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ミライノオトモニターNo.20「そこはもう、知っている場所」

目を開けると、目の前に白い扉があった。
重厚なアンティークの扉には、珍しい取手がついていた。
鈍く光る黄金色、緻密に装飾された植物と龍のモチーフ。
豊穣、という言葉が浮かぶが、それがどうにもチープな感じに聞こえてしまうほど、その存在感は圧倒的な光を放っていた。

そっと取手に手を添えてみると、ぞわっ、と体が震え、下腹部からじわりとした感覚が始まり、それが全身を駆け巡り、わたしを包む。

その体感を存分に感じながら、手にそっと力を入れ、取っ手を押してみる。

意外なほどするりと扉はわたしを迎え入れ、半ば押し出されるように、次の間へと体が入り込む。
パタン、と扉が閉まる音と共に、後ろにあった今までの世界の気配はすっと消え去った。

また、見知らぬ場への移動に、ただ身を任せる瞬間が訪れていた。

足元に視線を落とすと、美しい絵が描かれた床が目に入る。
繰り返される花のような曼荼羅のようなモチーフは、限りなく続くかのように、長い長い廊下を埋め尽くしていた。
どこからか、胸の内側が開くような芳香が漂ってくる。
その香りがどこからくるのかを探したくて、私はゆっくりと一歩を踏み出した。

コツ、コツ、コツ…と響く自分の靴音が、何かの合図のように聴こえてくる。
命を紡ぐ心臓のような、はたまた運命の輪を回すような、規則的だけど不意にリズムが変わる気配もするような、不思議な音が体の細部に染み渡る。
そしてそれらはわたしの体の中で、まるで喜びの歌のような音をたてながら、小さく弾けていく。

香りの元はここだろうな、と感じる廊下の終わりには、厚い真紅のカーテンが次の間の扉のようにぶら下がっていた。
いったい、窓何枚分くらいあるのだろう?
その先が見えないほどに左右にはまた廊下が広がり、あるはずの光を遮っていた。

そう、あるはずだ。
だって、カーテンの向こうからは、じわりと熱い気を感じるから。

どんな光なのか、見てみたい。

そう思った瞬間に、全てのカーテンが勢いよく上に上がり、窓の外にあるバルコニーから、溢れんばかりの粒が身体中に飛び込んできた。

近代的な建物と、伝統的な建物が混在した街が、まばゆい色に包まれている。
じっと見ていると、目の前の中央部分から放射線状に光の色が変わっていき、それと同時に風景も変わっていく。
それは、いままで見たことのない美しい光景だった。

ここは、知らない場所のはずなのに、もう既に見てしまった場所であったと気づいた時には、わたしがまたわたしでなくなった。



「それで、この案件なのですが」

という声で、わたしはここに戻ってきた。

落ち着いた色でまとめられた小さな部屋で、わたしはビジネスパートナーと向き合っていた。
目の前のタブレットがやんわりと、しかし力強い光を放っている。


「はい。それなんですが、ふと閃きまして…」

ご依頼いただいていた案件があり、当初予定していたものをご案内するつもりであったが、先程の旅路がわたしをまた別のパラレルへ移動させた。
そこから見た世界は、もっと広く美しい光景が広がっていたのだ。

故に、当初の予定からは大幅に変更することにした、というよりは、せざるを得なかった。
だって、見えてしまったのだから。

わたしの新しい案を聞いた彼は、ふうっ、と小さな唸り声を上げて

「いつも、どこからそんなアイデアを思いつかれるんですか?」

と、少し焦ったような早口で聴いてくる。

それにははっきりとは答えず、ふふ、と意味ありげに微笑んでみる。
目の前の彼は、参ったなぁ、というように半笑いの顔で少し首を傾げながら、顎をすりすりと触る。
それを見て、ああ、この案件は思う以上に上手くいく、と確信する。
彼のこの癖が出たときは、そのサインなのだ。

