天才の光と影 ノーベル賞受賞者23人の狂気 高橋昌一郎
レーナルトとアインシュタイン
レーナルトは、巧妙に「電子線」を取り出せる「レーナルト官」を発明し、その後の「「光電効果」の研究に多大な貢献をもたらした。
その結果彼は、「陰極線に関する研究」により、1905年にノーベル物理学賞を受賞した。
しかし、レーナルトの「狂気」はノーベル賞授賞の年から始まる。
科学史上1905年は奇跡の年といわれている。
アルベルト・アインシュタインがという無名の26歳の青年が、物理学根本から覆す「特殊相対性理論」をはじめとする3つの主要論文を立て続けに発表したからである。
世界の物理学会は華々しく登場したアインシュタインんの斬新な理論の話題で騒然となり、レーナルトの栄誉は、その陰に隠れてしまった。
そこから嫉妬と憎悪を募らせらレーナルトは、学問的にも人格的にもアインシュタインに対する攻撃を開始した。
彼は相対性理論を「机上の空論」と断定し、アインシュタインに論争を挑み、アインシュタインの業績を徹底的に貶めてノーベル賞受賞を妨害し続けた。
さらにアインシュタインがベルリン大学の教授として迎えられ、ドイツで最も権威ある「ガイザー・ヴェルヘルム研究所」の所長に就任すると、レーナルトの激怒は頂点に達した。
アインシュタインはレーナルトよりも17歳も年下で、しかも彼の軽蔑する「ユダヤ人」であるにもかかわらず、レーナルトが羨望しやまない地位に昇りつめたのである。
レーナルトの狂気は凄まじいものであった。
それは「常軌をい逸脱している」あるいは「尋常ではない」という精神状態である。
一般医、ノーベル賞を受賞するほど研究を成し遂げた「天才」は素晴らしい人格者でもあると思われがちだが、実際は必ずしもそうではない。
アインシュタインノーベル物理学賞
1922年、アインシュタインは「光量子論」で、ノーベル物理学賞を受賞した。
1920年のノーベル物理学選考委員会で、初めてアインシュタインの名前が候補にあがった。
相対性理論の重要性を見抜いて彼を推薦したのは、ライプツィヒ大学のヴェルウヘルム・オストヴァルだった。
いかにオストヴァルトに先見の明があったか、よくわかる。
それから1921年にいたるまで、アインシュタインは、合計63回も推薦を受けたが、委員会内の強固な反対により受賞を逃している。
その主な理由は彼が「ユダヤ人」であるにもかかわらず科学界の「英雄」であり、当時ドイツでで勢力を急拡大していたナチスの「敵」だったからである
彼をもっとも嫌悪した黒幕の一人が、レーナルトだった。
アインシュタインの言葉
「マトモな物理学者の中で相対性理論を理解できずに批判しているのはレーナルトだけだ」
「レーナルトの実験物理学には敬意を払うが、彼は理論物理学では何の業績もない」
と憤慨し、批判している。
1931年、アインシュタインの言葉
「もし、私が間違っているなら、それを指摘するには一人で十分だろう」と笑った。
ナチス・ドイツの科学顧問として強権を得たレーナルトは、終戦も出ユダヤ人科学者を迫害し続けた。
彼の書斎には、ヒトラーの写真と「私の忠実で賞賛すべき同志」と書かれたサイン入りの手紙が飾られいた。
アインシュタインの最後
1955年4月18日、アインシュタインは76歳で急逝した。彼はその5日前に自宅で突然倒れて入院したが、医師の手術の勧めをすべて断った。
死の直前、彼は
「私は自分が望む時に逝きたい。命を人工的に長引くかせるのは退屈だ。私の仕事はやり遂げた。今が逝く時だ。私はエレガントに逝く」と言った。
ライナス・ポーイング
トランジスタを初飯、ノーベル化学賞と平和賞を受賞した。
ボーイんぐの前半生は悲惨な人生だった、しかし後半生は幸せだった。
ノーベル平和賞の授賞式のあと、世界中の大学生が集まったパーティーで、彼は次のように述べている。
「立派な年長者の話を聞く際には、注意深く敬意を抱いて、その内容を理解することが大切です。ただし、その人に言うことを『信じて』はいけません!相手が白髪頭であろうと禿げ頭であろうと、あるいはノーベル章受賞者であろうと、間違えることがあるのです。常に疑うことを忘れてはなりません。
いつでも最も大事なことは自分の頭で『考える』ことです」
科学者の弱点
50年以上手品を趣味にしているサイエンス・ライターのマーティン・ガードナーは
「実は、手品師が最も騙しやすいのが科学者だ」と述べている。
「なぜなら、科学者の実験室では、何もかもが見たままの世界だからだ。そこには隠された鏡や秘密の戸棚、仕込まれた磁石も存在しない。助手が科学薬品Aをビーカーに注ぐとき、こっそり別の薬品Bを代わりに入れることはまずない。
科学者常に物事を合理的に考えようとする。それまでずっと合理的な世界ばかりを体験してきたからだ。ところが、手品の方法は合理的で、科学者がまったく体験したことがない種類のものなのだ」
ノーベル病
エモリー大学教授の心理学者スコット・リリエンフェエルドは、ノーベル賞受賞者が「万能感」と抱くことによって、専門外で奇妙な発言をするようになる症状を「ノーベル病」と呼んでいる。
囚人のジレンマ
2人の銀行強盗が警察に捕まったとする。
検察官は二二人に罪を認めさせたいが、二人の囚人はもちろん刑期を短くしたいと願っている。
そこで検察官は、二人を別々の部屋に入れて各々に次のように言った。
「お前も相棒も黙秘を続けたら、銀行強盗は証拠不十分で立件できない。せいぜい武器不法所持の罪で二人とも一年の刑期というとこだろう。逆に2人とも銀行強盗を自白したら、刑期はそろって5年になる。しかし、今、お前が正直に2人で銀行強盗をやったち自白すれば、捜査協力の返礼としてお前を無罪放免にしてやろう。ただし、相棒は10年の刑期になるがね。
どうだ?」
囚人は、相棒に協調して黙秘を続けるべきか、相棒を裏切って自白すべきか、考え込むだろう。さらに検察官は、次のように催促する。
「実は、お前の相棒にもまったっく同じことを話してあるんだ。もし、相棒が先に自白してお前が黙秘を続けたら、相棒は無罪放免だが、お前は10年も牢獄行きだぞ!さあ、どうする?急いで自白しなくていいのか?」
面白かったです。
神がかった天才は、人格的にも優れている・・・とはかぎらない。
一つの事に集中して、道を切り開く才能は正しく神がかっている。
しかし、その内容を認めてもらうには、同じような秀才でなければ一般人には「わからない」のである。
そして、同じ秀才を「嬉しく」思うか、「妬ましく」思うか、そこに人間性を現れる。
凡人でごめんね・・・としか思えない。
この本は、天才の栄光だけでなく苦悩の話でもある。
この本はおすすめです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?