
日本ゴリラ化計画
Lカツをカップルのなか噛む夜のゴーゴーカレーで小さく吠える
詠題『ウホッ』10月26日15時部屋
ゴーゴーカレーを知っていますか?
その夜、色々気落ちすることが重なった私は食べて元気を出さなきゃとゴーゴーカレーに入った。
先客として地元大学のサッカー部員らしき集団がいるだけで、彼らは賑やかにそのブラックホールの胃袋にカレーを流し込んでいた。
ゴーゴーカレーは部活の学生の他に、よく限界中年男性やぼっち男子大学生も利用していて、バカ舌で大抵の食べ物をうまいと思ってしまう私にしてもおいしいお店である。
食券機で購入してしばし待つ。ホールには男ひとり女ひとりの大学生らしきバイトがいて、私に配膳したらもうサッカー部が食べ終わるまでは手持ち無沙汰らしく二人で囁き合ってクスクス笑い、互いに小突き合っていた。
マックの合理的経営ならどちらか、早上がりさせられてしまうのかな、と思いながらカレーを食う。
(ここで、ゴーゴーカレーを知らない人は下記記事をご覧ください。私が知る限り一番詳しく偏っている記事です)
二人はカップルなのかな、それとも只のバ先の同僚だとしてもそんな親密なコミュニケーションをするのかしらん……と思いながらフォークを口に運ぶ(※スプーンではなくフォークがデフォルトです)
隣の部員たちも相変わらずワイワイガヤガヤと楽しそう。私は進学していなくて、でももう時と共に嫉妬心は消えていたが、何故かその晩は「大学生はいいな」という思いが湧いてきた。しかしそれと同時に、ぼっち男子大学生として同じカツカレーをさみしく食っていたよ、例えお前が大学に行っていたとて……という予想がそれを打ち消した。
福神漬けを投入して味変したあと、ふと店内の看板ゴリラと目が合う。雌雄はわからねど、同じ霊長類ながら、かたや家族を形成し群れで暮らしているこのゴリラと、こなたカツカレーをひとりでもくもく食べているこの私。いつしか手元のカレーはまるでチーズトッピングをしたかのようにだんだん塩気が強くなっていた(※CoCo壱もそうだけれどトッピングすると意外に値段は高くなります)
涙のしょっぱさを中和するためにキャベツをおかわり(※無料です)してから、店を出て夜空を見上げる。月が出ている。
キャベツはまたSメチルメチオニンにより揚げ物の脂の消化を助けることだろう。ドラゴンボールでは孫悟空は満月の晩に巨大猿にパワーアップするらしいのだけれど、私はサイヤ人ではなくただのちっぽけなホモサピエンスである。
私に何ができる?
私は何もわかっていない
何も持っていない
知っている。
例え今から始めてももう遅いかもしれないけれど……。

噛みついてみたいそれでも。
噛みつける?Lカツよりも確かなものに。
霊長類として小さく吠えてみる。駐車場から見る満月に。
「ウホッ🦍」
※短歌内で文字数削減のため使用した「Lカツ」という呼び方はライバル店のチャンピオンカレーの意味を帯びますので、石川県へ御来県の際は略さないで言うほうが無難です
※この文章はフィクションを含みます
11月20日追記
ぺらふぇす参加のため読み直したら1月前の自分の卑屈さにゾッとしました。
