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<家庭医、総合診療医、救急医のための整形外科的トレーニング>症例27 58M 右下腿痛
はじめに
このnote記事は「フローチャート整形外科診断」を書き散らかしたふじたつが、外来で経験した典型的な症例を用いて、恐れ多くも家庭医、総合診療医、救急医のためにトレーニング形式でそのノウハウをシェアする場です。読者の方々と一緒に研鑽を積めたら嬉しいです。
アンカークリニック船堀では短期〜長期の整形外科外来研修を受け入れしています。興味ある医師の方はご一報ください!
◆ご覧いただきたい方
整形外科診療に携わるプライマリケア医
救急外来でWalk in症例を診る初期研修医
卒後3年目の駆け出し整形外科医
※3次救急というよりは地域の1次2次救急外来やER、クリニックなどを想定しています
※上記以外の専門医の方も「Advanced」の項目は是非見てみてください
◆解決する課題感
「肩痛や腰痛の患者さんを診る時にどのように対応してよいかわからない」
「膝痛を訴える患者さんで見逃しちゃいけない疾患はなんだろう」
などなど
このような課題を解決するために、冒頭紹介した書籍「フローチャート整形外科診断」に加え、本記事で追加の症例解説をしていきます!
なので、熟練の整形外科医にとっては当たり前の内容かと思いますが、
ただただ、わかりやすさを追求し、たとえ初めて整形外科疾患を診る医師でも「できる」内容として記載するように努めています!
ぜひこれから一緒に学べたら嬉しいです!
より短時間で確認したい方はこちら!
以下会話形式での解説です!
◆登場人物
R:アンカークリニックで研修する家庭医レジデント、医師5年目
O:アンカークリニックで指導する町の整形外科医
[症例27] 58M 右下腿痛
3時間前にフットサルをしていて、突然右ふくらはぎでブチっという音がして痛みが走った。その後少しプレーしたが、歩けないくらい痛くなってきたため夜間救急外来を受診した。
R:先生!これは肉離れでしょう!
O:まぁ、そうかな。一応フロー通りやってみよっか。
R:はーい・・・。最初は外傷かどうかですね。スポーツなんでスポーツ外傷ってことですよね。
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R:最初に4つ分岐がありますね。
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O:そうだね。足・足関節ではこの最初の3つの頻度が高いからこの分岐になっているんだ。これでいうとどう?
R:これだと左から3つ目の「踵や腓腹部に弾けるような感覚や音がしてからの腓腹部痛」ってところですね。
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O:そうだね。
R:アキレス腱断裂と腓腹筋挫傷ですね。
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O:ok。アキレス腱断裂はこの前症例26で見たけど、thompsonやアキレス腱陥凹はあった?
R:それが先生thompsonで腓腹部にぎろうとしたら内側に激痛があってできませんでした。陥凹はなかったです。
O:なるほど。それは腓腹筋断裂でいいね。痛いところはここでしょ?
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R:そうですそうです!
O:表だと身体所見では腓腹部の圧痛、把握痛ってなってるけど腓腹筋内側頭の断裂が全体の2/3で最多なんだ。
R:そうなんですね。次は検査ですね。超音波あててみます。
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O:腓腹筋内側頭とヒラメ筋の筋膜接合部での断裂だね。
R:ですね。ここが最多ってことでしょうか。
O:そうだね。
R:治療は痛み止めですか?
O:弾性包帯で圧迫してみて痛みが楽になるようならそのまま圧迫してもらうとよいよ。
R:やってみます!
▶︎Advanced もし自分が外来で診るなら〜腓腹筋挫傷(肉離れ)〜
受傷のメカニズムはアキレス腱と類似しているが保存治療が原則で、弾性包帯などで圧迫すると断裂箇所の改善が速いという報告がある。保存治療の注意点は拘縮予防でのストレッチで痛みに応じて腓腹部のストレッチングをしてもらう。概ね日常復帰までは1.5ヶ月から2ヶ月程度、スポーツ復帰までは3ヶ月程度を要する。Case reportで外科的手術の報告もある。私見だが、スポーツアクティビティの高い方、断裂が広範囲で早期仕事復帰を望んでいる方は専門家と相談してもよいのかもしれない。
<初期治療>
・疼痛コントロール(NSAIDs、アセトアミノフェン、PPI)
・弾性包帯などによる腓腹部の圧迫
PMID: 27618240
PMID: 16377485
PMID: 35854818
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