかになってくる。

MCでは「元気やな~ほんまに」と和ませた。会場の座席を色々歩き回ったらしい。「(シート位置が)遠い人もいるけれど心の距離は変わらんので」。曲紹介の時、アニメのような高い声色を使って「きらりっ!」と言ったのがお茶目だった。

「きらり」

若い男性ダンサーチームを従え、隊列を組みダンスを披露。間奏では「大阪~大阪~好っきゃねん、大阪~」と入れていた。

「キリがないから」

ロボット衣装でHIROMU氏が登場し、二人が呼応するようなダンス。武道館ライブの時のような照明で近未来感を演出。

「へでもねーよ」

ダンサーたちと共に床を這うような振り付け。MVにある波打ち際での演出を彷彿(ほうふつ)とさせる。照明の加減もあるが、白塗りで踊る舞踏集団「山海塾」のような怪しさも漂っていた。

MCで「ダンサーたちのお兄ちゃんみたいになってきた…」(おそらくずっと一緒にいるうちに、若い男子たちとクラブ活動的なノリで仲良くなったのだろう)。

「罪の香り」

生歌で聴くと何となく「郷ひろみ」臭を感じた曲(笑)「抜き足差し足忍び足」「ちょっとぉ~」の辺りなどは特にそうだ。中音域の発声や声質が似ている?ことも大きいだろうか。

「もうええわ」

移動式の台に乗ったKORG Grandstageが登場。あのブルージーでクールなエレピのソロが聴けたのには鳥肌が立った。何より拙作の藤井風フィギュアと同じアングル、表情でキーボードを奏でる様子が見られたのはうれしかった。

「死ぬのがいいわ」

「もうええわ」から、自然なつなぎで始まった「死ぬのがいいわ」低音部がとてもいい声だった。同じ音型を繰り返すフレーズ、レンジ(音域)が広いせいか、サビの最高音辺りになると、声帯がちょっと辛そうだった印象。

「特にない」

「皆さんの心の中にあるネガティヴなものが、手拍子するたびに消えていくと思う」というMC。「バンドメンバーのガイドに合わせてやってねと、と言う前に、もう皆さんやってくれとんやなぁ~」と言っていた?

「帰ろう」

イントロの導入部分のコードが、音源とは少し違うアレンジだったようだ。ピアノ弾き語り。時空だけでなく何もかも超越したかのような光の演出。涙をぬぐう人も。ホール全体が満天の星空になった。

「青春病」

野ざらしダンス、俯瞰(ふかん)で見るとなかなか圧巻。TAIKINGのギターのカッティングがタイトで、とてもカッコいい。これを生で聴けたことは、とてもお得感があった。

バンドメンバー紹介

Suchmos「STAY TUNE」が演奏された。TAIKINGと真船氏のベース、藤井風とのピアノの掛け合いがちょっとしたセッションのよう。最高にカッコいいグルーヴが聴けた。


「何なんw」

「みんな心で歌うてや~」武道館でのジャンピングや、渋公での多幸感あふれるピアノソロを思い起こさせるプレイ。このピアノを生で聴くのが念願だったので、大満足といしか言いようがない。TAIKINGとのグルーヴ感あふれるユニゾンもお見事。残念ながらまだ「何なんw」でコール&レスポンスはできない。それでも観客のコールに合わせて振り上げる手には力がこもっている。ホール全体が熱気を帯び一体化しているのがわかった。


「燃えよ」

前半は後ノリなビートでしっとりと。後半は4つ打ち強調アレンジ。そしておもむろにショルダーキーボード(RolandのAX-edgeだと思われる)をひっさげてステージ前面へ進み出る藤井風。

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エレキギターのような音色と使ったフレーズはとてもブルージー。「燃えよ」の間奏で、ハモンドオルガン系の音で鳴っているようなブルーノートスケールを多用したキメフレーズが最高にカッコよかった。ギタリストのように上体を斜めに反らし、ダンサーたちと隊列を組んで踊る姿に一気に盛り上がる会場。「何なんw」に続き大阪城ホールが一体となる。

