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私らしくいるためのエッセンス

寅さんを観続けてもうすぐ20年。たくさんの人に『男はつらいよ』を観てほしいという思いから、依頼いただいた内容をもとに好みや性格をお聞きし、おすすめの3本をご紹介します。


依頼者からコンシェルジュへの希望

依頼者プロフィール
Mさん 地域コーディネーター 40代女性 寅さん鑑賞経験なし
 
自分の枠で決めつけない新しい出会いがしたい!
普段なら、自分の好みは自分で選ぶけど、自分以外の人が選んだものと何でもいいから出会ってみたい。人が選んでくれるという占い的要素も楽しみです。
私の好みに加えて「こんなエッセンスがあったら楽でいられる・私らしくいられるもの」を知りたい。
今はピンと来なくても、10年後「あのときのあれ!」と記憶がよみがえる出会いになるかもしれない。自分に愛情をもって選ばれたものなら、何でもいいと思っています。

マドンナは意志が強く自立した女性

 
Mさんは芯が強く、ご自身の意見を持っている強い女性という印象がありました。起業、ボランティア活動をしながら育児もされており、幅広い世代のさまざまな方とも交流されている点から、マドンナは、同じく意志が強い人や仕事をして自立している女性がいいのでは、と考えました。
マドンナとは、『男はつらいよ』に毎度登場する寅さんの想い人です。作品の大きな要素を担っています。マドンナは作品によって異なり、魅力もさまざまです。一世を風靡した大人気女優の作品もあります。
Mさんは、『男はつらいよ』を鑑賞されたことがなく、特に作品の指定はなかったので、ファンの間でも評価の高い作品から上記にあてはまる作品を選びました。

個性豊かな女性の存在から感じてほしい

以下作品の詳細を記述します

① 第11作「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」

公開:1973年 
マドンナ:浅丘ルリ子 
ロケ地:北海道網走

あらすじ:夜汽車で人知れず泣いていた売れない旅回りの歌手リリー(浅丘ルリ子)と寅次郎が出会う。二人とも「社会にとってはどうでもいい存在」であると意気投合。はっきりとものを言うリリーと寅次郎は相性抜群で…?

Mさんは、マドンナ・リリーとの相性がいいのでは、と考えました。リリーは、売れない旅回りの歌手で、男勝りな性格。初めて「男はつらいよ」を観る方には好き嫌いが分かれるのではないでしょうか。そんなリリーの個性や、時折感じさせる弱さをMさんは受け入れてくれるのでは、という期待も込めました。
 

② 第17作「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」

公開:1976年 
マドンナ:太地喜和子 
ロケ地:兵庫県たつの

あらすじ:一文無しで飲み屋にいた小汚いおじさん(宇野重吉)を寅次郎は、親切に家に泊めてやった。実はそのおじさんは画家で、その場で描いた絵を「売ってきてくれ」と寅次郎に頼みこみ…。
播州たつのの古き良き町で繰り広げられる、それぞれの人生の行方は?

「寅次郎夕焼け小焼け」の決め手となったのは、ぼたん(太地喜和子)の芯の強さとMさんの強さが重なるということ。ぼたんは借金を抱えながら芸者として稼いだお金で家族を養っています。人に騙されても、めげずに強く明るく生きる姿は、とても美しいです。また、Mさんはアーティスト活動をされており、寅さんの友人で画家である青観先生(宇野重吉)への視線も特別なものになるのではと考えました。青観先生は、日本を代表する画家でありながら、家族との関係は良好とは言えません。昔の恋愛にも未練があるようで、若い頃の恋人と会話する場面は、「後悔」について考えさせられる名シーンです。この作品は、ファンの間で完成度が最も高いと言われており、そんな作品をぜひ観てもらいたかったのです。
 

③ 第28作「男はつらいよ 寅次郎紙風船」

公開:1981年 
マドンナ:音無美紀子 
ロケ地:福岡県秋月

あらすじ:寅次郎は、病気で伏せている商売仲間から「俺が死んだら妻を頼む」と言われる。帰り際、病人の妻・光枝(音無美紀子)から「主人はもう長くない」と打ち明けられ…。美人の光枝と寅次郎の関係は進展するのか。一方、寅次郎の旅についてくる愛子(岸本加世子)は、家出したじゃじゃ馬娘で…。

「寅次郎紙風船」では、寅さんと同業の男性の妻・光枝が気丈に働く姿が印象的です。寅さんの職業は、テキヤ。つまり光枝の夫も収入は安定しないなか、二人は生活をしていました。そして夫は病死します。「俺が死んだら妻を頼む」と言われていた寅さんは、光枝を支えることができるのでしょうか。また、この作品には、マドンナ以外に愛子という家出した女性が登場します。寅さんの旅につきまとい、わがまま放題の愛子をもMさんは理解してくれるのでは、という「寅次郎忘れな草」同様の期待がありました。
この二人の女性を通して『男はつらいよ』の奥深さを感じてもらえたらいいなと思いました。 

Mさんより感想をいただきました


「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」

倍賞千恵子さんがとてもかわいい。さくらは真っ当な妹で癒された。作品を通して「しょうがないわね、お兄ちゃん」という価値観があり、包み込まれている心地がする。寅さんは不快な行動がなく、イメージしていたより上品だった。リリーは最後幸せになり、表情が変わっていて良かった。デジタルデトックスができてとてもすっきりした。鑑賞後スマホを触ったら違和感を持ったほど。

「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」

夕焼け小焼けの歌詞と老画家の思いが重なる。昔の恋人は芸者だったのかな、と考えを巡らせた。画家は、立派な肩書はあるが「自分とは何なんだろう」と自分の存在意義を問いながら生きていて、ある日、どうしてもと懇願されて絵を描くことになるがそれは、肩書で人を見ている役所の人のために描いたのではなく、自分のありのままを唯一見てくれていた芸者ぼたんに向けて絵を描いたのだろうと感じた。作品を鑑賞すると没頭して現実を忘れることができた。
 

「男はつらいよ 寅次郎紙風船」

同級生のクリーニング屋さんをばかにした寅さんを、さくらはもっと叱るべきだったのでは、と思った。光枝さんは寅さんを好きで、主人の頼みを「迷惑ですよね」と言いながらも寅さんの反応を見ていた。寅さんも本当は好きだけど、ひいてしまう。全体として、寅さんは常識を持って落ち着いていた。
 

全体を通しての感想

昭和につくられた画質の悪い作品は苦手だと思っていたが、楽しむことができた。もっと初期の作品や、弱さを抱えるマドンナの回を、今後観てみたい。
 

コンシェルジュを終えて

今回が初めてのコンシェルジュとなりました。
単に自分が好きな作品ではなく、その方の求めているものを紹介するのは、難しいですが、とても楽しいです。Mさんは、映画の世界観に没入することでデジタルデトックスができたことや、さくらの人間性に着目されていました。そんな感想をもらい、私もいつもとは違う視点で寅さんを考えることができました。Mさん、ありがとうございました。



編集:大橋あかり


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