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【2-6 (1)】 循環器系 − リンパ系 解説

↑ 解剖学マガジン記事一覧(目次)

【2-6 循環器系 - リンパ系】
 ■【2-6(0)】リンパ系学習プリント
 ■【2-6(1)】リンパ系 解説(このページ)
 ■【2-6(2)】リンパ系 一問一答
 ■【2-6(3)】リンパ系 国試過去問

【2-7 上肢の脈管】

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− 学習のポイント −

1. リンパ系の全体像
毛細リンパ管(単層扁平上皮の内皮細胞のみ。盲端)
太めのリンパ管は静脈壁に似る、リンパ液の還流機構

2. リンパ管の走行
浅リンパ管と深リンパ管、リンパ本幹
小腸の絨毛:中心リンパ管 → 脂質 → 乳糜管に入る。

3. 全身のリンパ本幹
腰リンパ本幹と腸リンパ本幹の合流部 → 乳び槽 → 胸管 → 左静脈角、右リンパ本幹 → 右静脈角

4. リンパ系の器官
① リンパ節:リンパ節表面から多数の輸入リンパ管が入り、リンパ節の門から少数の輸出リンパ管がでる。
リンパ洞(細網組織)、リンパ小節(リンパ球が集まる)、リンパ小節の中央(胚中心:B細胞が集まる)
B細胞(抗体産生、液性免疫)、T細胞(細胞性免疫)
② 脾臓:赤脾髄(老朽赤血球の破壊)、白脾髄(リンパ小節)、脾動脈 → 中心動脈 → 筆毛動脈 → 莢動脈 → 脾洞
③ 胸腺:T細胞の教育を行う第一次リンパ性器官
④ 扁桃と集合リンパ小節:咽頭扁桃・耳管扁桃・口蓋扁桃・舌扁桃 → ワルダイエル咽頭輪、集合リンパ小節(パイエル板)は回腸下部に多い。

■ YouTube リンパ系解説

■ リンパ系とは

循環器系-26-リンパ系の全体像SQ

循環器系-26-リンパ系の全体像-SQ暗記用

リンパ系にはリンパ液を運搬するリンパ管のネットワークがあります。

そして、脾臓、胸腺、骨髄、消化管に付随したリンパ組織といったリンパ球の循環や産生を行う全ての構造を含みます。

▶ リンパ系の4大機能

① リンパ管系は静脈系と共に貯留している間質液や、身体の老廃物などを回収し、リンパ本幹を経て静脈角へと注ぎます。毛細血管では回収できない大きな異物も回収可能です。
② リンパ管にはリンパ節という濾過装置があり、異物や細菌を除去します。
③ リンパ系は、消化管で吸収された脂質の輸送に働きます。
④ リンパ器官から血液循環へとリンパ球を運びます。これにより局所でおこった免疫応答が全身性にひろがっていくことができます。

▶リンパ液とは

循環器系-26-膠質浸透圧と水分の移動:SQ

循環器系-26-膠質浸透圧と水分の移動:SQ暗記用

血管から血圧により、血液中の水分や電解質、糖やアミノ酸などが染み出て、組織液となり周囲を栄養いたします。しかし、血漿タンパク質は分子量が大きく、血管壁を通過することができません。

すると、血管内の血漿と、血管周囲の組織液を比較した場合、血漿のほうが血漿タンパク質が含まれる分だけ、濃い液体ということになります。

水が移動できる膜を境に、薄い液体と濃い液体が隣り合う場合、濃い液体は薄い液体から水を引き寄せる力が働きます。これを浸透圧といいます。

血漿タンパク質によって生じる浸透圧が膠質浸透圧で、25mmHgあります。

膠質浸透圧のおかげで、一度染み出た血液中の水分が、ふたたび血管内へともどってこれます。

毛細血管の細動脈側では血圧が35mmHgです。よって血圧-膠質浸透圧で35-25=10mmHg濾過圧となります。

一方、毛細血管の細静脈側では血圧は15mmHgしかありません。膠質浸透圧は変わらず25mmHgなので、15-25= -10mmHg が濾過圧となります。マイナスなので、再吸収の力として働きます。

血管から染み出た液体の90%が毛細血管へと再吸収され、10%がリンパ液として毛細リンパ管に回収されます。

▶ 浮腫について

循環器系-26-浮腫を見分ける注意点-SQ

リンパ管による回収能力を超えて組織液が貯留した状態を水腫といい、皮下にこの貯留が起こると浮腫となります。

浮腫の有無をみるには、上肢や下肢の場合、左右の大きさや、静脈、腱、骨の浮き出しに注意します。

圧痕浮腫の確認では、指で5秒間しっかり丁寧に押してみます。

正常では圧痕(右)はみられませんが、浮腫がある場合は、指の跡が残ります。

▶ 全身性浮腫の要因

循環器系-26-全身性浮腫の要因-SQ

循環器系-26-全身性浮腫の要因-SQ暗記用

全身性浮腫の要因についてみてみます。

臓器でいえば、心臓腎臓肝臓が悪くなると全身性浮腫が生じます。

何故か?を理解してください。毛細血管網の静脈側は血圧が15mmHg、膠質浸透圧は25mmHgあります。よって、
15-25 = -10mmHgが毛細血管の静脈側の濾過圧です。マイナスなので、再吸収が働きます。

心不全などで、心臓のポンプとしての機能が低下すると、静脈血が戻りにくくなり、静脈圧が上昇します。

たとえば、毛細血管の臍静脈側の血圧が15mmHgから20mmHgとなったとします。

膠質浸透圧は25mmHgで変わらないので、
20-25 = -5mmHgとなります。

静脈圧が15mmHgから20mmHgに上昇するだけで、再吸収の力は-10より、-5と半分となってしまいます。

心臓性の浮腫の場合は、重力の影響のため下肢に生じやすいという特徴があります。

腎臓が悪くなっても、浮腫が生じます。腎炎ネフローゼ症候群ではタンパク尿で尿中にタンパク質が出てしまいます。すると低タンパク血症となり、膠質浸透圧の低下が生じます。

通常、膠質浸透圧は25mmHgですが、これが20mmHgに減るとどうでしょうか。細静脈側の血圧15mmHg - 20mmHgで、-5mmHgとなります。膠質浸透圧が25から20に低下するだけで、組織液を再吸収する力は半分となってしまいます。

腎性の浮腫の場合は、上眼瞼より生じやすいという特徴があります。

肝臓が悪くなっても、全身性浮腫となります。血漿タンパク質の多くは肝臓でつくられます。肝機能の低下により血漿タンパク質の産生能力が落ち、低タンパク血症となります。あとは、同様に低タンパク血症は膠質浸透圧の低下を招き、浮腫を生じさせます。

また、肝硬変では門脈圧の上昇により腹水を伴うことも特徴です。

低栄養でも浮腫が生じます。飢餓や過度のダイエットによる低タンパク血症が原因です。

ホルモンバランスの失調によっても浮腫となります。甲状腺機能低下症の他、月経前などにみられます。

■ リンパ管の構造 - 毛細リンパ管

循環器系-26-毛細リンパ管-SQ

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