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飲み会に行きたい気持ちでメンタルの調子が測れるという気付き

 就業中、社内メールが届いた。

 送り主は隣の課の後輩で、内容は隣の課に新しく赴任した人の歓迎会を部のみんなでやるよというものだった。
 いつものおもちなら飲み会の文字を視認した瞬間に「行くよー!」と返すのだけど、その日のおもちは手が動かなかった。
 おもちは調子が悪かった。最近の温度差とか終わらない仕事とか、諸々がきつくて結構メンタルが応えていた。
 行くとどうせ先輩いるよなぁ……とか先輩すらいなくてうちの課参加するの私だけだったら切なすぎないか???とか諸々、普段は浮かばないような雑念に捉われて、おもちは返事を躊躇った。
 もちろん新しく来た人の歓迎はしたい、したいし、飲み会にもいきたい。けど、ちょっと迷う。正直忘年会も近いし、飲み会なら他にもなくはないし。
 どうしよう、と小さく唸っていたところに同じ課の同期が仕事の話をしに来た。
 同期は、おもちがメインでやってる仕事のやり方を知りたいらしく、細々と二人で言葉を交わした。それから先輩が隣にいないのを見計らって、

「ねね、同期くん、これどうする?」

 と、先程のメール画面を見せた。
 彼はやや間を空けてから「自腹だしパスかも」と笑ってみせた。

「そっかぁ」
「え、どうするの?」
「迷ってるから聞いたんよ」
「……おもちちゃん飲み会なら無条件で参加するんだと思ってた」

 同期の言葉に驚いて振り向いた。
 いつものおもちならその通りで、なんの迷いもなく参加するのに。
「いやあ、みんないないのに一人で張り切ってたら恥ずかしいなぁって思って」と当たり障りのない言葉を返す。
 同期と言葉を交わしてから解散して、考える。私、飲み会行きたくない時あるんだ。

「来月飲み会行くか迷ってるんすよ」
「おもちさん行かない選択肢あるんだ???」

 昼休み。同じ話を現場の頃仲良くなった派遣さんにしたら同期と同じ反応が返ってきた。
 あるよたまには、と返しながらもしかしてらしくないことしてる?と首を傾げる。そもそも最後に飲みを断ったの確か半年以上前で、その時も別の飲み会とブッキングしたから行けなかっただけで。
 派遣さんはやや心配そうにしていた。おもちが飲み会行かないのを病気か何かと思ってるっぽい。ありがとうね。

 この辺りで調子悪いんだな?と気付き始める。
 調子が悪いというかメンタルの不調に伴って人と必要以上に話したくないのだと気付く。
 参ったなぁと思いながら昼休み明け、てくてくと後輩に近づく。

「仕事の話じゃなくて悪いんだけどさぁ」
「なんでもどうぞ!」
「今度の飲み会うちの課誰かくるって連絡きた?」

 後輩は驚いたような表情を浮かべてから「いえ、まだ誰も」と返した。
「そっかぁ……なんか一人で張り切ってたら恥ずかしいなぁって」
「いやいやいやwww」
 後輩はおかしそうに笑いながら大丈夫、と返してから当然のように「来ます?」と首を傾げた。
「保留で。誰かくるって連絡きたら教えて」おもちの返答にまた後輩は驚いた顔をした。お前休みの選択肢あるの?って顔。わかる、おもちも驚いている。

 やっぱりらしくないことをしている、と思う反面、これで体調わかるのめちゃくちゃシンプル人間だなぁと思った。おもち、わかりやすすぎる。そして人に心配されるのもウケる。もっと別の方法が良かったけど飲んだくれにはこれがお似合いなのだ。




【おまけ】
 結局先輩が出席らしいので飲み会に行くことにした。
 元々行きたい寄りだったし、まあジム行ってメンタルちょっと回復したら前向きになったし。
 後輩はいい奴なのですぐに先輩が出席なのを教えてくれた。先輩が隣でバチバチに聞いてんのに。
 後輩、めちゃくちゃ声を潜めていたが多分聞こえていた。のでなんとなく休むねとは言えなくなった。まあ行きたかったし。
 さらに後輩、その足で先輩に出席のお礼を言っていた。君はいい奴すぎる。

「今度の飲み会くんの?」

 結果、不審に思ったであろう先輩に給湯室で問い詰められた。

「いきますよ」
「そうだよね、飲み会全出席女だもんね

お前に言われたかねーんだよ飲み会全出席おっさん。

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