起業家という道を経て、今は作家を夢見て執筆活動に明け暮れる橋本なずなです。
デート前夜の女の子は忙しい。
「 ねぇねぇ、青か白どっちが良いと思う? 」
ハンガーに掛かった二着の洋服を身体に合わせながら、リビングでくつろぐ母の前に立つ。
『 んー、白かな? 』
「 分かった。じゃあ青にしよっと 」
なんやねん、と母が笑う。明日は一目惚れした彼とのデートだ。
デートなんて言っても食事に行くだけだけれど、約束をしてからの数日間、日課のジムに少しの食事制限も加えて、新しいお化粧品とアクセサリーを買って、スキンケアは念入りに、毎晩眠る前のマッサージも怠らなかった。
自分を美しく見せる為の努力は、私が女性として生きるうえでのプライドのようなものだ。
「すべての女性がそうするべきだ」とか「美しくなければ意味がない」とか思っているわけではない。
ただ私がそうしたい、美しく在りたい、と思うだけだ。
ひとしきりの準備を終えた私は、おもむろにInstagramを開き日中に更新した自分のストーリーを見返す。
「 ん…? 」
私の目に留まったのは、見覚えのある名前だった。
Instagramのストーリーには足跡機能がある。誰がそのストーリーを閲覧したかが分かるものだ。
見慣れた友人やフォロワーさんのアカウントの羅列の中に、一目惚れした彼・・・が、働いているお店の店長さんの名前があった。
私はまだ彼にも、もちろん店長さんにも、普段の活動やこれまでについては話していない。
「 作家志望で小さな会社を経営している 」その程度の話しかしておらず、出版しているとか、女性向けプレジャーアイテムブランドのアンバサダーをしているとか、詳しいことについては追々話せたら良いと思っていた。
しかしこの日更新した4つのストーリーは、どれも私の過去について。
二作目の出版を目指して “ビッチだった私のこと” を振り返っていて、過去に書いたnoteの再投稿をしていた。
あちゃー…と思った。よりにもよってビッチだったなんてストーリーを、彼のお店の店長さんに見られてしまうなんて。
店長さんが私に興味があって見たとは思えないし、きっと裏には彼がいたのではないかと思う。
彼が自分のアカウントで足跡を付けたくなかったからなのか、店長さんが俺が見てあげるよとか何とか言ってノリで見たのか。
経緯を考えたところで見られた事実は覆らないのだけれど。
きちんとnoteの中身を読んでもらえれば “ビッチ” という言葉が持つ悪い印象も幾分か解消されるかもしれないけれど、店長さんはどこまで見たのだろうか。
そんなことを考えていると、明日を思うとワクワクして今にも踊り出しそうだったさっきまでの心が、空気の抜けた風船のようにシューーと萎んでいくのが分かった。息も徐々に浅くなる。
「 あ… 」
その時、頬の斜面に沿って静かに流れる涙に、私はすべてを悟った。
思っているよりも、私は過去を知られることに恐れがあるんだ。
なぜなら思っているよりも、私は彼のことが好きだからだ。
「 恋じゃん 」
「 めっちゃ好きやん、私、彼のこと 」
小さく呟いて、涙に濡れた目元を手のひらで覆う。
おかしいな、まだ彼のことを何も知らないのに。本当に私は惚れっぽいな。
両親の離婚や兄の家出、性的虐待にビッチだったこと ——— 4年前、初めてnoteに書き綴った日から私は腹を括っている。
恥ずかしいことも汚いことも、すべて包み隠さず語ろうと覚悟を持って活動をしている。
“リアリティ” や “ノンフィクション” が持つ力を、私は信じているから。
だから普段なら寧ろ、私のことをどんどん知って欲しいとすら思う。
新しく出会った人には進んで私の活動やnoteを読んで欲しいと思っているし、そもそも私自身が自分のことをペラペラと語っているだろう。
だけど今の私はとても保守的で、先に情報を入れないで欲しいし、先入観を持たないで欲しいと思っている。
きちんと私の口から語らせて欲しいと思っている。
過去を知られることに恐れるなんて、これまで無かったのにな。
——— 曇り空の朝だ。こめかみの痛みが低気圧であることを知らせる。
私は寝惚け眼にのそのそと支度をしてジムに向かう。昨夜の涙で浮腫んだ顔は、汗を流して切り替えよう。
今夜、彼の瞳をきちんと見られるだろうか。きちんと言葉は出てきてくれるだろうか。
屈託のない彼の笑顔に、私は応えることができるだろうか。
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