「では、これで先方さまにはご提案してみましょう。
きっと驚かれますね…おそらく想定外のご提案になるでしょうから」

「そうですね、どんな風になっていかれるのか…楽しみです」

あの、見たことのない景色のようなものが広がるのだろうと思いつつ、今日の打ち合わせはこれで終了した。


時計を見ると、迎えが来るまでの時間が迫っていた。
少し急ぎつつ、着替えとメイクを手早く済ませたところで、タイミングよく連絡が来た。


今日はリムジンでのお迎え。
ゆったりとした車内から外に目をやると、イルミネーションで煌びやかに装飾された街路を、幸せそうに歩く家族の姿が目に入る。

こんな風に、笑顔で大切な人たちと共に過ごす方が、それこそ限りなく増えていきますように。
いや、増えていくしかない、と思う。
だってわたしはそう確信しているのだから。

到着した先は、この街で長らく愛されている古城であった。
ここで世界を股にかける角界の著名人たちが集まるシークレットなパーティーに招待されたのだ。
エスコートしてくれた方が手をかけたのは、あの時に見た美しい装飾が施された黄金色の取手であった。


ほら、そうだったでしょ?


どこからともなく聴こえてくるその声に、ひとり静かに笑みを浮かべながら、眩く輝くとりどりの光と豊かな音の波の中へ、わたしは遠慮なく体を滑り込ませる。
その豊かさが私を包んだなら、私につながるもっともっと先の人たちへ広がることを、もう知っているのだから。



「恐れるな、前を向け
轟かせ、響き続けろ
その振動で、世界を揺るがせ」


このストーリーを後押しするアートを描かせていただきました!

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「ミライノオト・モニターシリーズ」
AkariIが綴る、
お申込みくださった方の「勝手な未来の妄想ストーリー」
今回は、おまかせで!とのご依頼でした。

以前のモニターは文章とアートをメールでお届けしていましたが
今回の分は
小さな本のタイプと、動画タイプをお送りしています。
本募集もこの2タイプです。


現在、優先枠募集中です!(11月23日まで)
詳細はこちらから
https://www.reservestock.jp/inquiry/89927

上記は終了しました。
現在こちらで受け付けています。
https://resast.jp/inquiry/ZjI3OTgyNzQwM

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<ご感想を頂きました>

ミライノオトありがとうございます。

受け取った時、ふわっと軽やかな感じと、ふわっと明るい楽しい感じが入り混じっていました。
その感覚を味わい、感じつつ、ワクワクしながら封を切るとふわっと未来へ引き込まれるというよりも未来へワープした感じになりました。

冊子を見ながら、あかりさんの声を聞くという贅沢な空間を味わいながら、もうその世界にいるかのような感覚、もう、それは、過去なのか、今なのか、未来なのか?
でも、そこは知ってる場所のような気がしました。

まだ、見ぬ続きも想像ができ、最後も想像した感じのものとなり、あかりさんが感じてくださる私の未来と私が感じた未来が一緒でとても嬉しく思いました。
とても優雅な贅沢なひと時をありがとうございます。

最後に直筆で書かれているメッセージは、とても嬉しく、そのメッセージからは『ゆらぎを世界へ』と私には感じ、これからしていくこと、するべきことが、明確になりました。

以前にもいろんな作品をいただき、今も飾ったり持ち歩いたりしていますが、いつも飛躍する前触れのような時にベストなタイミングで届きますので、今回もきっと、そのタイミングで届いたのだと思います。

あかりさんの作品は日に日に表情を変えてくれるので、また、ふと思った時に聞いたり読み返したりしようと思います。 今日、初めて読んだ感覚とはまた違うギフトがいただけそうです。

ミライノオト大切にします。 ありがとうございます。

(Naoさん)

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モニターのご参加ありがとうございました。
そして以前のアートも持ち歩いてくださっているとのこと
本当にありがとうございます。

動画と冊子の両方をご体験いただき
それぞれの味を体感していただけたとのこと!
未来への一つのヒントとなりましたら幸いです。

この度は本当にありがとうございました^^

さらにミライへ、そのオトを聴きながら。

Akari

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現在、優先枠募集中です!(11月23日まで)
詳細はこちらから
https://www.reservestock.jp/inquiry/89927

※11月24日に、正式に募集始めます。

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AKaRi
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