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母を亡くした女性たち 臼田明子
主に10代・20代で母親を亡くしたマザレス(motherless)女性たちは、人生のロールモデルであり最も身近な理解者の不在をどう受け止め、どのような「母のいない人生」を歩んできたのか?
当事者みずからが、誰にも語れなかった当事者たちの声を丹念に拾い集めた、それぞれの喪失と恢復のストーリー。
娘の結婚式当日の朝に病気の発作で亡くなった母がいる。当日は花嫁の母として出席するのを楽しみにしていたのに・・・・・・。また、祖母の亡くなった翌日に交通事故で亡くなった母もいる。
娘からすると、母と祖母をほぼ同時に亡くした訳だ。
誰も未来のことは予想できない
年齢が経ってからの母親との別れ
自分が40歳以上で母親を亡くすことは、悲しいことではあるが、ある程度自然現象なので私たちより諦めもつきやすいのかもしれない。
宮崎・斎藤の研究(2003)によると、40代の娘(既婚)は60代の母親ががんで死んでも、非常にポジティブな返事をしているという。
彼女にとってそれが初めて経験する身近な人の死だったにもかかわらず。
「大変だったけれども、母からは色々なことを教えてもらって、感謝している。だから、全体としては幸せだ」
やはり、女性も40代になれば、結婚も出産も幼児期の手がかかる育児も終わっているであろう。だから、母の死にある程度納得できるのかもしれない。
母と娘の絆
日本の精神分析の第一人者斎藤環によると、「父殺し」は出来ても、娘による「母殺し」は出来ないという。
なぜなら父は外部の人であるのに対し、母の娘支配というのは無意識のうちに娘の内面にまで深く入り込んで、内側から娘の自覚無しに支配し続けるからだ。
母を殺すとなると、自分も傷つけてしまう自傷行為になるのである。
男性と女性の別れの違い
女性の方が男性より親の死後、高いレベルの抑うつ状態を経験し、人間関係形成が困難になることもわかっている。
従って、女子の方が大きな悲嘆と性別役割意識が影響している可能性が高いと言え、それゆえ母と娘の死別を重要視するのである。
男性と女性の悲しみの違い
男性は弱みを見せるな、強くあれ、泣くな等「男らしさの呪縛」で自由に感情を表せないことの表れだろうか。
研究によると男性と女性で死別の悲しみの反応は違うようだ。
男性は殻に閉じこもり、女性は他の人間に接触しようと試みる。
男性は強い悲しみの感情を見せない傾向にある。
そして仕事、性生活、遊びと飲酒に破滅的行動をとりがちで、むしろ怒りを見せる。
女性は悲しみの感情を表現するし、他人からのサポートを得ようと探し求める。これらは、男性が社会(周りの友人達)から「強いし、すぐに悲しみから快復するだろう」と思われているからでもある。
しかし、近年の研究では、少なくとも西洋社会では、悲しみ方は男女の性差(ジェンター)
と関係するが、それで決まるものでもない。それは本人の性格だったり、家庭環境だったり個人差によるとされている。
ネガティブ・ケイパビリティ
本来人間は「どうして?」という疑問に対して腑に落ちる答えを探しがちだ。自分が納得し、安心したいのだ。
しかし、世の中は考えて原因がわかるものばかりではない。
複雑化する現代社会においては、なぜ起こったのか分からない現象を無理やり理由付けするのではなく、答えがわからないまま受け入れる能力が重要視されている。それをネガティブ・ケイパビリティと呼ぶそうだ。
艱難汝を玉にす
フランス由来の諺で、多くの困難を乗り越えてこそ立派な人間になるという意味だ。マザレス女性たちの自立した姿や人間性に触れると、この言葉は今も通用するのではないかと感じ
自立した考え方
母親との早い時期の別れは、早い自立につながる。
中年になっても単独行動ができず、必ず誰かと一緒できず、必ず誰かと一緒でないと行動できないというオートノミーが低い女性たちではない。
とても、考えさせられる本でした。
若い時期に母と別れた女性の話は、本当に言葉に出来ない悲しみである。
聞いてほしい人と、聞かれたくない人。
人によって違うのはもちろんで、寄り添うことしかできない。
無力な自分に憤りを感じる。
同じ悲しみは理解できないけど、努力することはできる。
いつかは別れるのだけど、なるべく先がよい。
この本はおすすめです。
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