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デジタル生存競争 ダグラス・ラシュコフ


頂点の富裕層

 シリコンバレーの逃避的な態度を「マインドセット(無意識の思考パターン)」とこの本では呼ぶことになる。

 この考え方は、勝者が何らかの方法で他の人類を置き去りにして逃げられる、とその支持者にさせています。
 もしかすると、最初からずっと、それが彼らの目的だったのでしょう。

 おそらく、人間性に配慮しないこの運命論的な行動は、暴走したデジタル資本主義の結果ではなく、その原因なのです。
 
 他人や世界をこのように扱う態度は、経験的科学、個人主義、性的支配、さらには「進歩」そのものが持つ、反社会的傾向にさかのぼることができます。

 

富裕層の恐怖


 「事件発生後、私の管備隊に対する支配権を維持するにはどうすればよいでしょうか」。
 
 この「事件」というのは彼らの婉曲表現なのでした。それは環境破壊、社会不安、核爆発、太陽嵐、まん延するウイルス、全てを停止させる悪意あるコンピューター侵入、などを意味していま

 移住するべきなのはニュージーランドか、アラスカか?どちらの地域が、来たるべき気候危機で受ける影響が少ないのか?質問はより露骨になっていきます。

 気候変動と細菌戦争では、どちらがより大きい脅威なのか?外部からの支援なしに生存できるようにするのは、どの程度の期間を想定しておくべきか?シェルターには、独自の空気供給源が必要か?

 地下水が汚染される可能性はどの程度か?最後に、証券会社の社長が、自分専用の地下防空壕設備が間もなく完成する、


労働から消費者を遠ざける


 たとえば、スマートフォン組み立ての最終段階では、労働者が有毒な浴剤を使って、1台ごとに機器の表面から自分たちの指紋をふき取っています。

 この化学物質は、流産や癌を発生させたり、寿命を縮めたりする恐れがあります。もちろん、その利点は、人間が関わった痕跡を消すことです。

 消費者が(おそらく「開封の儀」の動画を撮影しながら]箱を開けると、異次元の工場から瞬間移動してきたようにピカピカの電子機器が出現します。
 実際に製造された中国の工場の状況を思い出させる人間の指紋は付いていません。労働者の苦労の跡を消すために、IT企業はその苦労に加えて毒を与えているのです。 

征服と収奪


 取引においては裕福な側が常に有利であり、この効果に対抗するルールや制限がない限り、それが成立することを証明しました。

 賭け金に上限のないポーカーゲームでは、裕福なプレイヤーが有利です。なぜならば、対酸相手が全ての所持金を賭けなければならない状況に何度も追い込むことができるからです。

 したがって、規制のない市場に不平等が存在する場合、最も裕福な者が有利です。だからこそ、彼らは、その資産を使って規制緩和を推進しており、その結果としてさらに資産を増やしているのです
 
 このレベルのプレイヤーは、非常に特殊な種類の資産を得ようとします。それは、配当金や再生可能な店場に基づくものではなく、貨幣の流通システムによるものでもありません。

 単なる征服と収奪です。征服して支配すべき新しい領土を見つけるか、今まで以上に人々から収奪できる新しい技術を見つけるか、のどちらかです。

 そして、最高潮に達する前に、あるいは次の新しい技術によって邪魔される前に、会社全体を売却しです。
その方法がうまくいく場合もあります。

 マーク・ザッカーバーグ

マーク・ザッカーバーグがローマ皇帝アウグストウスを崇拝しているというのは有名な話です。

 ザッカーバーグはアウグストウスのように「非常に厳格な統治方法」を採用しています。

 これは、彼の帝国が永遠の安定を得るために私たちが払う対価としては、高価過ぎるのかもしれません。
 ザッカーバーグは、自社の従業員に対して常に「素早く動き、ものごとを壊せ」ということを主張しており、それによって独占的地位を勝ち取ったのですが、同時に、インターネットのイノベーション、社会の環境やメンタルヘルスに対して、さらには民主主義の存在可能性に対して、破滅的な影響を与えました。

 それは、確固たる楽観主義者が数十億ドルの資金と数ペタバイト(1ペタバイトは1000兆バイト)のメモリーを自由に使って、たった一つの目標に向かって進む際に起こったことです。


金融化のピラミッド


「ホーム」という言葉は、出身地ではなくて所有する住宅を意味するようになりました。
 これは、社会を一定の方向に導くための意識的な取り組みの結果です。

 心に傷を負って粗暴な振る舞いをする可能性のある、第2次世界大戦の復員兵が多数帰還してくることを心配したフランクリン・ルーズベルト大統領は、住宅の所有とローン返済義務が彼らをおとなしくさせるのに役立つと期待しました。

 最初の計画的な郊外住宅地であるレビットタウンをニューヨーク郊外に開発した不動産業者、ウィリアム・レビットは、フランクリン・ルーズベルト大統領に次のように説明しました。
「自分の家と土地を所有する人は、共産主義者にはなりません。するべきことが多過ぎますから」。

 この住宅所有者という集団は、米国の大量消費主義を支える基盤になり、大量消費は、金融の抽象化を次々と新しい段階へ進める原動力になりました。

 
 何もかも手に入れた人は、未来に怯える。
 世界を壊してお金を儲けたのに、世界から逃げようとする。

 なんてことをしてくれるのか?
 アレクサンダー大王は世界を手にしたが、世界を壊そうとはしなかった。
 あくまで統治したのだ。

 しかし、今のビリオネアは、世界を平気で壊してしまう。

 自分さえよければそれでいいのだ。
 気持ちがわからなくもないが、自分ならそこまで出来ない。

 恐ろしい話だ。

 読んでいて腹が立つけど、真実の一つを知ることができる。

 この本はおススメです。

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anco
ありがとうございます!! がんばります!!