パイロットの持ち物を紹介しまくります。
パイロットのバッグの中身を見せてもらいました!みたいな記事を、たまに航空関連の雑誌やインターネットの特集で見かけることがある。黒くてでっかい四角いカバンの中に、チャートやライセンスや鹿革のグローブやヘッドセットなんかを整然と詰め込んで、コックピットの中でいつでも取り出せるようにしている、みたいな記事だ。あの黒いバッグはあこがれだった。
でも、最近自分がパイロットとしてラインオペレーションをするようになって、なんだか想像していたものと持ち物がだいぶ違うということに気づいた。ので、需要があるかどうかさっぱりわからないが、私のパイロットバッグの中身を開陳し、紹介したいと思う。
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まず、バッグだが、てっきり会社からかっちょいい黒い四角いやつを支給されるのかと思いきや、個人持ちだった。そもそも、あの四角い箱は「アプローチチャート」とか「AIP」と呼ばれる、辞書みたいに分厚い書類を数冊入れるためにあれだけのスペースになっているのだ(と推察する)。
でも、最近は、EFB(Electric Flight Bag)といって、そういう書類系の一切をタブレットに入れているので、そんなに大きなカバンは必要ないのだ。入社前にあの例のやつは支給されないらしい、ということは知っていたので、日本に一時帰国した際に三井アウトレットパークで大幅値引き!していたace社のかっちょいいビジネスバッグを使っている。
リンク先を見てもらえばわかるが、シンプルな形で非常に軽く、いざというときにファスナーを広げて少し膨らむやつがよかった。そして、中身はこんな感じ。
ハイビズベスト(機体の外部点検に使う)
ライセンス(法律により携帯義務あり)
パスポート
予備眼鏡(法律により携帯義務あり)
財布
小物入れ(友人にもらったスターアライアンスの機内ポーチ)
キンドル
非常用宿泊道具(下着類、髭剃り、歯磨きセット、予備ネクタイ)
モバイル機器の充電アダプター、バッテリー、コード類
サーフェスGO
軽食入れ(ホテルの部屋からパチってきた茶とか菓子とか)
ポケットティッシュ
サニコム(除菌用アルコールシート、会社支給)
ペン(コクピット用はワイヤー付きにしてる)
書類(勉強用、トレーニング用)
チャート
般若心経の書いてある手ぬぐい
なんだか雑誌でやってたパイロットとは違って、やたら生活感にあふれた品が多いと感じる。実際、ハイビズとライセンスと予備眼鏡とチャートを抜かしたら、普通に仕事で出張に行く人のバッグの中身とそんなに変わらないのではないか。パイロットといえど、飛行機を降りたらただの人、である。ホテルでどんだけ快適に過ごせるか、ということに主眼が置かれているので、当たり前か。まぁ、最も謎なのは「般若心経が書かれた手ぬぐい」だと思うが、これについては長くなるので別記事としよう。
このバッグは、コクピットに座ったら自分のすぐ右隣りにあって、資料、サニコムやハイビズベストは決まった場所に入れてあらかじめファスナーの口を開けておき、すぐに取り出せるようにしてある。コクピットで実際に使うチャートやAIPは飛行機に最新版を会社が備え付けているので、自分のカバンに入れる必要はない。自分持ちのエンルートチャートは予習用に個人的に携帯しているだけで、飛行中には使わないし、夜間の点検用の懐中電灯は強力なやつがこれも飛行機についている。また、ヘッドセット(マイクとヘッドフォンが一体になったもの。機内外との交信に使う)も飛行機についていて、それをサニコム(アルコール消毒用シート)で毎回拭いて使う、ので、これも携帯する必要がない。
余談だが、昔、確かまだ幼稚園児だったころ、電車の運転手になりたくて、彼らが木製のマイブレーキハンドルを持っているのに強烈にあこがれた時期があった。軽飛行機のインストラクターだったときは、マイヘッドセットがマイブレーキハンドルに思えてひそかに少年時代からのマニアックな願望を満たしていたのだが、それも過去の話になった。また、日本のパイロットは鹿革の白い手袋を持っていることが多いと聞くが、こっちではそれを使っている人を見たことはない。
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非常用宿泊セットというのはどういうことかというと、私の仕事は基本的に1泊2日が多い。宿泊するので、着替えやら何やらを上のバッグとは別のスーツケースに入れて、バッグ2つで仕事をしていることになる。つまりこういうこと。
が、ごくたまに、ホテルに泊まらず、ベースに戻ってくるのみ、という日もある。そういう日はわざわざ宿泊道具を持っていかないので、上のバッグ一つでいくことになるのだが、例えば、機材故障や天候不良などで最終便が飛ばないということも考えられる。そういう時は会社がホテルを手配するはずだが、宿泊用の荷物を持っていないので難儀する。特に、歯ブラシは重要だ。海外のホテルでは、使い捨ての歯ブラシが備え付けられていないことがほとんどなのだ。そういうときのために、下着や歯ブラシなど、最低限の清潔さを保つための品を小さな袋に入れて携帯しているというわけだ。
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パイロットに必須のサングラスとか時計とかの小物類はどうしているのかというと、バッグには入れず、仕事中は主にシャツの胸ポケットに入れている。時計はもちろん腕に巻いている。仕事が終わってホテルに着いたら、散らかってなくならないように帽子を小物入れとして使う。
