
ミライノオトモニターN0.7「ない、が、ある、に変わる時」
日が落ちていくこの時間の、空の色がとても美しく感じる。
あっという間に太陽は下の方に落ちていき、夜の暗さの割合が増えていく。その、刻々と変わっていく空の色につい見とれてしまう。
もう2度と見られないものをこの瞬間感じているし、どこからか夜のとばりが降りる音が聞こえてきそうな気もして。
少しさみしい感覚があるのと同時に、この人が今隣にいてくれてよかった、と思えることに、体が思わずふるふると震えてしまいそうな感覚が起こる。
「どうしたの、寒い?」
そう言いながら、彼は繋いでいた手をそっと離して、肩を抱き寄せてくれる。
どうやら、実際に震えてしまっていたらしい…。
恥ずかしい気持ちがないわけではないけれど、どんな私も彼には見せていいと思えている自分がいる。
「ううん、寒くない。なんか、こう…感動しちゃって」
「ああ、この空の色?こういうのって、もう見られないと思うと、なんかジーンとすることあるよなあ」
こういう感覚が似通っていることに、やっぱり嬉しさを感じるとともに、驚きも感じる。たった数ヶ月前はこうなることなど予想だにしていなかったから。
彼と出会ったのは、普段なら絶対に行かないような集まりだった。
友達の、友達のさらに友達くらいの遠い繋がりの人が通っているあるコミュニティ。
今の私がいる環境とはもう、真逆としか言いようのないところだ。
ゆるいコミュニティでの集いは、最初はなかなか慣れることができなかった。
なにせ、みんなが自由すぎて全くまとまりがない。
集まる時も、集合時間はあってないようなもの、自由に来て自由に帰る。
楽しければいつまででもいるけれど、飽きたらすっといなくなる。
自分の意見をガンガンいう人もいれば、全く柳に風という人も居て、正直カオスにしか見えない。
だけれども、不思議と深いところでの繋がりがあった。
誰かが困っていれば、誰かが手を差し伸べるが、それが自然で無理がない。
自分のやる範囲以上は背負わずに、本人がなんとかするのをほんの少し手助けするような感じ。
みんな自分勝手に過ごしているのに、誰も無理をせずにいる。
そして、基本的にみんながそれぞれ楽しそうである。
なんとも不思議な場所に足を踏み入れたものだ。
自分の立ち位置がまだ掴めていない時、声をかけてくれたのが彼だった。
正直、「ないな」と思った。
今では笑い話だけど。
今までこんな人がいいな、と思っていた想像からは、何もかもかけ離れていた。
だからと言って、嫌ではない。
嫌ではないけれど、「ないな」という感覚だけはある。
そんな感じだった。
だからかもしれないが、彼の前では自分を良く見せようとか、こんな風に思われているかな、とか、そんな気遣いのようなものが最初から全くと言っていいほどなかった。
ここの人たちがそうしているように、自分に正直になる空気に感染してしまったかのような感じ。
いつの間にか、素でしかない自分がここにいた。
そして、同時にどんどんと、自分の観念が書き換わっていく感覚を覚えたのだ。
密かな内側の改革が激しく起こっていたと同時に、私の外見もどんどんと変化をしていった。
今まで言われたことのないような言葉をもらうことも多くなった。
そして自分でも「綺麗になったな」と思うことが格段に増えると同時に、さらにそこに磨きがかかっていく。
ちょっとした素振り、表情、身のこなし。
以前はそう目につかなかった方達のそれが、どんどんと入ってくるような感じがしていて、そうして書き換わっていく自分が面白くて仕方ない。
そう思っていたせいだろうか、「ないな」と思う彼の私に対する態度が、徐々に変わってきたのだ。
彼の視線に熱を感じるようになった。
それと同時に、自然に距離が縮まっていく。心も、体も。
あんなに「ない」と思っていたのが、なぜだか思い出せないくらいに、私も彼と同じくらいの熱を纏うようになっていった。
不思議だ。
人を好きになるときは、何か特別なものが必要なのではないかと思っていた。
しかし、そうではなかった。
あまりにも、自然に流れるように、ここにたどり着き、そしてこの先へは二人でいきたいと思うようになった。
「ない」と思った彼と触れることで、私の中にも「ない」と思っていたものが、引き出されていく。
私は、こんな顔をするのか。
こんな声を出し、こんな素振りをして、こんな香りを振りまいているのか。
知らなかった私があふれてきて、毎日驚くことしきりである。
いや、知らなかったわけではない。
きっと、奥深いところでは知っていた。
だけど、見ることをしていなかっただけだったのだ。
彼にとっても、私は「ない」人だったらしい。
そんなところも同じだったのかと思うと、なんだかこの関係が笑えるものでしかない気がする。
笑いは、最強だ。
全てをひっくり返す力がある。
それが二人の間に流れていることを、とっぷりと暮れた夜の色の中で、お互いの体温を感じながら噛みしめる。
言葉はもう何の役にも立たないことを知った。
ただ、この感覚をこれからも追い続けるということだけを、私たちはしていく。二人の人生を編み合わせていくように。
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「ミライノオト・モニターシリーズ」
MIERUKAアーティストAKARIが綴る、
お申込みくださった方の「勝手な未来の妄想ストーリー」
今回は看護師をされている方から、
「恋愛」に関してのストーリーのご依頼でした。
モニター募集時の記事はこちら
https://resast.jp/events/YjkwYzc3NWQ4M
<追記>
本募集が始まりました!
小さな本のタイプと、動画タイプをお送りしています。
現在こちらで受け付けています。
https://resast.jp/inquiry/ZjI3OTgyNzQwM
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以下は、お申込みくださった方のご感想です。
・今回お申込みいただいたきっかけ、何にピンと来たかなどお知らせください。
現状の外側のゴールを見せてもらえる気がしたからです。
・届いた妄想ストーリーのご感想をお願いいたします
最初の景色を眺めている所は、一緒に震えてしまいました。過去にもそうやって今日今この時しか見れないと思うと震えた事がよくあったのです。 そこに大切な人が共にいるのはまさに望む景色でした。 自分のないが変わっていく、、、なんだかグサグサと刺さってしまいました笑 こんなゴールも叶えられるのかと思ったら、RW楽しみたいなと、よっしゃー‼︎‼︎というテンションではなくて、やれるさーくらいの軽くてふんわりした感覚を覚えました。これがまた不思議な感覚でした。 ありがとうございました^^
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モニターのご参加ありがとうございました。
未来への一つのヒントとなりましたら幸いです!
この度は本当にありがとうございました^^
さらにミライへ、そのオトを聴きならがら。
MIERUKAアーティストAKARI
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