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人前で弾き続けること
先日、友人と交わした会話の中に登場したYさんという男性の方のことを、ふと思い出した。
友人は私よりずっと都会に住んでいて、ピアノもほぼ人生通してずーっと弾いていて、練習会やら弾き合い会にも参加している。もう何年も前、ある練習会で、彼女は初めてYさんと出逢ったという。Yさんはその練習会で、若くて綺麗でピアノもとても上手な数人の女性のそばに陣取り、親しげに話をしていたらしい。友人は、きっとこのYさんも、彼女たちのようにとびきりピアノが上手いんだろうなーと、少々怖気付いていた。彼の番が回ってきた。彼は、譜読みの途中か?というような、おぼつかない演奏で、止まり止まり、弾いた。一周し、また彼の番が回ってきた。今度はさっきとは違う曲を、初見かな?というような感じで息絶え絶えに最後まで弾いた。友人は、勝手に持った第一印象と、実際のYさんの違いように驚きつつも、ちょっと安心して、その会中にYさんと会話を交わした。彼は定年退職されてから一からピアノを始め、どうしても弾きたい2曲を、ずっと独学で練習していると話した。
時が過ぎ、別の機会に、友人はまたYさんと一緒になった。Yさんは、例の2曲をぼちぼちと弾いた。そんなことを繰り返していて、昨年の秋、とある会で2人はまた再会した。その時のYさんの演奏は、流暢に流れ、大きく前進していたという。
この話のオチは、実は友人はYさんの十八番の2曲がもともと好きで、いつか弾いてみようと思っていたようなのだが、なんとなく手が出せなくなっちゃった、というものだった。
弾きたい曲を人前で弾き続けて、じわじわと上達しているYさんが実は一番かっこいい、と、2人で絶賛したのだった。私も、もし機会があったら、Yさんのように、好きな曲を何十回でも人前で弾くような学習者でいたいな、と今になってそう思う。
友人曰く、Yさんは、いつも綺麗なお姉さんたちのそばに席を取るらしい。そして生き生きと話をするんだとか。ピアノを弾く聞く以外の楽しみも十分味わってるんだろうな😊そっちがメインかも?だとしても、ピアノの上達には並々ならぬ努力と辛抱が必要なことを十分承知している私たちには、やはりYさんの存在は眩しい。