ダンサー紹介

この時、真船氏とTAIKINGの演奏するフレーズのカッコイイことといったら!ダンサーたちのストリートダンスに合わせて、ゴリゴリのファンキーなベースラインにワウワウと絡まるギター。とにかく渋くてJBでも出てくるのかと思った。もう藤井風が何と言っていたのか、全く覚えていない(笑)

「さよならべいべ」

つなぎ無しでいきなり始まった。TAIKINGが刻むギターのリフが切なさをあおる。「さよならがーあんたーに~」サビのフレーズで一斉に手を左右に振る客席。遠い故郷や「誰かや何かにさよならしたあの頃」を想う人も多かったことだろう。


バンドメンバーから一言

真船氏の「551がある時~(拍手喝采)」「ない時~(反応なし)」がウケていた。客席の反応に「さっぱりわからん」と藤井風。ごもっとも(笑)

「良いことにも悪いことにも、執着しないようにしている」

「ニュートラル、自然体で」

彼のテーマであり、いつも話している「放棄と解放」「執着を手放す」でもあるのだろう。良いことであっても”逃すまい”とガッチリ囲い込んで離さないのは調子が出ない、と言っていたような。

「旅路」

「簡単にいかんことも多いけど、一緒にもがいていきましょうや」

ハンドマイクに、いわゆるう〇こ座りから歌い始めた。しっとりと歌い上げる「旅路」。タオルやハンカチで目元をぬぐう人も見られた。最後に、着ていた上着を脱いで客席へ向かって放り投げる(ステージとは距離があるので舞台端に引っ掛かり、観客シートには届かず)

「ほんまにありがとうございました」

バンドメンバーと前へ出て深くおじぎ。「燃えよ」のインストver.が鳴り出す。 止まない拍手にもう一度登場。深く頭を下げて「ありがとう~」「みなさんの幸せを願っとります。マジで、これマジで」「God Bless Us」「God Bless show」「またお会いできるのを楽しみにしております」

退出アナウンスが流れ、公演終了。

ホールの外は外気温16度。上気したほおをなでる風がひんやりと心地よい。退出後も掲示されたツアーポスターや、ホール遠景で記念撮影する人たちでいっぱいだ。

夜空には月と夜間飛行の航空機の明かりが光る。日常生活のあれこれを忘れ、全身を藤井風の音に委ねた1時間半。メモに取ったライブ内容を反芻(はんすう)しながら、コートの襟を合わせて帰路を急いだ。



<感想>

全体的にライブ向けに大幅にアレンジするというよりは、音源を忠実に再現していた模様。ダンサーやバンドメンバーの紹介時の演奏も、想像以上にハイレベルでよかった。曲間のつなぎ方やイントロ、アウトロの処理なども秀逸。メンバー1人ひとりの音楽性と技術の高さがわかる。

ジャズ寄りのメンバーだからか、使っていたコードやリズムのパターンがとてもファンキー。タイトなグルーヴ感もよかった。中でもダンサー紹介の際の掛け合いは最高にクール。taikingのタイトなワウワウギターと真船氏の粘っこいベースのコンビネーションは、さすがだとうなった。藤井風がピアノで入って、そのまんまジャムセッションでも始めてほしいくらいだった。

藤井風のMCは大阪弁を意識していたのだろうか。相変わらずおじいちゃんと幼児が同居するようなゆるゆるトーク。ありのままの自分をさらけ出せるのは、全てを受け入れ無条件に愛されてきた人間特有のものだ。

「全身からにじみ出る愛情」を感じさせる藤井風。慈愛に満ちた眼差しや優しい物言いは天性のものである部分も大きい。だが、その特性の多くは彼自身の努力で形成されたものでもあるだろう。

絶対的な信頼関係は一方通行では作れない。愛され、期待に応え続けるのにも確固たる信念が必要で、決して楽なことばかりではないのだから。

「きらり」以降、マスメディアに登場する機会も増えた藤井風。多方面の可能性を秘めた彼は、これからもますます活躍の場を広げ、耳目を集めるだろう。

子どものころから大好きだった音楽と歌で、全ての人に安らぎと希望をもたらす彼に幸あれ!


画像引用:藤井風公式Twitter


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