帽子の背景の黄色い布は風呂敷だ。デッドヘッド(パイロットが客室で移動すること)で私服移動の場合、この状態のまま風呂敷で帽子を包み、制服と一緒にスーツケースにしまう。たとえスーツケースがいっぱいで入らなくても、風呂敷があれば小さな手荷物として機内に持ち込めるので重宝する。
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時計について。パイロットがする腕時計というと、IWCとかハミルトンとか高級なやつかと思うかもしれないが、私が使っているのは、カシオのお手頃ライン、俗にいう「チプカシ」だ。インストラクターをしていたときは振動アラームの735Hというやつを気に入って使っていたが、今は会社の規定上「黒の革か、銀の金属」という縛りがあるのでこっちのA164WA-1というやつを使っている。素材が安い(本体はプラスチックの銀メッキにアルミのうっすいバンド)からか非常に軽く、見やすく、薄いのでつけているのが気にならないほど。デザインも昔のゲーセンを思わせる感じで好きだ。なにより、安い!2000円位で買える。時計の機能とは、時間を確認することだ。正確に時を刻むクオーツ時計を、この値段で造れる技術を持った国に生まれたことを誇りに思う。
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そして、サングラス。これが長年の悩みの種だった。というのも、私は眼鏡をしているので、サングラスをつけるとなると、度入りのレンズのものか、クリップオンで眼鏡につけるしかない。これがどうにも一長一短なのだ。
度入りのものは値段が高く、つけるときに今している眼鏡をはずしてサングラスをかけ、はずした眼鏡をケースに入れ直さなければならない。眼鏡、サングラス、ケースと3つあるので、かけ替えるときに両手がふさがり、机などがないと落としたりして面倒だ。サングラスというのはまぶしい時にさっと取り出して着け、雲に入るなどして必要がなくなったらすぐにしまいたいものなのだ。学生時代に奮発して作ったやつを一つ持っていたが、数年前にスペインに旅行に行ったときにセゴビアという水道橋がある街でスられた喪失感から、以来作っていない。
私のサングラスがスられた街、セゴビア。奥に水道橋が見える。
一方、クリップオンのタイプは、手軽でよいのだが、眼鏡のレンズとサングラスの間に空間ができるので、裏うつりしてしまってうっとうしい。また、ほとんどが偏光レンズの既製品で、パイロットには使えない。(計器などの液晶画面が角度によって暗転してしまうことがあるため)。気を付けないとクリップオン部分で眼鏡に傷がつくことがあるのもよろしくない。
あとは、コンタクトレンズにして普通のサングラスにするか、というところだが、コンタクトレンズはどうしても好きになれず、いつも試しては眼鏡に戻っている。何とか我慢してクリップオン使っていたのだが、先日、地元の眼鏡屋が画期的なサングラスを作っているのを偶然見つけて、すぐにオーダーしてみた。こういうやつ。
わかるだろうか。上は、日本の市販の眼鏡だ。これをその眼鏡屋に持ち込んで、グラスの両端に小さな磁石を埋め込む。そして、眼鏡の形に合わせたサングラスを作成し、同じ位置にあるマグネットでパチっとつけるという代物だ。
これが大変良い。クリップオンの一種なので、使用している眼鏡をはずさずに手軽に装脱着ができる。かつオーダーメードで形がぴったりなので、サングラスとレンズ間の隙間が最小となり、裏移りも軽減される(ちょっとはあるが、慣れると無視できるレベル)。加工期間は1週間ちょいで、約2万円以下だ。日本でこんなのやっているのは見たことないし、こっちでもその眼鏡屋だけが特許を持っているようなので、日本で手に入れるのは難しいかもしれない。
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この際なので靴も紹介したい。これは日本で買ってきたものだ。asicsのビジネスライン、「texcy luxe(テクシー リュクス)」
これがめちゃめちゃよい。日本人の足に合う3E設計でコクピットで長時間履いていても窮屈にならない。完全防水ではないが、スプレーをしておけば割とはじくし、雨天時の外部点検で靴の内側が濡れた、ということはまだない。濡れた靴というのは特に機内に入ってからが危ない。フロアやタラップやペダルで滑ることがあるのだ。この靴はソールのグルービングがスタッドレスタイヤのように複雑で、飛行機に乗り込むときなどまったく滑らない。紐なし仕様で着脱が容易(紐バージョンもあるようだ)というのも良い。
紹介した品のアマゾンリンクのリストは下記に。試したい方はぜひ。
リスト:
鞄
ace. GENE ビジネスバッグ
タブレットパソコン
サーフェスGO本体
サーフェスGO用キーボード
靴
texcy luxe(テクシー リュクス)
紐ありバージョン
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有料パートでは、持ち物のさらに詳しい写真を載せてます。
たくさんの方々からサポートをいただいています、この場を借りて、御礼申し上げます!いただいたサポートは、今まではコーヒー代になっていましたが、今後はオムツ代として使わせていただきます。息子のケツのサラサラ感維持にご協力をいただければ光栄です。