患者が知らない開業医の本音 松永正訓
大学病院で勤務する著者にとって、開業医は都落ちを意味する。
患者の立場から言えば、どちらもお医者さんなのだが、立場が違えば見方も異なる。
松永先生は病気の為に開業医になられた。
何度もそのことに触れられているので、松永先生の自尊心、矜持に係わる気持ちの表れなのだろう。
開業するにあたってこんな言葉を記しておられる。
「消極的な気持ちではなく『ここに陸果てて海始まる』の心境で第二の人生へ漕ぎ出したいと思います』
著者である松永先生は医師になって18年、千葉大学附属病院小児科外科教室員(医局員)の職に就いていた、貯金は200万円だった。
贅沢はしていない、家族を養い、住宅ローンを払っているといくらも残らないのだ。
建て貸し
大家さんにクリニックを建ててもらい、家賃を払う方法。
55坪で家賃が、毎月55万円
敷金礼金が20ねん契約で一坪12万円 計660万円
20年の家賃で1億3200万円。
クリニックの建て貸し大家は儲かる。
一日の来院は初日27人
5か月後には一日80人
8か月後には一日100人にもなった。
処方する薬が少ないほど、説明が長いほど、それはいい医者である。
鼻血の止め方
鼻をつまむ。
5分つまんだ後、ティッシュペーパーを鼻の穴に詰める。
その状態で3分つまむ。
それで絶対に止まる。
医師会
加入しない医師は10%ぐらい。
医師会は市の医師会、県の医師会、日本医師会の3つすべてに入らなければならない。
さらに日本医師連盟にも加入する必要がある。
年会費は42万円。
メリットは
情報、コロナ禍において新型コロナに関する最新情報や、インフルエンザの流行の情報や胃腸炎、マイコプラズマ肺炎の最新情報が得られる。
学校医や当番医(夜間、休日)を務めることで患者を集めることに役立つ。
医師会に加入していると国民健康保険が「医師国保」というものになる。スタッフに関しては、支払い金額がちょっとだけ安くなり、福利厚生に役立つ。
開業医の収入
年収7000万円の内科開業医
一日100人以上の患者が来る内科では、年収が7000万になる。
しかし、日本の法律の高額所得者は累進課税方式なので、収入があがると税率も上がる。
7000万円の場合は50%になるので、税金で半分3500万持っていかれる。
しかし、年収は3500万円となると、やはり医者は高額所得者であることに変わりはない。
開業にあたる医療機器は重大な問題 初期投資
X線撮影装置 200万円
現像機 130万円
超音波装置 280円
血液検査の測定器
ネブライザー320万円
電子カルテ
ソフト 430万円
内装工事 1300万円
X線撮影室の鉛の防護壁工事
300万円
その他
ソファー カーテン 310万円
診察券 220万円
大家さんの敷金礼金 660万円
医師会の入会金 180万円
その他もろもろで合計およそ、3500万円である。
これにより最初の一年間は利益はでない。
しかし通勤に使う車は経費に換算される。
税金でごっそり持っていかれるぐらいならば、いい車に乗って経費にした方がお得な世界。
松永先生は開業医になって16年目なので、リース借入金の返済はすませておられる。
なので毎月出て聞く出費は、
人件費、材料費、光熱費、家賃、事務費で、合計300万円になる。
一か月に20日働いたとすると、10日で経費は終わる。
後に10日が松永先生の収入になる。
どちらにせよ、体が資本であることに変わりはない。
病気になったら、おじゃんだ。
勤務医と開業医の収入は開業医の勝ちだ。
だいたい3倍ほど開業医の方が収入が多いのだ。
しかし、年収は3500万円となると、やはり医者は高額所得者であることに変わりはない。
世界的権威の九州国際重粒子線がん治療センター理事長、中川原章先生の言葉
「どんな道を進んでも医師の最後はみんな同じ。
どの道にせよ、最後まで自分の生き方を充実させた人が、結局は人生の勝ちになる。そこには大学教授も開業医も違いはない」
人生そのものに勝ち負けはないのだ。
この本を読んでいて、前に読んだ本に書いてあった言葉を思い出した。
あの世には何も持っていけない。
しかし持っていけるものが3つだけある。
それは、経験と宗教と学問だ。
3つとも難しいなと思った。
この本はおすすめです。
インパクトファクター
ある科学雑誌に掲載されている論文場どれだけたくさん他の論文に引用されているかでインパクトファクターの数値が決まる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?