ガーター付ストッキングを装備した日ほか
こまごました日記をいくつか。
ガーター付ストッキングの話
Xでガーター付ストッキング(と言っていいのか?)がバズっていた。
確か元々はストッキングのパンティ部が嫌〜〜!みたいなポストについた返信だったと思う。
元々、ストッキングも靴下も憎んでいたおもちはなんとなくそのポストが目について、なんとなく黒いやつを買ってみた。
使えたら上々だし使えなければまあ話のタネにはなるし。
これがまあめちゃくちゃ快適だった。
ストッキングとかタイツになれているので最初は違和感があったものの、慣れれば結構楽だった。
ただ、薄手のタイプだったせいか防寒性はない。からめちゃくちゃ寒かった。
さてその日、外で会議に出ないといけないことをすっからかんに忘れていたおもちはすっかり冷えた風の吹き荒ぶ会社の裏口で、先輩と二人、お兄さんが車を出してくれるのを待っていた。
おもち、そもそも寒さ耐性が低すぎる傾向があるのだけど、その日は外部の偉い人が集まる会議だったこともあって、綺麗めなスーツでしかもスカートだった。だから余計に寒い。
「寒すぎるんだけども!?」
「中で待てば?」
呆れ顔の先輩に「いや車出してもらってるのにさすがに」と首を振る。
「ブラウスも靴下も髪もミスった」とぼやいていると一瞬ちらりとこちらの足元を見た先輩が首を傾げた。
「あったかくないの?それ」
と、示されたストッキングにあー、と小さく唸る。
「靴下みたいなもんなんで」
「え、靴下なの」
「いや、靴下じゃないんだけど、あー……」
なんて説明しよう。なんか詳しい形状言ったらなんとなくセクハラになる気がした。というか馬鹿正直に答える必要がなかったのに寒さでおかしくなっていた。
「あの、ガーター?になってて」
「ガーター???」
「なんか、靴下からベルトみたいになってて???」
これマジでなんて説明すんのが正解だったの。誰か教えてくれ。
ファイル大量失踪事件解決編
最近、仕事で使うファイルが足りない。
おもちは同時並行で何種類かの仕事をすることがほとんどなので案件ごとに使う書類をクリアファイルに分けて、ボスや大ボスに見せる段階に来たものはバインダーに挟んで管理している。
クリアファイルとバインダーは共有のスペースにストックされているけど、数ヶ月くらい前からじわじわと数が減っていた。
おもち、つい横着をして手元に書類を溜めがちなので自分のせいかな、と思って溜めないように気をつけて戻していたりしたのだけど、なおも足りなかった。仕方ないので最近はクリップで挟んで無理矢理管理していた。
同僚たちも同じ感想を抱いていたようでクリアファイルをとりにきてはまともなファイルがないので首を傾げながら戻っていっていた。みんな忙しいし、それぞれ進行中の案件が多いのかなぁ、くらいにしか思っていなかった。けど、ファイルがないと自分がうっかり書類をなくしてしまいそうで、月末のバタバタが落ち着いたら庶務担当の部署に物品請求をかけようかな、なんて考えていた。
そんな日、先輩が突然事務室にある倉庫に向かった。
先輩は自分の書類をよくそこで管理していて、(しかも整理されてないので山になってる)朝に必要な分だけ自席に運んだきり、そのあとは倉庫に立ち入らないので珍しい、とは思っていた。
先輩は倉庫から一度出てくるとふらりとこちらに近づき、
「なんかさぁ、俺紙で諸々管理してんだけどさめちゃくちゃ溜まってきて」
「ですよね、気になってました」
ほんとに気になっていた。ぜってえいらんのあるだろと思ってた。
どうやら今日の先輩はここの掃除から始めるらしい。まあ正直クソ邪魔だったので自主的に片付ける意思が生まれたのはありがたい限りで、
「これからクリアファイルとかいっぱい出てくるから」
は?
「はぁ!?!?!?!?」
まさかの宣言におもちびっくり。正面に座るお兄さんはめちゃくちゃ笑っていた。
「通りで! あたしたちだけで使ってるにしては足りないとおもってた!」
「俺が持ってた」
「あたし物品請求しようと思ってたんだけど!?」
「大袈裟だなぁwwww俺前の部署いた時からこうだから」
大馬鹿野郎。しかも前科ありかよ。
宣言通り先輩の手元から10個以上のバインダーと30枚余のクリアファイルが出てきたのでおもちは化け物を見る目で先輩を見るしかなかった。(先輩からすると少ない方らしい)
仲良し同期たち
「今日カーディガン着てた?」
先輩が急にそんなことを言い出した。
おもちはパチパチとキーボードを打っていた手を止めて、自分でもわかるほど怪訝そうな表情を浮かべ、
「朝一瞬脱いだだけで着てたけど?」
というか人の服装へのその関心なんなの?
最後の言葉を飲み込んで返すと先輩はふーん、とこちらを眺めてから、
「それ同期くんの?」
といつもの憎らしい笑顔で楽しげに告げた。
言われている意味がわからなすぎてきょとんとしてから「え、全然意味わかんないんですけど」とさらに顔を顰めてみせた。
先輩は対角線上にいるおもちの同期をちらと見てから「いや同期くん、朝カーディガンだったのに半袖だから」「あぁ、あたしが同期くんから奪ったってことね」この察し力、我ながら偉い。先輩あしらい選手権があったらいい線行ける。行きたくないけど。
「奪ったなんて言ってないよ」なんて言う先輩を無視していると同期がこちらの会話に気づき、顔を上げた。
ちなみに同期、おもちと組んで先輩アンチをやるくらいには先輩に生意気を言う。のでおもちと同期はまとめて可愛くない後輩と言われている。
「なに?」
「同期くんのカーディガンでしょ、貸してあげたん?」
これ、とおもちを指差す先輩に同期は一瞬きょと、としてから「いや俺ら仲良しすぎでしょそれ」と笑う同期。
「そんなに仲良しではない」「ねー?」
と二人できゃっきゃっしていると「いや同じのだから」と先輩。同期は椅子に掛けていた自身のカーディガンを眺めてからややあって、
「それユニクロ?」「ユニクロ」
仲良しじゃん。
チキチキスマホ発火チキンレース
月に一度、庶務担当から社用スマホを借りて仕事をしている。
そのスマホを定期的に借りるのはうちの部署くらいなのだけど、その日、借りたスマホを見ておもちはぴたと止まった。
スマホの背面が明らかに浮かび上がったパカパカと音を立てていた。
「え、なんかパカパカなんだけど」
「発火するやつじゃん」
お兄さんから容赦なく告げられた言葉にビクッと跳ね上がる。
「やだやだやだやだ!早く返したい〜!」
ぎゃー!と悲鳴をあげながらさっさと処理を終わらせるおもち。笑うお兄さん。
爆弾処理をしている気持ちになりながらもなんとか処理を終わらせて、スマホを持ち上げようとしたとき。
スマホの背面しか掴めていなかったようでスマホがメリメリと音を立てた。
「おんぎゃあ!?」
奇妙な叫び声をあげるおもちにボスは顔を上げ、
「爆発した?」
ボス?????
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