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監察医が泣いた死体の再鑑定:2度は殺させない 上野正彦
上野先生の元には、警察、保険会社、および遺族から再鑑定の依頼が数多く寄せられる。
引き受けた著者は、なぜ最初の鑑定が間違っていたかを紐解いていく。
「溺死ではない、殺しだ。事故死ではない、病死だ。病死ではない、暴行死だ」。
最初の鑑定の嘘を暴いていく様は、上質なミステリーを読んでいるようにドラマチックだ。
ときには裁判所で、証人として最初の鑑定人と対峙したり、再鑑定の再々鑑定を提出したりと……事件は2転、3転
皆、納得がしたいのだ。
突然の別れに、いきなり片腕をもがれたように、何か意味があったはずだと。
その理由を上野先生に求める。
上野先生はその遺族の気持ちに真摯に向き合る。
気持ちは寄り添いながら、理性で事実のみを述べる。
おためごかしの気持ちの軽くなる嘘よりも、本当の最後を知らせるのが故人の望みなのだから。
しかし、保険会社から傷害保険をせしめるために、電車に両足を切断させて数億円を手に入れたいとする人の気が知れない。
そんなこと思いつきもしないし、実行も不可能だ。
世の中には凄い人もいるものだなぁ・・・と思いました。
この本に書かれている事案は、悲しいものがほとんどです。
人間は万能ではないので、間違うことがある。
しかし、間違いが許されない世界もある。
みんなが幸せに、みんなが笑いあえる世界になれればいいのに、というような願いの様なものをこの本で感じました。
少し落ち込むけど、この本はとてもいい本です。
もちろんおすすめです。
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